第26話:エレンの要求

 冗談を疑う者もいるようだが、もちろん冗談などではない。


 とはいえ、無闇矢鱈に苦しめようというつもりもない。


 全ては、彼らの対応次第。


「それが嫌なら、お前たちがこれまでにしてきたこと……今回未遂に終わったこと……全部隠さずに学院に自白するんだな。そして、上位貴族の耳にも入るよう学院誌で謝罪記事を出すんだ」


 これまで見逃されていたということは、学院側も大事にはしたくないと考えている可能性がある。


 学院への報告だけでは不十分だと考えての要求だった。


「なっ⁉︎ ……そんなことしたら退学になっちまうじゃねえか⁉︎」


「いや、退学で済めばマシだ。実家にも迷惑がかかるかもしれねえ……」


「お、お前……! 俺は跡取りだぞ⁉︎ 勘当されたらどう責任取るつもりだ⁉︎」


 やれやれ、この期に及んで自分の心配か。


 今の状況を再認識させる必要がありそうだ。


 『火球』。


 先ほどと同じ威力の魔法を五人に放った。


 ドッガアアアアアアアアアンン‼︎


 轟音とともに、彼らの悲鳴が部屋中をこだまする。


「ヒール」


 瀕死になったところで、俺は回復魔法を使用。


 一瞬で全快させたのだった。


「お前たちがしてきたことに比べりゃ、その程度の罰は大したことないと俺は思うぞ。それと、お前たちにノーと言える選択肢があると思わないことだ」


「ひっ……」


「す、すみませんでした……!」


「な、なんでもします……! 許してください」


 ふむ、言葉遣いが変わったな。


 ようやく少しは状況を理解したようだ。


「じゃあ、謝罪記事を待っているぞ。……おっと、大事なことを言い忘れてた」


 やれやれ、俺としたことが……。


「俺の名前……今日この場に俺がいたこととか、何があったとかは一切話すなよ?」


「えっ……? は、はい……」


 もしも俺が上級生五人を相手に単独でボコボコにしてしまったなどという話が広まれば、ますます成績不振という理由では学院を辞めにくくなる。


 この口止めは非常に重要な意味を持つのだ。


「じゃあ、さっさと報告に行け。今すぐだ」


「は、はい……!」


 こうして、五人は部屋を出ていき、俺とユリアとシーシャの三人になった。


 二人はあれだけの騒ぎがありながらも、まだぐっすり眠っている。


 おそらく、強力な睡眠薬か、あるいは魔法で眠らされているのだろう。


 俺は、回復魔法の『睡眠解除』を使用。


 これにより、強制的に睡眠状態から解放することができる。


「あれ……? カズヤですか?」


「私、急に眠くなって……どうして?」


 二人の身に襲いかかっていた危機の詳しいことは後で説明するとして——


「とりあえず、部屋を出よう」

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