第37話:運ゲー

 まあ、決闘が始まればすぐにわかることだ。


 今は気にしないこととしよう。


 ちなみに、俺は入学試験に引き続き、剣の持ち合わせがないため素手である。


 四人は俺に聞こえないよう小声で作戦を共有した後、攻撃を始めた。


「行くわよ!」


 シーシャが杖を天に掲げると、俺の頭上高くに無数の魔法陣が現れた。


 三十……五十……数えきれない。


 その魔法陣の一つ一つが赤色に激しく煌めき——


 ドオオオオオオオオオンンンッッ‼︎


 人間一人分のサイズの岩石が燃えながら落下してきたのだった。


 しかも、その速度はかなり速い。


 ……まるで、隕石の雨である。


「うおっと!」


 俺は身体能力の全てを使って、シーシャの隕石を避けていく。


 かなり速いとはいえ、規則正しい動きをするので落ち着いて対処すれば避けるくらいは特に問題ない。


 全ての隕石を魔法で撃ち落とせ……となると骨が折れそうだが。


「もう! ちょっと! な、なんで当たらないのよ!」


 俺が避けるたびにシーシャは悔しそうな声を上げていた。


 シーシャは無作為な魔法を大量に放てば一発くらいは当たると考えていたのだろう。


 やれやれ……考えが甘いな。


 同格か、やや自分より強い相手なら通用するかもしれないが、力量が大きく離れた相手にはこういった思考停止の魔法は無意味なのだ。


 それにしても……どうしてこれだけの魔力と技術がありながらこんな魔法を使ってきたんだ?


 運に任せた攻撃ではなく、一撃に全てを賭けた方が絶対に良いはず。


 ——と思っていたところ。


「エレン、覚悟してください!」


「バ、バカ! 何してんだ⁉︎」


 隕石の雨が降る中、剣と盾を持ったユリアが俺の前に特攻してきたのだった。


 ユリアの動きを見る限り、この身体能力で隕石を避けられるとは思えない。


 おそらく、シーシャの隕石で俺の動きが制限されている状況での一撃を狙っているのだろう。いくら死ぬことがない空間とはいえ、こっちも運任せか……?


 落下してくる隕石の雨を奇跡的に避け続けていたユリアだったが、幸運はいつまでも続かない。


「ああ……言わんこっちゃない」


 俺の間合いに直前に、ユリアの頭に隕石が衝突したのだった。


 ドオオオオオオオオオオンンッッ‼︎


 しかし——


「この程度で、私がやられると思いましたか?」


「え?」


 どういうわけか、シーナは何事もなかったように俺の間合いに入ってきていたのだった。


 当たった……よな?

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