第37話 やられ役の魔王、エルフの代表者に会う






 俺はエルフを一目見ようと、アルヴェラ王国の王都だった場所を訪れる。


 そこはすでに魔王城のような禍々しい建物が整然と並んでおり、俺は改めてこの国を魔王軍が占領したのだなと思った。


 ちらほらと人間の姿が見られる。


 しかし、元アルヴェラ王国民だったであろう彼らは男女問わず服を着ることを禁じられていた。


 男も女もすっぽんぽん。

 身に付けることを許されているのは首輪、あるいは鎖のみである。


 俺の少し後ろを歩くバルザックが詳しい説明をしてきた。



「あれらの人間はすでに人格が完成されているため、早めに出荷しました」


「出荷、か」



 うーむ、やはり複雑だ。


 元人間としては助けてやりたいが、同時に魔王としては彼らをどうでも良いとも思っている。


 自分の中に別の自分が二人いるみたいだな。



「では魔王様、しばらくこちらの部屋でお待ちください」



 俺はエルフを収容しているという牧場までやってきた。


 バルザックがエルフの代表者を連れてくるまで、やたらと禍々しい装飾品が置かれている部屋のソファーに座ってボーッとして過ごす。


 その時だった。


 不意に何者かが俺の両目を手で塞ぎ、視界が真っ暗になってしまう。


 そして、耳に吐息がかけられる。



「ディアブロ様、誰でしょう?」



 気配には気付いていたが、まさか『だーれだ?』を生でしてくるとは。


 しかし、ここはもう少し楽しませてもらおう。

 


「さて、誰だろうな? おっぱいを背中に押し付けてくれたら一発で分かるのだが」


「……もう♡ 相変わらずエッチなんですから♡ えいっ♡」


「お、おお……」



 素晴らしい感触とはこの事か。


 俺の背中で柔らかいものが『むにゅうっ』と形を歪めて押し付けられる。


 まさか本当にやってくれるとは。


 この圧倒的な柔らかさと弾力のおっぱい、更に加えて言うなら鈴のように綺麗な声とふわっとした甘い香り。


 俺が間違えるはずも無し。



「私が誰か、当ててみてください♡」


「エルシア」


「正解です♡ ちゅっ♡」



 正解すると同時に俺が振り向くと、エルシアはそれを予測していたように俺の唇にそっとキスをしてきた。



「ふふっ、ちゅーしちゃいました♡」


「悪戯っ子め」



 数日前、俺はエルシアのために魔王でいようと決めて彼女を丸一日抱いた。


 あの日以来、エルシアは以前にも増してイチャイチャラブラブスキンシップをしてくるようになった。


 俺の妻が可愛すぎる。


 

「まったく。窓から入ってくるのは行儀が悪いぞ」


「バルザック様と一緒にいるディアブロ様を街中で見かけてしまいまして。気になって付いてきてしまいました」


「見られていたか」


「私はディアブロ様のこと、ずっと見てますから」



 冗談っぽく本気の目で言うエルシア。


 どうやら俺とバルザックが旧王都に来ることを始めから知っていたらしい。



「ここは人間狩りで人間と一緒に捕まえてしまったエルフたちの収容施設ですけど、何故こちらに?」


「なに、エルフを一目見ようと思ってな」


「む。また女の子に手を出して侍らせるおつもりですか?」



 どうやらエルシアの中では、俺は完全にそういう人になっているようだ。


 いやまあ、普段の行いが行いだからな。


 言い訳はすまい。

 というか言い訳をできるほどの度胸が俺には全く無い。


 俺は笑いながらエルシアの言葉を否定する。



「違う違う。少し話をしようと思ってな」


「本当ですか?」


「む。疑うなら、この場でエルシアに搾り取ってもらっても構わんぞ」



 俺が魔剣を滾らせると、それを見たエルシアが頬を赤らめる。


 エルシアがそっと俺に身を預けてきて、いざ勝負!!

 というタイミングで彼女はハッとし、慌てて俺の誘いを断ってきた。



「あ、その、すみません。やっぱり今日はダメです」


「む、体調が優れないのか?」


「いえ、そうではなくて。その、さっき師匠に魔法で調べてもらって判明したのですが……」



 エルシアがしきりに周囲を気にしながら、こっそり俺に耳打ちしてくる。



「赤ちゃん、デキたみたいです♡」


「……まじか?」


「はい♡ お母さんたちも同時にデキちゃったみたいです♡ 前のハーレムエッチの時にデキたのかと♡」


「そ、そうなのか? えーと、なんだ、こういう時はなんて言えば良いのか分からんが、取り敢えず」



 俺は言葉を絞り出す。



「エルシア、ありがとう」


「ふふ、どういたしまして」



 エルシアのお腹をさする。


 まだ流石に膨らみなどは感じられないが、ここに俺の子供がいると思うと不思議な気分だった。


 しかもマナたちまで妊娠していると言う。



「あとでマナたちにも礼を言いに行かないとな」


「はい。……そういうわけなので、しばらくは本番エッチはお休みです。手やおっぱい、お口でご奉仕しますね♡」


「分かった。エルシアも身体に気を付けるんだぞ」


「もちろんです。もう、私だけの身体じゃないんですから」



 愛おしそうに自らのお腹を撫でるエルシア。


 その表情はベッドの上で見せる女の顔でも、戦場で見せる復讐者の顔でもない。


 我が子を想う母親の顔だった。


 やばい。

 母性に目覚めつつあるエルシアを見ていたら、もうエッチしたくなってきた。


 いや、我慢だ我慢。


 俺の魔剣でエルシアの母親になった顔を女の顔に戻してやりたいとか思っちゃダメだ。



「あんっ♡」



 と、頭では思っていも、やはり抑えられないものというのはあるらしい。


 俺はエルシアのおっぱいを揉みしだいていた。


 ジト目というか、エルシアが「知ってた」みたいな目で頬を赤らめながら俺を見つめている。



「まったくもう、ディアブロ様ったら♡ もうすぐこのおっぱいは赤ちゃんのものになるんですから、乱暴にしちゃメッ♡ ですよ♡」


「いや、ダメだ。これは俺のものだ。いくら息子や娘でも渡さない」


「……本当にもう♡ 独占欲が強すぎです♡ 今日はおっぱいでシますか?」


「ああ」



 本番はしなかったが、俺はエルシアとめちゃくちゃエッチした。


 そして、俺とエルシアの行為が終わったタイミングでバルザックが扉をノックしてくる。



「魔王様!! 失礼いたします!!」


「……バルザック。まさか扉の外で待ってたのか?」


「ははは。何をおっしゃいます、少々エルフの代表者を連れてくるのに時間がかかったしまいました。申し訳ありません」



 などと笑って誤魔化しているが、バルザックの後ろを歩くエルフたちの代表者と思わしき少女は長い耳まで真っ赤にしていた。


 絶対に廊下まで聞こえていたのだろう。


 バルザックは俺とエルシアに気を遣ってくれたのかも知れないが……。


 全部聞かれていたと思うと恥ずかしい。


 いや、我慢できなくなってエルシアとエッチし始めたのは俺だけどな!!



「で、その少女がエルフたちの代表者か? 随分と幼く見えるが……」


「はい。エルフたちに聞いて回ったところ、この少女が最も地位が高いと」


「あ、あの、わ、わた、私、は……」



 エルフの少女はガタガタと震えていた。


 年齢は十二、三歳くらいか。ミーシャよりも少し幼い程度。

 金髪が多いエルフの中では珍しい銀髪と、エメラルドの瞳が綺麗だった。


 ファンタジーなエルフよろしく耳が長く、ピクピクと動いている。


 小動物みたいで可愛いな……。



「それにしても、随分と怯えているな。別に食べたりはしないから安心しろ」


「あ……あ……あぅ……」



 俺が声をかけても青い顔をしたまま硬直するエルフの少女。


 どうも様子がおかしい。


 エルシアもそう思ったのか、あるいはエルフの少女から何かを感じ取ったのか、少女に優しく声をかけた。



「可愛い妖精さん、落ち着いてください。ここには貴女をいじめる人はいませんよ?」



 エルフの少女の隣に座り、聖女然とした笑みを浮かべるエルシア。


 すると、少女はエルシアの優しい笑みに安心したようで次第に落ち着きを取り戻した。



「あ、あの、わ、私、エルフの代表者じゃ、ないです」



 落ち着いたエルフの少女が語った内容は愉快なものではなかった。


 特にエルシアにとっては。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話

エルフの少女からは金木犀の香りがする。



「おめでたやん」「むしろ今までデキなかったのが不思議」「エルフちゃん良い匂いで草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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