第5話:参観の理由

 ◇


 全ての試験が終わった後の夜。


 俺は、七英雄たちとともに王都の高級レストランでご馳走を食べていた。


 どうやら、試験を終えた俺のために予約しておいてくれたらしい。


 高そうな肉や魚、旬の野菜、手の込んだ料理と普段は食べられないものが食べ放題。


 うん、まるで天国だな。


「ああ〜、美味しい! ——じゃなくて!」


 そうだ、ご馳走で忘れかけていたが、俺は目の前のこの人たちに問いたださなければならない。


「なんで見にきてんの⁉︎ 聞いてないんだけど⁉︎」


 俺が試験で手を抜けなかった理由は、まさか試験を見に来るとは思っていなかったこの人たちのせいである。


 言い訳ではなく、マジでそうだから笑えない。


「ん、聞いたらエレンは嫌がるかと思ってな。だから黙って観にきた」


 父さん——ジークが親指をビシッと立てて答えた。


「そりゃ普通嫌でしょ⁉︎ 他に見に来てた親いないからね⁉︎」



 俺が反論すると、他の六人がなぜか微笑ましそうな目で見てきた。


「う〜ん、思春期って感じねえ」


「うむ」


「そんなに恥ずかしがるこたぁねえのになあ」


 それぞれ、魔法師のユミルおばさん、拳闘士のゲイルおじさん、槍士のベックおじさん。


 俺の精神年齢は日本で生きていた時代を合わせればこの人たちと同じくらいの歳なので、別に思春期特有のアレではないのだが……そうとしか思われていないようだ。


 更に、他の三人も俺の精神にダメージを与えてくる。


「立派にこなせていたじゃないか。問題なかったと思うよ?」


「うん、絶対合格だと思う!」


「そうですね。あれで合格じゃなかったら誰が合格するのでしょうか?」


 それぞれ、弓師のフィルおじさん、付与魔法師のリーリャおばさん、回復術師のセレナおばさん。


 いや、だから合格してしまうことが問題なのだが……そんなことは口が裂けても言えるはずがなく。


 はあ……。


 だけど、もう過ぎたことなんだよな。


 こうなったら、何か奇跡が起きて落ちていることを願っておくしかない。


 測定不能で〇点とかそういうのでどうにか、頼む……。

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