第41話 やられ役の魔王、姉妹丼を味わう
「フィオーネ姉さん!!」
「キリカ!! やっと、やっと会えた!!」
キリカをエルフの森の外にあるエルシア軍の陣幕まで連れて行ったら、二人は感動の再会を果たした。
片や姉が魔族に殺されたと思っていた妹、片や妹と引き離された姉。
こういうベタな感動シーン、嫌いじゃない。
「良かったな、フィオーネ」
「あ、はい、魔王様。この度はなんとお礼を言えばいいやら……」
「気にするな。俺が好きでやったことだ」
「っ、魔王様……♡」
フィオーネの俺を見る瞳が熱を帯びる。
ちょっと格好をつけすぎたかなと思いつつも、俺には少し気になることが。
「……フィオーネが姉で、キリカが妹で合ってるよな?」
「? はい」
「そ、そうか」
フィオーネとキリカが並ぶと、キリカの方が姉に見える。
単純にキリカの背が高く、逆にフィオーネが低いからだろうか。
もしかしてフィオーネって見た目の割に大人の女性だったりするのかも知れない。
合法ロリ、素晴らしい。
ちょっぴりハードなプレイをお願いしたらやってもらえないだろうか。
「魔王陛下」
などと考えていると、キリカが俺の前に立ち、その場で膝を折った。
そして、頭を垂れる。
「貴方様の寛大なお心により、姉と再会することができました。つきましては先程のお詫びとお礼をしたく存じます。私にできることは無いかも知れませんが……」
「む。いや、別に詫びも礼も要らん」
「そういうわけにはいきません!! 恩に報いねば、私の心は納得できません!! 何でも致しますので、何卒!!」
「な、何でも……ごくり」
キリカはエロい身体をしている。
モデルみたいに高い身長と大きな乳房、長い脚や肉付きの良いお尻。
特にムチムチの太ももが最高です。
「ディアブロ様」
「はっ!!」
背後から声をかけられて、ビクッとなる。
振り向いた先にはエルシアがいて、ニコニコ笑顔でこちらを見ていた。
俺は咄嗟に言い訳を並べる。
「ち、違うぞ、エルシア。俺は何もやましいことを考えてはいなくてだな……」
「……まったくもう」
そう言うと、エルシアはこっそり俺に耳打ちしてきた。
「私のお腹の赤ちゃんが生まれてきたら、他の女の子に注いだ以上に注いでもらいますからね♡」
「!?」
「ふふ。では私はエルフの森に進軍するので、ディアブロ様はここでフィオーネちゃんたちと待っていてくださいね」
「あ、ああ」
そう言ってエルシア率いるエルシア軍は、邪魔するエルフを駆逐しに向かった。
攻略対象が捕まるのも時間の問題だろう。
「……さて、と」
エルシアからの許可はもらった。
キリカもお礼とお詫びに何かしたいと言っているし、ナニしてもらおうか。
俺はキリカを抱き寄せた。
「ひゃっ!! ま、魔王陛下? 何を?」
「何でもしてくれるんだろう? 実は俺の妻は全員お腹に子を宿していてな。あまり激しくはできなくて溜まっているんだ」
「そ、そう、なのですか」
「嫌なら拒否してくれても構わんが……」
そうなるとフィオーネの幼い身体に負担を強いることになってしまう。
キリカはフィオーネより体力もあるだろうし、是非お相手してもらいたいところだ。
そう思っての発言だったが、キリカは勢い良く首を横に振った。
「そ、そのようなことは!! た、ただ、私のような醜女で良いのかと……」
「醜女? 何の冗談だ?」
「え?」
「お前は可愛いぞ」
「っ♡」
キリカはかなりの美人だ。
エルシアたちに混じっていても違和感がない程には絶世の美女である。
一体どこの誰が醜女などと言ったのか。
「わ、私は、エルフの里では醜い女として扱われていましたので……」
「センスが無いな、連中は」
俺、フィオーネやキリカを良いように扱っていたエルフを嫌いになりそうだ。
「キリカ、フィオーネをよく見ろ」
「ね、姉さんを?」
「ああ。どう思う? 可愛いだろう?」
「は、はい。フィオーネ姉さんは可愛いです」
「お前の顔立ちはフィオーネとよく似ている。いや、少しキリカの方が吊り目か? まあ、とにかくフィオーネに似ているお前も可愛い」
「あ、あぅ♡」
キリカは抵抗しなかった。
俺は大きくなった魔剣をキリカの下腹部に押し当てる。
すると、キリカは瞳を潤ませながら言った。
「あ、あのっ♡ 魔王陛下、せめて姉さんがいない場所でしませんか……? 姉さんに見られながらは恥ずかしいので――って、フィオーネ姉さん!?」
「む」
キリカがフィオーネの方を見て驚愕する。
フィオーネは俺たちをネタにして自らのものを弄っていた。
どう見ても発情している。
困惑しているキリカに対し、フィオーネは優しいお姉ちゃんの顔で言った。
「私は大丈夫だよ♡ 魔王様、キリカを可愛がってあげてください♡」
「言われずともそのつもりだ」
「あぅ、そ、その、初めてなので優しくしていただけると嬉しいのですが……♡」
「ああ、分かった」
俺はその日、エルシアが帰ってくるまでエルフ姉妹の身体を隅々まで堪能するのであった。
◇
sideユリウス
ユリウスは危機に直面していた。
数日前、ユリウスは魔王への対処として、同じく危機を感じていたエルフと同盟を結び、協力関係を築くことに成功した。
最初は順調だったと思う。
エルフの森まで侵略してきた魔王軍を森という地形を利用して撃退することができたから。
ユリウスの配下もエルフも士気が上がり、徹底抗戦の意志を固める。
この調子で森に立てこもり、志を同じくするものを集めたら勝てるかも知れない。
具体的な策はまだないが、何とかなる。そう考えた矢先の出来事。
魔王軍に対処していたゲリラ部隊が大怪我を負った状態で帰ってきたのだ。
どうやら銀髪のエルフが裏切ったらしい。
「くっ、まさか魔王に寝返る者が出てくるなんて!!」
「ユリウス陛下。このことは士気を維持するためにも、内密にした方が……」
「……ああ、その通りだ」
配下の進言に対し、頷くユリウス。
しかし、次の瞬間には士気もクソもなくなるような事態に陥った。
「へ、陛下!! 大変です!! 魔族共が森を突破し、エルフの里に侵入しました!!」
「な、なんだと!?」
「くっ、全員で対処に当たれ!!」
ユリウスも自ら剣を持ち、戦場に赴く。
しかし、ユリウスが到着した時点ですでに趨勢は決していた。
逃げ惑うエルフと、それを追う魔族。
投降した者はその場で拘束され、抵抗した者は躊躇なく殺されていた。
それが女子供であっても、容赦なく実行する魔族たち。
この世の地獄か!! とユリウスは思った。
「お? お前が人間の大将か?」
その時だった。
ユリウスの前に目のやり場に困る格好をした、大剣を持った赤い髪の美女が立ちはだかったのは。
「き、貴様は……」
「オレはリュクシュってんだ。お前がユリ、ユリ、ユリなんとかって奴か?」
「……そうだ」
「へへっ、こりゃラッキーだな」
リュクシュはそう言って大剣を構えた。
「我々が時間を稼ぎます!! ユリウス陛下はお逃げください!!」
「近衛騎士は陛下を守れェ!!」
ユリウスを守るため、騎士たちはリュクシュに突撃した。
しかし、予想外の事態が起こる。
一人一人が確かな実力を有する近衛騎士を、リュクシュは見向きもせず斬り捨てたのだ。
「なっ」
「うーん、弱っちいな。まあ、あんま激しく動くわけには行かねーし、この方が良いか」
殺したにも関わらず、無関心。
それから遅れて参戦した騎士たちも、たった一人の魔族に皆殺しにされてしまった。
気が付けば、ユリウスは全力で逃げていた。
脇目も降らず、助けを求めるエルフたちの声を無視して、ただ一人だけ逃げ延びようと全力で走った。
(俺は、俺は王だ!! 俺が死んだら、国がなくなってしまう!!)
そんな言い訳を理由に逃げようとするユリウスの背後から、声をかけられる。
それは最愛だった少女の声だった。
「ユリウス様」
「……え? あ、エルシア……?」
「はい、エルシアですよ」
振り向いた先には、最愛の少女がいた。
「エルシアっ!! 会いたかった!! 君は魔王に洗脳されているんだ!!」
「……は?」
「優しい君が、こんな酷いことをするはずがない!! 俺と一緒に来るんだ!! そうしたら、俺が絶対に洗脳を解いて、今度こそ君を守る!!」
「……」
スッとエルシアの表情が抜け落ちた。
いや、あまりのユリウスのバカらしい言葉に表情を取り繕うのをやめたのだ。
「だからまたやり直そう!! 君となら、俺はなんだってでき――」
「不愉快です。黙ってください」
「あぐっ」
腹に強烈な一撃をくらい、ユリウスは意識を失ってしまう。
最後に見たエルシアの表情は、恐ろしく冷たいものだった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「この温度差よ」
「この魔王はほんまに……」「温度差で風邪引きそう」「次回、王子死す?」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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