第7話 かわいい後輩とかっこいい部長の話

とある週末僕は部長と後輩と焼肉を食べていた。


「神無はもっと飯を食え、男ならもっと豪快にたべろ」


「一般的な運動してない男子はこんなもんです」


店内は家族づれや、俺らのような大学生で賑わっていて店員が目まぐるしく動いている。


「伊織はいい食いっぷりだな、それでこそ奢りがいがある」


「じゃあもっと食べちゃいますー!」


「これだけ食べて太らないって、体のエネルギーはどこに行ってるんだ」


伊織は女性の中でも細くて、背も低い方だろう。

普段から沢山食べてるようで、今日も見事な食いっぷりである。


「それは私の可愛さを作るのに使われてます」


「まじかよ」


俺もカッコよさとか生成出来ないかな。


「羨ましいな私はどうにも体の方に付いてしまうみたいでな」


少し困った顔で先輩は体のラインをなぞる。


「運動する時に困るんだ」


全体的に引き締まった体つきではあるが、どこがとは言わないが出ている。

男の俺じゃあそうゆうのは触れずらいのでやめて欲しい。


「私は部長の方が羨ましいですけどね、もうちょっと大人の女性として見られたいです」


「そうか?私は昔から女性ならではの可愛い服が来たくてな、伊織みたいな可愛い女の子に憧れていたよ」


「え~、意外です!カッコいい服ばっかりだったので興味が無いのかなって」


「そうゆうのしか合わないだけだよ」


「絶対似合いますよ」


「そうだろうか」


「じゃあ今度一緒に服見に行きましょうよ」


「う~ん、しかしな」


服とかそうゆう話題だと男子の俺は全く話に入れないな。

まあ女子トークが終わるまでは肉を焼く担当に徹するか、社会にでて会社の飲み会もこんな感じなのだろうか。

辛いな。


黙々と肉をどんどんと焼いていく。

あれだな、ゲームとかアニメみたいに美味しく焼けましたとか、服とか脱げればいいのに。


とりあえず上手く焼けた肉を部長と後輩の皿に分け、自分も食べると、牛肉特有の風味と肉汁が口いっぱいに広がる。

あ~最高すぎる。人生辛いことがあっても美味いは全部消してくれるなぁ。


「先輩もそう思いますよね」


「え何が?」


自分の世界に入りすぎていて、全く話を聞いていなかった。


「部長って普通に可愛いですよね」


改めて部長に意識を向ける。


「可愛いと思いますよ」


服の印象やキリッとした目から男っぽさやカッコよさを感じていたが、言われて見ると顔立ちは整っているしメイク次第で雰囲気くらいなんとでもなるだろう。


「神無までやめてくれ」


手で顔を隠して露骨に恥ずかしがる。

普段はなんでも余裕で、動じない先輩なだけに凄く珍しい。


「じゅあ部長を見に行きましょう、服は神無先輩と私が払うので部長のリスクはゼロです!」


「なんで俺も払うんだよ」


「いいじゃないですか普段お世話になってるし、可愛い系服を着ている部長なんてこの先見れないですよ!」


「確かに…」


これを逃す手はないだろう。

欲しい物は欲しいと思った瞬間に買え、オタクとしての俺の家訓だ。


「部長、学生はチャレンジ出来る最後の場面だと俺に教えてくれたじゃないですか!」

「俺は先輩のチャレンジを全力で応援したいです!」


「そう言われるとな、ずるいぞ君は」


目をうるうるさせて、上目遣いで恨めしそうに睨む。

しかしこの状況でそれをされても可愛いとしか思えない。


「部長、最後に夢を叶えてから卒業しちゃいましょう」


伊織がぐっと祈るような目線で部長に詰め寄る。

一瞬の目が泳ぎ何か逃げる方法はないかと考えたようだが


「…分かったよ」


はぁ、っとため息をついてうなだれる。

嫌そうな感じではなく、決心が着いたとゆう感じの苦笑いを浮かべていた。


「やったー、じゃあ早速行っちゃいます?」


「さすがに焼肉終わりには行きたくないし、この後予定があるんだ」


「そうですが残念です」


しゅんっと伊織が分かりやすくうなだれる。


「そんなに落ち込むな、お前らさえ明日空いてれば明日でもいい」


「空いてますー!」


「俺も明日は暇ですね」


「なら明日にしよう、それより今日は2人に奢るの以外にも用があったんだよ」

「神無の小説の進捗について確認したくてな、どんな感じだ?」


「正直行き詰ってます」

「小説を書き続けて展開を思いついた所まではいいですけど、キャラクターと会話が出来ないです」


キャラクターが物語に出てくるのはいいが、彼女はどんな見た目でどんなことを言うのかが全く想像が出来ない。

琴音に解決法を聞こうとしたが、ゲームが進まない言って教えてくれなかった。


「そこは確かに難しい所だな、普通に生活していたら自分の作り出したキャラクターと会話することはないからな」


「部長はどうやってキャラクターと会話させるんですか?」


「実際にいる友人を元にしたり、別の作品のキャラをそのまま移したりして、このキャラならどう動くってゆうのを固めて会話させるかな」


「なるほど…」


確かに会話させるには別の人格、考え方を持つキャラが必要になる。


「でもこのキャラの作り方はあまりオススメ出来なくてな」


「なんでですか?」


「魅力的…いや、カリスマ性が出ずらくて物語に深みが出づらいんだ」

「お前の好きな作品のキャラを思い出してみろ、どれも現実にはなかなかいなくて、他の作品でもまずいないキャラクターだろ」


「確かにそうですね」


どのキャラも理解出来ない独特な考えや、つい惹かれてしまう魅力を持っている。


「ふっふっふ、私の出番がきたようですね、魅力的なキャラクターと言えば私の得意分野です」


腕を組んで自信満々の様子で不敵な笑みを浮かべる。


「ミステリーだったり、人間ドラマをテーマにする私は物語が地味になる分キャラの魅力で沢山の人を物語の中に引き込むんです」


「確かに伊織の書く作品のキャラはいつも魅力的だな」

「お菓子を使って殺す殺人鬼に、どんな状況でも困っている人がいたら人助けをする殺人鬼、常に教室で読書と寝続けることが趣味のミステリアスな男子生徒」


「いや、最後のやつはただぼっちなだけでは?」


「普段からお世話になっている先輩に、今日はカフェでお茶しながらパフェでも食べて私が魅力的なキャラを教えましょう!」


「まだ食べれるのかよ」


「私の可愛い成分は1日2万カロリー消費するので沢山食べなきゃなんです」


「可愛いの消費カロリー高すぎるだろ」


「そこが可愛い女の子の辛い所ですよね」


あざとく困り顔を浮かべる。


「自分で自分を可愛いって言うのか」


「可愛いって自覚しててそんなだよって言う女子の方が感じ悪くないですか?」


「そうかな…そうかも…」


陰湿とゆうか、さっぱりしていた方が確かに好感持てる。


「先輩はそんな私は好きじゃないですか?」


顔をぐっと近づけ覗き込んでくる。


「うっ」


いやそりゃ可愛いよ、好きだよ!

恋愛経験ない俺とか男子にやってみろみんな好きになるわ!

こうやって勘違いして告って痛い歴史を作るんだよ、法律で規制するべきだろ。


「いちゃつくならよそでやってくれ、今日は肉でお腹いっぱいだよ」


部長はまたいつものかとため息をつくと、残った肉を焼き始めた。



































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死神の彼女に恋をした @Contract

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