第38話:属性剣技

「私は頑丈なので、この程度では痛くないのです!」


 マジかよ⁉︎


 ユリアは、運任せの奇跡の一撃を狙っていたのではなく、シーシャの隕石魔法が当たることを許容した上で攻撃を仕掛けていたらしい。


 騎士——剣と盾を扱う攻守共に優れた者にしか出来ない職——は多少の無理が利くことは知識として聞いたことがあったが、これは反則だろ……。


「うおっと!」


 とはいえ、攻撃に関しては、俺の動体視力なら十分に対応できる。


 隕石を避けつつ、ユリアの攻撃を避ける程度は問題なくできた。


 数秒が経ち、この状況にも慣れてきたのでこの辺で攻勢を仕掛けようか——と思った時だった。


「僕たちも仕掛けよう。ティア、アレを頼む」


「わかりましたわ!」


 リヒトとティアの方も動き出したようだ。


 二人は連携に関して自信がありそうなので、油断はできない。


 あちらの出方を確認してから確実に仕留めるとしよう。


「こ、これが私の全力の魔法ですわ!」


 ティアは轟々と燃える大きな火球を生成したのだった。


 ……ふむ、こんなものか。


 まだまだ伸び代がある魔法だと感じた。


 確かに同世代と比べれば優れた魔法を使うようだが、この程度なら如何ようにも対処できる。


 どちらかと言えばシーシャの魔法の方が脅威に感じるくらいだ。


 しかし、この後、俺はティアの真の狙いを知ることとなる。


「良い魔法だよ、ティア」


 リヒトは、生成された火球に横なぎの一振りを加えた。


 火球の中を通った剣はただ炙られただけではなく、剣の周りに渦を巻いて一体化してしまったのだった。


 剣と『火球』が融合した様は、まるで剣が火のオーラを纏っているような雰囲気がある。


 実際、見た目だけじゃない。今のリヒトの剣は、ティアの火魔法を取り込んだことで火属性の剣技を扱えるようになったのだ。


「なっ……! それ出来るのかよ⁉︎」


 俺は、思わず声を出してしまった。


 この技術自体は見たことがある。父さんとユミルおばさんが幼き頃の俺を前にして自慢気に披露してくれたからだ。


 父さんはなかなか難しい技術だと言っていた。


 完全に二人の波長を理解し、息を合わせなければ出来ないのだそうだ。


 やれやれ、面白……面倒なことになってきたな。


 幼馴染だとは聞いていたが、まさかここまで出来るとは思っていなかった。

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