第31話:オリエンテーション
「今日のホームルームでは、明日のオリエンテーションの説明するぞ」
オリエンテーション?
そういえば、入学資料にそんな名前のイベントが書かれていた気がする。
詳しく見ていなかったので、内容は覚えていないのだが。
「当然内容は既に知っていると思うが、念のためにおさらいだ」
と言いながら、オスカ先生は黒板に文字や図を書いて説明を始めた。
内容を把握していなかった俺にとってはありがたい。
「オリエンテーションってのは、いわゆるクラス親睦会みたいなものなんだが……君たちには五人一組で学院地下にある広大なダンジョンで旗取り競争をしてもらう」
ダンジョン……俺は実際に入ったことはないが、その存在を聞いたことはある。
大気中を漂う魔力により、自然発生的に生ずる魔物の巣窟。
魔物の強さや種類はダンジョンによって様々だが、共通するのはダンジョンボスを倒すことで消滅するということ。
攻略には危険を伴うため、魔物との戦いを生業とする冒険者や宮廷騎士団しか関わらないものだという認識だった。
「この学院の卒業生は冒険者や宮廷騎士団員になる者もいるし、領主として領地に発生したダンジョンの対処をしなくてはいけないこともある。学院としては、入学しばかりの君たちにダンジョンってものがどんなものか知ってもらうのが狙いだ」
なるほどな。
確かに、腕を磨くだけじゃなく、その力を使う現場を知っておくのも大切なのかもしれない。
「と言っても、地下ダンジョンは研究開発用に作られた人工ダンジョン。難易度は易しめに調整されている。油断は禁物だが、試験を突破した君たちなら、死ぬようなことにはならないだろう」
人工ダンジョン……そんなものがあったのか。
ダンジョン自体は知っていたが、人工的に作れることは知らなかった。
まあ、原理的には魔力により発生するらしいから、人工ダイヤみたいな感覚で作れてしまうのだろうか。よくわからないが。
「魔物を倒しながら旗を回収し、出口を目指す。優勝を目指して頑張ってほしい。ただし、今回はあくまでもオリエンテーションだから、順位を成績に考慮することはない」
成績には入らない⁉︎
これは朗報……だが、待て。これは罠だ。
成績に入らなくとも、印象には残ってしまう。
やはり、あまり目立つようなことはしないのが得策だろう。
「パーティメンバーに指定はない。自分たちで相性の良い者を見つけて組むといい。この後の午前の実技……つまり、一・二限はさっそく連携練習の時間になる。決まったパーティから校庭に集まるように。今日のホームルームは以上だ」
説明を終えると、オスカ先生は教室を出て校庭へ向かったのだった。
ふむ……パーティメンバーは自由なのか。
つまり、余計な目立ち方をして俺の力をバレないようにするためには、このクラスの中で相対的に実力が未熟な者を選ぶ必要がある。
誰が強くて誰が弱いのか、まったくわからないが……こういう時には強い者から順に決まっていくもの。
俺は、誰か余ったメンバーとパーティを組もうという作戦を考えたのだが——
後ろに座るリヒトから肩を叩かれた。
「エレン、さっきの話の続きだ」
「ん?」
「魔導テニス研究会の件、言いふらされたくなかったら、僕とパーティを組んでくれ」
「……え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます