第34話 やられ役の魔王、覚悟を決める





 一週間という時間は早いものだ。


 絶世の美少女美女と代わる代わるエッチしまくってたら一瞬だったからな。


 エルシアたちの応援は俺の魔剣を常に滾らせ、彼女たちの身体を隅々まで貪る。まさに至福の時間だった。


 予想外だったのはエルシアの体力だろう。



「むむむ♡ ボクとレベルが一桁も違うのに、まさか最後まで脱落しないなんてビックリだよ♡ 最後の三日くらいはボクがディアブロを一人占めするぬもりだったのに♡」


「ふふ、愛の力ですっ♡ レベル差なんてディアブロ様への想いで埋められるんですからっ♡」



 他ならぬ俺自身、終盤はアルシオンとの一騎討ちになると予想していた。


 アルシオンは俺のハーレムの中でもダントツのレベルを誇り、おそらくベッドの上で俺に勝てるかも知れないメスドラゴンだからな。


 しかし、ここでダークホースとして躍り出たのがエルシアだった。


 エルシアはあろうことか、アルシオンとのレベル差をものともせず、俺にラブラブエッチを迫ってきたのだ。


 更に言うと、エルシアだけではない。


 エルシアのガッツに対抗し、体力が尽きた筈のマナたちもリベンジしてきたのである。


 まあ、それでも俺の方が強いのだが。



「もう♡ ディアブロ様ったら♡ 全員で挑んでも返り討ちなんて♡」


「うふふ♡ ディアブロくんったら素敵♡ 改めて惚れ直しちゃった♡」


「ん♡ 流石はお兄様♡ カッコイイ♡ 好き♡ 大好き♡ お兄様の妹に、女になれて幸せ♡」


「オ、オレもっ♡ 魔王様の女にしてもらえて幸せだぜっ♡」


「まったく♡ 出しすぎなのじゃ♡ これもう妊娠確実じゃのう♡」


「ボクが一番可愛くて強いディアブロの赤ちゃん産むからねっ♡ その時はご褒美にもう一回ボクに赤ちゃん産ませてっ♡」



 前世ではあまり女性に恵まれなかった俺に言ってやりたい。


 これが俺のハーレムだと。



「む、何やら外が騒がしいな」


「あ、ふふふ。ディアブロ様、前に私の言ったことを覚えていますか?」


「うん?」



 エルシアが微笑みながら俺の手を握り、城のバルコニーに出た。

 そこからはアルヴェラ王国の王都を一望できるらしい。


 俺はエルシアに促されて王都を見下ろした。


 しかし、そこは一週間前まであちこちで火の手が上がっていた王都ではない。


 禍々しい雰囲気をまとわせる建物が整然と並び、その光景はどこか魔王城を彷彿とさせるものとなっていた。



「こ、これは……」


「前に私が、恩返ししたいと言っていたことを覚えていますか?」



 恩返し? あー、たしかに言ってたな。



「え? ま、まさか……」 


「はい。ディアブロ様、どうかこの国をプレゼントさせてください。この地にある人も物も、全て魔王様のものです!!」


「お、おお、そ、そうか」



 プレゼントの規模がデカイよ!!


 魔王城ですら結構デカイなーって思ってたのに、まさか国を丸ごと一つとは……。



「ディアブロ様、どうでしょう? 気に入っていただけましたか?」



 エルシアが目を輝かせて言う。


 俺にとってエルシアの用意した贈り物は素直に喜べないものだ。


 魔王の座を重荷に感じているからな。


 そのはずなのに、エルシアからの贈り物となると嬉しい。

 思わず小躍りしたくなるような、素敵なプレゼントだと感じている俺がいる。



「ああ。まったく、俺はこれ以上の贈り物は知らないな」


「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいです!!」



 幸せそうに微笑むエルシアを見ていると、俺はふと思ってしまう。

 エルシアのためなら、魔王のままでいても良いかなと。


 まあ、色々責任とかもあるだろうが。


 だから少し、他に誰もいないこのバルコニーで聞いてみることにした。


 俺は静かにエルシアの名を呼ぶ。



「エルシア。エルシアは、俺に魔王でいて欲しいか?」


「?」


「すまん。変なことを聞いているが、思ったままを答えて欲しい」



 質問の意図が分からなかったのか、エルシアは可愛らしく小首を傾げた。


 少し考えてから、エルシアは答える。



「そう、ですね。本音を言うなら、ディアブロ様を私だけのものにしたいです。魔王の座を奪って、ずっと私だけのものにしたいと考えることもあります。お母さんにも誰にも、本当は渡したくない」



 おおっと。


 それは願ったり叶ったりかも知れないが、マナたちとエッチできなくなるのは嫌だなあ。


 などと考えていると、エルシアはくすっと微笑む。



「でもディアブロ様は魔王です。私以外の女の子にも手を出しちゃうようなダメなお方です」


「む。そ、それは、申し訳ないな」


「ふふ、謝らないでください。私一人では独り占めできないような、強くて、カッコ良くて、優しくて、すっごくエッチで、私たちを沢山愛してくれる素敵な御方」


「しょ、正面から言われると恥ずかしいな……」



 ここまでエルシアに好かれているのは嬉しいし、何だか背中がむず痒くなる。


 しかし、エルシアは俺に構わず続けた。



「魔王じゃなくなったら、きっと私はディアブロ様を独り占めします。それはそれできっと毎日が楽しいでしょうけど……。やっぱり私は、ディアブロ様には私では独り占めできないほど素敵なままでいて欲しい。そういう意味では、ディアブロ様には魔王でいて欲しいですね」


「……本当に良いのか? 俺はこれからも他の女の子にも手を出すかも知れないんだぞ?」


「ディアブロ様のそういうところも含めて愛してますから。あぁ、でもディアブロ様が魔王というお立場に疲れてしまったなら、いつでも言ってくださいね? 私が魔王の座を奪い取って、ディアブロ様を独り占めしますから。そうなったら、他の女の子とはエッチさせませんからね?」



 何故だろう。


 悪戯っぽく笑って言うエルシアの提案は、俺がずっと企てていた計画だが……。


 嫌だった。


 マナたちとエッチできなくなることも少なからずあるが、それ以上にエルシアの望む俺ではなくなることが認められなかった。


 ただ何となく聞いてみただけだが、思わず覚悟が決まってしまう。



「……そうか、つまらないことを聞いたな。すまん。俺はこれからも魔王であり続けるから、独り占めはできないぞ」


「はい!! それでこそディアブロ様です!!」



 近いうちに魔王城へ戻り、バルザックに相談してみよう。

 俺は魔王になってから魔王らしいことを全くしていないからな。


 困った時のバルザック、相談するならバルザックが一番だ。


 まあ、それは一旦おいておくとして。



「エルシア」


「ひゃんっ♡ ディアブロ様? あんなにシたのに、まだシたいんですか?」


「ああ。皆には申し訳ないが、今はエルシアを抱きたい。覚悟しろ、俺は過去最も昂っている」


「あっ♡ こんな大きいの、壊れちゃいます♡」


「安心しろ。一生大事にする。永遠に大切にする。優しく壊してやる」


「……もう♡ ディアブロ様のえっち♡」



 俺はそのままバルコニーでエルシアとめちゃくちゃエッチした。



「あらあら……」


「お姉様、かわいい。お兄様、カッコイイ」


「オレにはあの空気に割り込む勇気はねーなあ」


「なんだかんだ、ご主人様の一番のお気に入りはエルシアなのじゃな。師匠として鼻が高いのじゃ」


「ま、ボクはもう十分可愛がってもらったし、今日はエルシアに譲ってあげようそうしよう」



 部屋からバルコニーに通じる扉からマナたちがこちらを見ていた。


 今日はずっとエルシアを抱きたいから相手してやれないが、明日になったらマナたちも可愛がってやろう。


 バルザックへ相談に行くのは、その後だ。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「このハーレム野郎を許して良いのか!?」



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