第17話 ショッピング
夜の繁華街。俺と美佳は終電が無いのを知って、ホテルに泊まろうか、と話していた。
駐屯地には実はコンビニがあって、支払われる給料からそこで物品を購入できる。
言いたいことはつまり、金銭的余裕があるということだ。
ここは練馬区の一等地。見渡せど高級な邸宅しかない。
「もう少し歩けば、ホテルとかあると思うけど」
俺はそう言いながら、実は加奈の手を握っていた。彼女が握ってほしいと言ってきたからだ。
「でも、補導とかされないかな」
「えっ? どうして?」
加奈は俯いてスカートの丈を掴んだ。「こういうの、軍服とは違うから、まるで学生服みたいじゃない。だからさ」
「確かになあ。どうしたもんか」
じゃあ、と彼女が指差したのは服屋だった。
「変装、変装」
そう彼女は言った。俺はそりゃあナイスアイデアだと言って彼女に連いていく。
店に入ると、まず俺は彼女と別れて紳士服売り場に向かう。
一張羅のスーツがいたるところにある。俺はそれを見ながら、もう少しカジュアルな服はないのかなあと思い、店員に訊いてみると「お客さんは顔がいいから、スーツでもお似合いですよ」と言われる。頭を悩ましてみてスーツでも仕方ないかと思って、ブラックスーツを仕立ててもらう。
スーツを支払って、それを着衣室で着替える。ネクタイは真っ赤だ。
首元にぴったりとネクタイが結ばれているというのは慣れないので、第二ボタンまで開けて、ゆるくネクタイを結ぶ。
彼女の方を見てみると、白コートに中はベージュのニット。赤チェックのスカート。「お待たせ~」
「なんか、すげー可愛いな」
彼女は身体を翻しながら、「そう?」と言ってくる。
「いや、その仕草だけでもすごい可愛いんだって」
「なんでそんな褒めてくれるのかなあ。あっ、ネクタイ」
加奈が俺のネクタイをきゅっと結んでくる。「だらんとしているとだらしないよ」
「なんか、新婚夫婦みたいだな」
するとすました顔で、彼女は「結婚してみる?」と言ってくる。
「じゃあ、今ここで抱いてもいいか」
すると彼女は赤面して、「何言ってんの!」と左右を見渡した。
「いや、抱きしめてもいいかって聞いてんだけど? もしかしてセックスと勘違いしちゃった?」
加奈は俺に掌底を食らわした。「この馬鹿野郎」
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