第41話:お願い
◇
その後、昼休みを挟んで三・四限の講義。
座学の内容に興味深いものは特になく、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
「エレン、講義終わりましたよ」
「ん……ああ」
隣のユリアに声を掛けられ、起きた時にはもう放課後だった。
講義が終わった後は基本的にすぐに教室を出る者が多いらしく、俺たち五人の他には談笑している数人しか残っていない。
課外活動をしている学院生は忙しそうだ。
「……初日からよくぐっすりできるわね」
シーシャに呆れられてしまった。
やれやれ。ついついうっかりしてしまったな。
「ところで、エレンに一つお願いがあるのだけど」
「お願い?」
「ええ。今日だけ、部屋を代わって欲しいの」
……?
よく分からない。
さっきまで眠っていたせいで、まだ頭がしっかり働いていないのだろうか。
「部屋? 俺とシーシャは同じ部屋だろ?」
「ああ……えっと、私と変わるんじゃなくて。ティアと代わって欲しいの」
なるほど。
つまり、俺がティアたちの部屋で過ごし、ティアは俺たちの部屋で過ごすということか。
いや、でもちょっと待てよ?
「それだと、ユリアはどうなるんだ?」
「私はエレンと一緒で構いませんとお答えしました!」
「ええ……⁉︎」
ユリアが良いとしても、さすがに年頃の男女が同じ部屋で夜を過ごすというのはさすがに……。
いや、でもよく考えれば俺とシーシャと同室な時点で今更な話か。
それにしても、俺が寝ている間になんてことを話してたんだこいつらは。まあ、俺が講義中に眠っていたのがそもそも悪いというのはさておき。
「ユリアが良いなら俺は別に構わないが……どうしてこんな話になったんだ?」
「私がシーシャに魔法の稽古をつけて差し上げることになったのですわ」
「ティアが? ああ、そう言えば二人とも魔法師か」
「魔力操作が上手くなったら、シーシャはうんと強くなりますわ。せっかくあれだけの並列処理ができるのに、これでは力を持て余してしまっていますの」
「確かに」
魔法は威力も重要だが、当たらなければ意味がない。
あれほどの規模の魔法に精度が合わされば、鬼に金棒と言ったところだ。
「オリエンテーションは昼からだし、これからでも教えられることはあるって、ティアが言ってくれたの。それで、部屋に戻るのが何時になるか分からないから、いっそのこと今日だけ部屋代わったら? って話になって」
「シャワーの音で起こしてしまっては申し訳ないですわ。これが、貴族流の配慮というものですの」
彼女らなりに考えた末での話だったようだ。
う〜ん、でも別にティアとそのまま入れ替わらなくてもいいような気もする。
「それなら、リヒトさえ良ければだけど、リヒトの部屋にお邪魔するって形でも良くないか?」
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