第18話:魔力探知
俺は、『魔力探知』を使用する。
これは、感覚を研ぎ澄ませた状態で自分の魔力を薄く広げることで、魔力が衝突した反応から生命反応や物質の影を把握する技術だ。
ちなみに、魔力は使うが、魔法ではない。
魔法というのは魔力を使うことで物質やエネルギーを創造したり、変換する技術を指す。これは単なる物理反応から情報を探る技術なので、魔法ではないということだ。
蘊蓄はさておき、ユリアとシーシャを探そう。
俺の記憶を頼りに、二人の魔力を探した。
魔力には、指紋などのようにそれぞれ個体差があるため、特徴を覚えていれば
『魔力探知』と組み合わせることで人を探すような使い方もできる。
範囲が広いと必要魔力量が莫大になってしまうが、今回はこの学院の中だけに絞れば良いので、それほど魔力量は必要ない。
「……見つけた。二人一緒だ。周りには、誰か人が五人ほどいるようだな」
「ど、どうやったんですの……⁉︎」
俺が把握した情報を共有すると、ティアはかなり驚いたようだった。
「普通に『魔力探知』で探しただけだが……?」
「ま、『魔力探知』⁉︎ エレンはこの学院の講師でもほとんどの人が使えない『魔力探知』を使えるのですの⁉︎」
「えっ……ま、まあ。そうだ」
……しまった。
世間知らずな俺は、どうやらまたやらかしてしまったらしい。
まさか、この程度の技術がそれほど評価されているものだったとは。
英雄のおじさんたちはみんな普通に使っていたから、このくらいはできるのが普通だと思っていたし、俺が使えるようになっても驚かれなかったから、一般的な感覚とズレてしまったらしい。
「場所は東館の三階、突き当たりの部屋みたいだな」
「そ、そこって魔導テニス研究会の研究会室ですわ! や、やっぱり……!」
俺が場所を伝えると、ティアの血相が変わった。
雰囲気から察するに、ちょっと厄介そうなことになってしまったかもしれない。
「とりあえず、行ってくるよ。教えてくれてありがとうな」
ティアに礼を言って、部屋の外に出る俺。
「ちょ、ちょっと! もしかして一人で行く気ですの⁉︎ 先生に相談してからとか……」
「迎えに行くだけだし、それが普通だろ? まだ何かあったと決まったわけじゃない」
「それは……で、でも……心配ですわ」
ふむ、ティアは優しい子のようだ。
ルームメイトというだけでユリアを心配して探してくれていたわけだから、今更かもしれないが。
「もし俺が戻ってこなかったら、その時は先生たちに伝えてくれ」
『魔力探知』で把握できる魔力から二人の周りにいる五人の魔力の強さを測定してみたが、俺なら仮に戦闘になっても負けることはないはず。
ティアにはあえて伝えていないが、俺だって何も考えていないわけではない。
『魔力探知』自体が驚かれる技術だということは、『魔力探知』で魔力の大きさを把握できると伝えると、さらに俺の評価を上げてしまう可能性がある。
口封じを頼むのも変な話だし、最初から秘密にしておいた方が良いだろう。
「わ、わかりましたわ……」
こうして、俺はティアと別れてユリアとシーシャのお迎えに向かったのだった。
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