14「家族」
ロッカーに残されていた前世の残り香を頼りに、天地総蔵、いや、バエルの領地まで来た。
バエルの領地は、悪魔という位だから、暗いイメージがあったが、とても植物も多く、明るい光が差して、バエルの住まいも、城ではなく、少し豪華な豪邸位であった。
「よく来た。」
バエルが迎えた。
バエルは、去った時と同じ格好をしていた。
「どうか?私達と一緒に、この地を一度滅ぼさないか?」
「断る。」
温水は、バエルの誘いを断った。
「寒水は?」
「寒水は、物語を完成させる為に、奥にいる。でも、もう少しで完成する。」
「な。早すぎる。」
「それはそうだろう。この空間は悪魔の領域。悪魔と人の時間は違う。勿論、神と人ともな。」
バエルは、説明をしながら、温水に近寄る。
その間に、ゆかりが立ちはだかる。
「バエル。」
「ゆかり…、すまないな。こんな私と一緒になってしまって。」
「それなら、これからも一緒にいましょう。地上で過ごしましょう。」
「それは出来ない。もう、この地上を創造しなくてはいけない。」
「それは、貴方がやることなんですか?」
バエルは、歩みを止めて、ゆかりの話しを訊いた。
「この地上は、争いが絶えません。しかし、それは、神や悪魔が関与する問題なんですか?人間が行ったことは、人間が解決をしないといけないと思います。だから、悪魔のあなたが正さなくてもいいのです。」
「しかし、人間は、争いが収まっても、再度行う。だったら、もう、我々が全てを管理しなければ、また、同じになってしまう。」
「だったら、神も、行動をしているはずです。でも、神は、何もしていません。それは、人間を信じているからです。」
「人間を信じた所で、同じこと。」
バエルは、手を挙げる。
すると、辺りから、自分に賛同してくれる生き物が出て来た。
それらは、植物の形をしていたり、トカゲや、鳥、蛇、ライオンなどもいて、牙をむいている。
「これらは、人間の争いに巻き込まれた動植物達だ。亡くなった後、我に協力をするといって、集まってくれた。」
温水とゆかりは、警戒をしている。
二人だけでは、とても太刀打ちが出来ない。
「今一度、問う。私と一緒に地上を滅ぼそう。」
温水とゆかりは、目をバエルに向けて。
「「断る!」」
すると、バエルは目を瞑り、開いた時、手を下ろした。
瞬間、周りの動植物達は、温水とゆかりに襲い掛かる。
温水とゆかりは、一緒にいてはと思い、周りにある森に行き、それぞれに逃げては武器を見つけて、追い払っていた。
温水に至っては、植物に攻撃されるなんて信じられなかった。
前世では、とても多くの植物に愛されていたからだ。
だから、どこかおかしいと思っていた。
バエルは、その様子を見ながら、後ろで作業をしている寒水に。
『早く、物語を完成させろ。』
と思い、完成させるまでの時間稼ぎをしていた。
温水もゆかりも、神の右腕だから、とても動きはいいし、感もいい。
何故二人が神の右腕というと、最高神は二人いる。
男の最高神と女の最高神。
その二人の最高神は、とても仲が良い、相棒といえる程であった。
相棒であって、夫婦ではない。
男の最高神の右腕が温水で、女の最高神の右腕がゆかりである。
豪邸の扉が開いた。
開いた時、バエルは口元をニヤリとした。
「ようやく出来上がったか。寒水。」
「はい。バエル様。」
ドクを見せると、ドクからはとても大きな光になっていた。
ドクの国が勝利をして、再建出来たのである。
「それはよい。さあ、その力、私に渡しなさい。」
すると、寒水は、もう一つの光も見せた。
その光は、キルであり、温水が持っていたものだった。
それも大きくなり、ドクと同じ大きさとなっていた。
温水は、この所、赤野夏也が残したレシピをひたすら作っていたから、キルの力も大きくなっていた。
最近、その包丁で大きな料理を作ったのが、効いて、大きくなったのである。
「ほう、こちらの力も合わせれば、地上は更地に出来るな。」
バエルは手を出して、ドクとキルを渡せるようにすると。
「それは出来ません。バエル様、いや、バエル。」
寒水は、バエルを蹴った。
油断していたバエルは、後ろに転んだ。
それを見ていた温水とゆかりは、バエルと寒水を見ていた。
「何を。」
「バエル、貴方は勘違いをしている。わしは、この争っている人間も、この地も好きなのじゃ。」
寒水の様子が違う。
言い方が、何か、違う。
三人は、その立っている姿を見ると、誰か、分かった。
「織田……信長。」
寒水の前世、いや、何度転生したか分からないが、元は、織田信長の魂が、今は、寒水となっていた。
寒水は、光を両手にそれぞれ持つと。
「さあ、帰り給え。」
「いいのですか?妖精の世界にある力を使えば、貴方は天下を取れるのですよ。」
「裏切った人に、復讐とかしたくないんですか?」
ドクとキルがいうと。
「わしはわしの力で天下を取りたい。それに、神や悪魔の力も必要ない。人間のわしの力で、天下を取り、今ある地球の物を愛していきたい。その為には、地上を滅ぼされてはいけないのだ。だから。」
寒水は、まだ、倒れているバエルの上に乗り。
「温水とゆかりを襲わせている動植物達の洗脳を解け。」
「何を。」
「例え、争いに巻き込まれた動植物でも、バエル、貴様には仕えん。亡くなれば、全て浄化する。浄化した魂は、真っ白になる。そして、また生まれ変わる。わしがそうであった。だから、洗脳していると確信した。さあ、解け!!」
その時、温水が持っていた包丁が、寒水の手に握られた。
操ったのは、キルだ。
「キル。」
「早く、そのバエルを。」
「しかし、わしはそれはしたくない。だって、バエルは、総蔵は、俺の父なんだぞ。」
その瞬間、寒水の瞳からは涙が流れていた。
織田信長としての記憶と、天地寒水としての記憶と、混合している。
温水もゆかりも、寒水に近づいていった。
「そうです。正体は悪魔、バエルかもしれませんが、貴方は天地総蔵。私の旦那さまです。」
「俺にとっても、貴方は天地総蔵、俺の父だ。」
すると、バエルは、バエルとしてのと天地総蔵としてと、二つで揺れ動き。
力がゆるむ。
「さあ、帰りましょう。地上へ。」
ゆかりは、手を差し出すと、総蔵は手を取り、起き上がった。
その時、襲い掛かってきた動植物達は、穏やかになり、攻撃は仕掛けて来なかった。
「そうだな。私のいる場所は、ゆかりの傍だ。」
「私はゆかり、ゆかりの地のゆかり。だから、貴方のゆかりでいたい。」
「まったく、負けたよ。人間ども。」
温水と寒水は、微笑んで、自分の両親を見た。
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