ささくれの子
米太郎
ささくれの子
僕は、ささくれ。
冬になると、指にできる、あれのこと。
僕がいるっていうだけで、みんな悪口を言うんだ。
「なんで、こんなのが出来ちゃうかな」
「こんなのできるなんて、親不孝でもしてたんじゃない?」
「これ痛いんだよね、やだなぁ」
存在そのものを否定してくるんだ。
僕なんて、生まれてこなければ良かったのにって。
……僕だって、好きで生まれたんじゃないのに。
僕が成長しても、祝われない。
どんどん痛みが増すんだって。
僕が水に浸かったり、物に引っかかると、怒られたり、舌打ちされたりする。
僕だって、好きで大きくなったんじゃないのに……。
そんな僕にも、兄妹ができた。
隣の指にいる、あの子。
僕の方が早く生まれたから、お兄ちゃん。
あっちは、妹。
兄妹が出来れば、僕は嬉しいけれども。
悪口は、もっと増えるんだ。
「こっちの指にもできたんだけど、痛い……」
「そういう場合は、切ってしまって、絆創膏でも貼っておけば良いよ」
そして、僕と、妹は、身体を切られる。
それで、目隠しされるように、絆創膏を貼られて。
また僕は一人きり。
今度は、もっと、違うものに生まれ変わりたいな。
生きていても良いよって、言ってもらえるもの。
生まれてきてくれて、ありがとうって言われるもの。
欲を言えば、誰かに愛されるようなものがいいな。
……それは欲張りすぎかも知れないけれども。
僕は、暗闇の中で目を閉じた。
僕自身が段々と消えてなくなるのが分かった。
◇
再び気がつくと、また暗闇の中だった。
昨日とは、なんだか違う。
周辺もなんだか、違っているようだ。
僕は、少し外へと出てみた。
そこには、綺麗な景色が広がっていた。
「あれ? 顎にニキビが出来るね。思われニキビ。誰かから好かれてるんだね!」
僕のことを指差してきてる。
「えぇ、顎のニキビってそういう意味があるんだ。ふふふ、そうだとしたら、嬉しいな」
僕は、優しい手で撫でられた。
絆創膏の貼られた手。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
ささくれの子 米太郎 @tahoshi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます