第17話:魔導テニス研究会

「私は、ティア・ガーデフェンですわ。エレンと同じSクラスの学院生ですの」


「ティアというのか。顔と名前が一致してなかったが、クラスメイトなのは知ってる。それで、何か用があるのか? シーシャなら留守だぞ」


 予想される言葉を先回りして答えるが、ティアはピンと来ていないようだった。


「えっと……私は、ユリアがここにお邪魔していないか気になって尋ねたのですわ」


「ユリア?」


「私とユリアとルームメイトですの。なかなか戻らないので、エレンと仲が良いと言っていたのを思い出して来たのですわ」


 なるほど、ユリアを心配して探していたというわけか。


「なるほどな。ここにはいない。ユリアはシーシャと一緒に部活と研究会の見学に行くと言っていた。まだどこか見てるんじゃないか? 多分、心配するような

ことはないと思うぞ」


 俺がこのように答えると、ティアは眉を顰めた。


「見学会に……? もうとっくに規定の時間は終わっているはずですわ」


「そうなのか? じゃあ、どこかでゆっくりしているのかもな」


「だといいのですけど……」


 ティアは、何か気がかりに感じているようだ。


「学院生は無許可で外に出られないだろ? ということは、少なくとも学院の中にはいるはずだ。一人ならともかく、二人なら怪我で動けないとかではないと思うが。何か心配することがあるのか?」


「それは、そうなのですけど……研究会の中にはあまり評判の良くないところもありますの。歓迎会に参加しているかも……ですわ」


 サークルの新歓みたいなものか。


「評判が良くないって言うのは?」


「いくつか評判が良くないところはあるのですけれど、魔導テニス研究会……とかは良くない噂を聞きますわ。魔導テニス研究会とは名ばかりで、魔導テニスはしていないとか」


 テニス……?


 なんだか、この単語だけで微妙に察するものがあるのはどうしてだろうな?


「あくまでも噂ですけれど、強引に大量のお酒を飲ませて、酔ったところを襲ってしまう……と聞きましたの。下級貴族や平民は狙われやすいので注意すべしと」


 この世界では、現代日本のように特に飲酒に関して年齢を縛るような法律はない。


 故に学院生がアルコールを摂取しても咎められることはないのだ。かといって、推奨はされているわけではないのだが。


「……なるほど」


 やれやれ。


 どこの世界でもろくでもない人間はいるようだ。


 確か、シーシャは平民で、ユリアは男爵家の娘。


 狙われる条件は揃っているというわけか。ティアが心配する理由をようやく理解できた。


「それは確かに心配だな。今から迎えに行くか」


「でも、どこにいるのか……見当もつきませんわ」


「ああ、それは大丈夫だ。俺に任せておけ。すぐに見つける」


「え?」

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