第6話 修羅場
「それはね、誤解だよ……ミナちゃん……」
いつも飄々としている和泉がしどろもどろに動揺している。
「何が誤解だっていうのよ!? 明らかに私をハブにしてたじゃない!!」
三奈子も三奈子で、怒りでいつもの冷静さを完全に失っている。
「違うの!! 理由は言えないんだけど、私たちはミナちゃんをハブにしてたわけじゃないの!!」
「いったい何のよ!! その言えない理由って!?」
「それは……」
和泉が言葉に詰まっているところで、和泉の背後から乱入してくる声があった。
「和泉!!」
振り返ると、そこには恭子が立っていた。
「なんで……キョウちゃんがここにいるの?……」
「私が呼んだのよ……」
驚愕している和泉の疑問に、怒気を残した声で三奈子が答える。
「そんな……なんで!? 私とミナちゃんで観に行く約束だったじゃん!!」
「私は3人の関係がこのまま壊れるのが嫌だったの……だから、荒療治だけど、ここに3人揃うように仕向けたの……でも、それももうどうでもいい……アンタたちが私をハブにしてたってことが分かったから……」
「ちょっと待って……三奈子は何を言ってるの?……」
三奈子の様子が尋常ではないことに気づき、恭子も血相を変える。
「アンタたち2人で私をハブにして、散々私を嘲笑っといて、アンタらの仲が悪くなった途端に別々に私にすり寄ってきて、『もうアイツとは話さないで』? どの口がそんことが言えるのよ!?」
「違う!! 違うんだよ!! 三奈子!!」
恭子は慌てて三奈子に近寄り肩を掴もうとするが、三奈子は恭子の手を素早く振り払う。
「触らないでよ!! もう、終わりだよ!! 私たち3人の関係はもう終わったんだよ!! 二人とも『もうアイツとは話さないで』って言ったわよね!? 望み通りにしてやるわよ!! “もうアンタたちとは話さない!!”」
三奈子はとうとう泣き出していた。
「あーっ!! もーっ!!」
混沌とした状況に耐え兼ね、今度は和泉が頭を掻きむしりながら絶叫した。
「元はと言えば、全部キョウちゃんが悪いんだよ!!」
そう言って和泉は恭子の方をキッと睨んだ。
「はぁ!? なんで全部私のせいなんだよ!?」
「もういい!! このままミナちゃんに嫌われるくらいだったら、全部ブチまけてやる!!」
「おい、待て!! まさかこんなところで全部話すつもりか!? やめろ!!」
恭子は動揺してきょろきょろと周囲を見回す。
3人とも口論に夢中になって忘れていたが、ここはショッピングモールの真ん前で人通りも多い。
すでに、通行人の好奇の視線が集まっている。
だが、そんなことはお構いなしで、和泉は大声で三奈子に語り掛けた。
「ミナちゃん、聞いて!!」
「はっ、今更何言ったって、アンタたちのやったことを私が許すと……」
もう取り付く島もない三奈子に、和泉は衝撃の言葉をぶつける。
「私とキョウちゃん、付き合ってるの!!」
和泉の言葉にその場の空気が完全に止まった。
恭子は「あちゃー」という表情で頭を抱えている。
数秒遅れて、三奈子の口から凄まじく間抜けな声が漏れた。
「へ……」
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