第7話
竜は都市開発に取り残された、この町の廃アパート郡に身を隠して
5年の月日がたった。
廃アパート群と言っても、直近では、災害などの被災者の為の、
避難仮設地だったり、難民支援地区としても使われていて、仮設住宅が
平然と並んでいるが、最近では難民もいなくなり、住民のいなくなった、
忘れられた廃墟の様な所である。
この仮設住宅群は国立大学の裏にあり、大学近くの公園の隅にある
池に挟まれている格好にっている縦横200メートルの一区画だ。
その仮設住宅があった一帯は、地震により被災した人を一時的に
住まわせる為にアパート郡を国が建設したが、今は交通の便の悪さと
建物の老朽化から、住む者は、竜以外にいない。
と言うよりも、フェンスと鎖に囲まれている様な、この区画に竜が勝手に
入り込んで住んでいるのだ。
竜は、毎日のように市役所横の図書館に足を運び、ある事を調べて
いた。
図書館からは、いつも何も借りずに、この長屋に戻ってきている。
図書館に偽名であっても、痕跡も残しておきたくなかったからだ。
夕方には近くの公園のベンチに座り、日が暮れるのを、待つ。
待つ間に昼間、調べた事柄を考えて時間を過ごした。
身なりは、いつも、きちんとする様にしていた。
髭も毎日剃った。
身なりをきちんとする事でのメリットがあたからだ。
身なりをきちんとするす事で飯が食える、話を聞いてもらえる。
髭を剃らないだけで、怪しまれない事など、デメリットの方が多いからだ。
食事は1日2回。
朝は、好んで年期の入った喫茶でモーニングを食べた。
街中にある、防犯カメラになるべく映らないようにしたかったのも、
それらの店を利用する理由の一つだ。
夕食は、図書館などの近くの定食屋で済ませる事が多かった。
周囲が暗くなり、日が落ちてから公園の中から、住家である
仮設住宅郡に、戻った。
と言うのも、公園にあるトイレ、しかも女性用の掃除用具を入れてある
扉から仮設住宅郡に入るからなのだ。
暗い公園のトイレ、しかもこのトイレは蛍光灯が取り除かれており、ここを
利用しようと言う女性はまずいない。
女子のトイレの掃除用具入れの正面の壁には、周りのコンクリートと
同じ色のベニヤ板が立て掛けてあり、そのベニヤ板をずらす形で
アパート郡に入り込んでいた。
他の3室にも、同じようなベニヤ板があり、そこのベニヤ板は、
打ち付けてあり掃除用具入れのベニヤ板に違和感が、無いように
工夫されていた。
竜は、いつもの様に、用具入れの扉を開け左にある蛇口と流しの横の
60センチの隙間からベニヤ板を、手前にずらして出来た隙間に体を
滑り込ませた。
壁には、横50cm・縦に100cmのセメントをくり貫いてある。
厚さ30cmの壁を通り抜けるとアパート郡をぐるりと囲ったフェンスが
トイレの裏側にまであり、トイレの裏のフェンスは針金ハンガーで、
加工され扉のようになっている。
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