第1話 白き閃光

王国と帝国の兵が入り乱れる戦場を1人の青年が駆けていた。

青年の名はシモン、『白き閃光』の2つ名を持つC級の人型守護神の使徒だ。

白いオーラを纏い、高速で槍を振るう姿は敵国に死神を彷彿とさせた。




「いやー!今日も見事でしたな。ハッハッハッ!」


こいつは王国側の指揮官。この戦場の最高責任者だ。C級の使徒とはいえただの傭兵である俺に話しかけてくるとは思っていなかった。何か悪い予感がする。


「ところで君の腕を見込んで頼みがあるんだがアカシアの森へ行ってくれないか?」


周りの一般兵の息を飲む音が聞こえた気がした。

アカシアの森とは今いる砦よりも、もしかすると帝国との戦争の最前線、1番激しい戦場かもしれないと言われている場所である。

普通だったらシモンは断っていただろう。

シモンはただの傭兵、王国軍ではないのだ。


しかし今は周りに王国の一般兵がいる状況、そんな場所であからさまに断れば反逆者として痛い目を見るだけでは済まないだろう。

故に選択肢は1つしかないのである。


「不服かね?」


「いえ、大変ありがたい話です。ただこの戦場は大丈夫なのかと思いましてね...?」


「問題ない。そんなことは貴様の考えるようなことではない。」


明らかに指揮官が不機嫌になった。これ以上は不味いとシモンは思った。


「そうですね。私の愚考をお許しください。王国の為ならば嬉々として馳せ煎じます。」


「ふん、良かろう。3日後に中隊をアカシアに向かわせる。そこに混ざれ。」


そう言うと指揮官はもう用はないとでも言うように足早に本部テントに戻って行った。


残されたシモンを見る周りの兵士たちの視線が痛い。いたたまれなくなりシモンも足早にその場を離れた。


戦場で戦った時よりも疲れた気がしたシモンは早く自分のテントに戻って休みたい気分だった。C級使徒であり個人の傭兵であるシモンは自分専用のテントを建てる事を許されていた。


もう何日も洗っていないタオルで汗を拭く。戦場では水も貴重だ。滅多なことでは飲むこと以外に使えない。

汗を拭きいくらかさっぱりしたシモン。

配給されている夕食をもらい自分のテントへ持ち帰り、傭兵としてのシモンの1日は終わるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る