11「計画」

「はじめまして、秋谷満です。寒水君には、とてもお世話になっています。」


お盆になり、満は寒水の家に来ていた。

今日は、十五日である。


寒水に案内されてきた満は、玄関に入り、総蔵とゆかりに迎えられた。

後ろには、温水もいる。


お盆は、ホテルに食べに行こうと話しをしていたが、秋谷が来る為、家の掃除にして、やめた。





玄関へ入り、居間へ通される。

その時に、お菓子を総蔵に渡した。


「これ、僕の手製です。」


とても可愛く作られたクッキーである。

早速、お菓子をそのクッキーにして、お茶にした。

お茶を温水が淹れる。


あれから、食事だけではなく、お菓子も視野に入れて、料理をしていた。

このお茶を淹れるのも、料理の一つである。


その間に、総蔵は質問をした。


「寒水は、ご迷惑をおかけしていないかね?」

「いいえ、とても楽しい会話をしてくれまして、助かっています。」

「そうかね。」


ゆかりも質問する。


「寒水、秋谷君以外にも友達はいるの?」

「はい、寒水君は、とても友達思いで、相談されても適切に答えるから、皆、とても寒水君を好いていますよ。」

「あら、本当、家では話してくれないから、心配になってね。」


そんな二人の言葉を寒水は聞きながら、温水の出すお茶を待っていた。

温水はお茶を出すと、満はお礼を言って、飲み始める。

とても美味しかった。


「お茶、とてもおいしいですね。」

「そう?」

「はい、なんだろう。とても懐かしい味がします。」


寒水と同じ顔立ちをする温水を見て、胸が少しだけ反応をした。

少し、総蔵とゆかりと話をした後、寒水の部屋にいく満。

その時に寒水が温水も呼んだ。


温水は、寒水に呼ばれるままに、一緒に部屋に入る。


「早速だけど、満。」

「うん。」


満は、寒水に言われるまま、持っていたリュックから一冊の資料を温水に渡した。

温水は、資料を受け取ると、それは料理教室の資料だ。


「前、話をしたと思うけど、満は、料理教室に通っていて、その講師の弟子をしている。その料理教室に、兄貴も通ってはどうかと思って、持って来て貰った。」

「へー、こんな感じになっているのか。」


満が通っている料理教室は、講師が温水のアルバイト先にあるレストランに勤めている人がランダムで一人選ばれてきている。

だから、温水もホテルの人に慣れて置くのがいいと思い、寒水は提案をした。


資料を見る温水を見て、満はどこかで見た事があるかな?と感覚があった。


「いいな、ここ。何曜日がえーと…。」

「満でいいよ。」

「満と一緒になれるんだ?」

「俺と一緒がいいの?だったら、土曜日の午後から、俺は入れている。」

「なら、俺もそこがいい。」


寒水は、色々話し始めた温水と満を見て、ニヤリと二人に分からない程度に微笑んだ。




『そう、こうやって上手く誘導出来る。自分の思い通りに事は進んでいる。』




そんな寒水の思惑を知っているのは、ドクだけであった。

ドクは、枕元にいて、そこから温水と満のやり取りを訊きながら、寒水を見た。

寒水の顔は、とても嬉しそうだ。


そうだ。

この人に任せて良かったのだ。

天地寒水は、天下を取れる人。

もう少しで、自分の国に火を放った、あの国を亡ぼせる。


ドクも寒水と同じ、微笑みをしていた。




その日、温水とも連絡先を交換した満を、送っていく寒水。


「寒水の兄ちゃん、すっごく話しやすかったな。」

「そうだろ?」

「それにしても、まさか、あのホテルにアルバイトしているとは、いいなぁ。」

「満もやればいいのに。」

「親が許してくれないんだよ。勉強しろって、本当は温水さんの通っている学校に入りたかったんだけど、学生の本分は勉強って言って、譲らなかったんだ。でも、料理教室は息抜きって事で通わせてもらっているんだ。」

「そうだったのか。」

「でも、俺は、絶対に料理人になる。そして、あこがれのホテルで腕を振るいたい。伝説の赤野夏也さんを目指して、上り詰めたい。」


寒水は、少し考え事をしながら、満と分かれた。

家に帰る間に、考えた。


どうしたら、満を料理の道へと行かせ、温水と一緒にホテルで働けるようになるか。

これは、やってみる価値はある。

寒水は、早速家に帰り、資料集めに専念した。


夏休みの課題は、多いといっても八月に入る前には既に終わっており、今は、自由に物語を作成していた。

その合間には、自分の身の回りの人を束ねる力を付ける為、小さなことでも情報を仕入れて、答えを出して、まとめている。

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