青少年蜂起

第25話 事件

「緊急速報です。えー、現在首相官邸から出てきた轍首相が、インタビューに答えました」

 

テレビの画面がスタジオから国会前玄関になる。


「TIは解体いたします。それを先ほど、防衛大臣、官房長官と話をさせてもらいました」


俺は、ネットニュースでその報道を知った。ここ、ビジネスホテルで。

歓喜の溜息を漏らし、TIという存在が消滅していることに溢れんばかりの嬉しさがある。

だが、加奈は違った。


「TI解体ってどういうこと? 父親は何のために死んだのよ!」


彼女は歯噛みし、俺の胸倉を掴んだ。


敦子はそうだよね、と言った。「父親がTI法案を可決させたから、怒るのも仕方ないよね」

その言葉に、俺は疑問を思った。「なんでお前が肇加奈って知ってるんだよ?」

俯いて、「えっと……」と言葉尻を濁した。


「しっかり言葉で説明しろ。何でだ」


敦子は頭を下げた。「ごめん。お兄ちゃんでもそのことは言えない」

俺は舌打ちして、なんだよそれ、と独りごちた。

不穏な空気が流れる。

すると外で緊急速報が鳴った。地震ではない。国家非常事態の警報だ。

スマホのニュースの映像は、再びテレビ局のスタジオを映していた。


「TI兵士が、国会議事堂を占拠しました。青少年が蜂起しました!」

 

それが、TIという軍記の終幕を迎えるファンファーレとなった。





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