第10話 青い反骨

大宮駐屯地。地下二階。特別研究室にて。

俺は加奈と別れて真一と駄弁っていた。


「まさか、お前まで徴兵されるだなんてな」


「強制連行だよ。徴兵令状を無視し続けたらそうなった」

そして真一は胸ポケットから電子タバコを取り出した。それを俺が咎める。

すると彼は苦笑して、「これはニコチンもタールもない、ただのおもちゃだよ」と言った。


「そうは言ってもだな……」


「宗谷、そういうのうざいから。ここじゃあ皆吸ってんだよ」

少し憤りも交えた口調でそう言い放つ。

俺は言葉を失った。彼は、俺と同じように社会に反発している。喫煙という分かりやすい方法で、俺は社会の道具じゃない。でも実際は、調教された犬のようになっているのが現状だ。


「お前、この先どうすんだよ」


俺は衝動的に彼に訊ねてみた。


「さあな。野となれ山となれだわ。未来観測なんて死んでもやりたくないし」


「観測理論は、訂したくないか」


真一は煙を吐き出した。「その通り、その通り」

すると研究員と加奈が扉から出てきた。俺達を見やると、「あんたたち、何してんの?」と嫌悪感のこもった眼で見据えてきた。


俺は肩をひとつ竦めて見せて、「精一杯の反抗心だよ」とのうのうと言った。


彼女は溜息を零し、餓鬼が、と言い残した。


「そんなことやってないで、もう帰るよ」


彼女は冷たい眼差しで見やって、踵を返した。

俺は急いで加奈の後を追う。


「ってか、どんな用事だったんだ? 俺全く聞いてねえんだけど」


「理工部隊が極秘に研究している”生物兵器”の資料を、取りに来たのよ」


俺は笑ってしまった。「そんなの、PDFでいいでしょう。そんな人為的な」


彼女はすると睨みつけてきて、「サイバーのことも考慮しての少佐の判断よ。君みたいな近眼じゃあ現場の管理職はやれないのよ」と言った。


思わぬ厭味に、俺は苦笑交じりにはいはい、と相手の神経を逆撫でする相槌を打つ。


「君、舐めてんの?」


「至らなくてすいませんねえ。大尉殿」


「……やっぱり君とはやっていけそうにないよ」


「俺も同感ですわ」


痺れた空気が流れる。それに触れると、痛い目に遭うことが分かっているから、もちろん、放置だ。

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