第3話 原因は?

 その後、三奈子は生徒会室に行くことにしたのだが、和泉はなんと生徒会室の前までくっついてきて、「じゃあ、ここで待ってるからー」と生徒会室の前に居座った。


 うーん、困ったー……


 和泉と恭子が冷戦状態にある中で、和泉の方とだけ過度に仲良くしていたら、恭子に和泉もろとも目の敵にされかねない。

 なんとか中立を保ちたいところだが、和泉は人懐っこいポメラニアンのごとくついてまわってくる。


 こうなったら、逆に和泉についていって、事の原因を聞きだすかー……


 三奈子は生徒会の仕事を早々に切り上げ、和泉とともに街にでた。


 無難ところで、メジャーなファーストフード店に入り、ポテトとシェイクを頼み、席に着いた。

 席に着くや否や、三奈子はすぐに本題を切り出した。


「単刀直入に聞くけど、あんたたち何があったの?」


 和泉もこう来るだろうと予測していたのか、さして驚くふうでもなく、何食わぬ顔でポテトをつまむ。


「うーん……どう話せばいいかなー……」


 しばらく思案したあと、暗い表情でぽつりぽつりとしゃべり始めた。


「キョウちゃんってさ、なんかクールぶってて、お高くとまってるカンジあるじゃん……今まではあんまり気にしてなかったけど、最近急に鼻につくようになったっていうか……まあ、そんなところかな……」


 その内容に三奈子は愕然とした。

 中学1年の頃から3人で仲良くやってきたと思っていたのに、和泉が腹の中でそんなことを考えていたとは、夢にも思っていなかった。


 だが、これで事態が見えてきた。

 和泉が恭子のことを疎ましく思うようになり、それで恭子のことを遠ざけるようになったのだろう。

 そういえば、3ヵ月くらい前から3人で一緒に遊びに行くことがパタリとなくなっていた。


「そんな理由で恭子を遠ざけたの!? そりゃ、恭子だって怒るよ!!」


「違うよ。先に遠ざけてきたのはキョウちゃんの方だよ」


 怒る三奈子に、和泉は冷めた声で反論する。


「アイツ、しばらく前から遊びに行く約束をほいほいすっぽかすようになったの。あんまり腹立ったんで、何回か逆にやり返しちゃったけどね」


 和泉はそう言って、そっぽ向いて遠くを見るような眼をする。


「和泉……」


 三奈子はかける言葉が見つからなかった。


「それよりさ、今度の日曜日に映画行かない?」


 和泉は顔をぱっと明るくさせて、スマートフォンを取り出し、画面を操作したあと、三奈子の方に向けてきた。

 画面に映し出されていたのは、とあるバレーボール漫画の劇場作品だった。


「これ……恭子が好きなヤツじゃん……」


 恭子はバレーボール部の副主将だった。

 小学生の頃にこの漫画にハマり、中学からバレーボールを始めたのだ。

 恭子は恥ずかしいと言って周囲にこの事実を隠しており、三奈子と和泉だけが知っている3人の秘密だった。


「アイツ、一緒に行く友達いないから、たぶんまだ観てないよ。だから先に観に行ってやろうと思ってね」


 和泉はそう言って悪そうな笑みを浮かべる。


「恭子のこと意識しまくってるじゃん……」


 三奈子はこめかみを手でおさえてため息をついた。


「それで、話のオチとか、どこがどう良かったとか、事細かにぜーんぶアイツに話して悔しがらせてやるの!!」


「やることが陰湿なのか、ショボいのか、よくわからんわ!!」


 三奈子にツッコまれ、和泉はケラケラと笑う。


「その話したら、私、キョウちゃんと縁切るよ」


 和泉の目にはあの時の恭子と同じ深い闇に満ちていた。


「だから……ミナちゃんももうアイツとは話さないで……」



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