第33話 やられ役の魔王、超ハッスルする




 アルヴェラ王国の王都。


 現在はエルシア軍が占領し、略奪や殺戮の限りが尽くされている。


 ある事情によって一部の人間は殺されていないらしいが、基本的に王都の人間は頭からバリボリ食べられているそうな。


 王都の歴史ある建造物は軒並み破壊され、至るところから火の手が上がっている。


 唯一損壊が少ないのは王城だろう。


 俺とエルシアは王城の一室を借りてミーシャの報告を聞く。



「エルシアお姉様が探している奴らは、もう他国を目指して逃げたって」


「……そうですか。ミーシャちゃん、ベルノン様の拷問お疲れ様でした」



 ミーシャは兄だったベルノンを拷問し、見事に王子や一部の重鎮たちが他国へ逃れたという情報を吐かせた。


 その報告を聞いたエルシアは、ちょっぴり不機嫌になってしまう。


 無理もない。

 やっと憎い相手に復讐できると思ったら、獲物はとうにいなくなっていたのだ。


 機嫌が良くなるはずが無いだろう。



「エルシア、大丈夫か?」


「あっ、はい。平気です、ディアブロ様。でも、少しユリウス様を見くびっていました。まさかこうも行動が早いとは」


「……そうだな」



 俺はエルシアの言葉に頷いた。


 アルシオンを返り討ちにしてから、俺たちは一週間で王都まで進軍している。

 道中の街や村を潰しながら来たことを考えると、脅威的な進軍速度だ。


 アルシオン寝返り宣言の直後に王都を捨てて逃げる決断をしたとしても、あまりにも行動が早すぎる。


 個人的には秒で逃走するスタイルは好ましいが、王都の民衆を見捨てるのはどうなのか。



「それにしても、何故ベルノンは王子と一緒に逃げなかったんだ?」


「ん、それも吐かせた。元お兄様はここに残って民衆を扇動、エルシア軍と戦わせるつもりだったみたい」


「む、なるほど」



 ベルノンは民衆を扇動して混乱を抑え、エルシア軍と戦わせようとしたが……。

 民衆はエルシアの甘い言葉に乗せられて、反乱が起こったと。



「ん。じゃあお兄様、お姉様。私はもう少し元お兄様を拷問してくる」


「あら? 拷問にハマっちゃいましたか?」


「……んっ、玉を蹴り潰すのが楽しくて。元お兄様も玉を潰されると何でも話すようになった。反応が可愛いから、つい蹴りたくなる」


「ふふ、そちらも仲直りできたみたいで何よりですね」



 にっこり笑うエルシアに対し、俺は股間がヒュッとなる。

 ミーシャはガンガン責められるのが好きかと思っていたが、意外とドSなのかも知れない。


 と、そこで俺の反応に気付いたミーシャがこちらを見ながら頬を赤らめて言う。



「お兄様のものにはそんな酷いことしない♡ もっと丁寧に扱う♡」


「……ふむ。どんな感じで扱うんだ?」


「ん♡ 実演する♡」



 それから俺は、ミーシャに魔剣をそれはもう丁寧に扱ってもらった。


 ちょっとテンションが上がってやり過ぎてしまい、気絶してしまったミーシャはソファーに寝かせておく。



「まったくもう、ディアブロ様ったら。少しミーシャちゃんを甘やかしすぎです」


「いやー、すまんすまん。それで、エルシアはどうするんだ?」


「……私もディアブロ様に甘やかしてもらいたいですっ♡」


「あ、すまん。逃げた奴らをどうするのかって意味だったんだが……」


「……」



 俺は頬を膨らませたエルシアに押し倒され、彼女の機嫌が直るまでこってり搾られた。


 まあ、今のは俺の聞き方が悪かったな……。


 エルシアとソファーに座り、これからのことを改めて話し合う。


 左側からエルシアが体重を預けてきて、ミーシャは反対側から俺の膝を枕にして気持ち良さそうに眠っていた。



「逃げた王子はどうする?」


「もちろん、追撃します。ミーシャちゃんがベルノン様……いえ、名前を呼ぶのも面倒ですね。『あれ』を拷問して吐かせた情報によると、どうも古くから王国と親交のある国へ向かったようです。今、マロンちゃんに捜索してもらっています」



 どうやらマロンというロリサキュバスの副官はしっかりエルシアの役に立っているらしい。


 近いうちに魔王権限で何か褒美を与えた方が良いだろうか。


 真面目に働いている上、しっかり成果を出している人にボーナスも無いのは少しブラックな感じがするし。



「ふむ。他国となると、エルシアの復讐対象から外れてしまうが?」


「邪魔する奴らは皆殺しです。……と、言いたいところですが」


「む?」


「少数とは言え、王都に至るまでの道中でもディアブロ様から授かった兵士たちから死傷者を出してしまいました。あまり無茶はさせたくない、というのが本音です。皆さん、とても良い方々なので」



 どうやらエルシアは自軍の兵士たちを随分と大切にしているようだ。

 たしかにこのまま他国まで進撃したら、エルシア軍にも少なくない被害が出るだろう。


 エルシアはただ復讐に囚われるだけではない。

 しっかりと広い視野を有し、全体を俯瞰して見ることができる人間だ。



「よし。エルシア軍を拡大しよう」


「え?」


「魔王軍から更に引き抜いて、エルシア軍を増強する。少なくとも倍にはしたいな」


「……良いのですか?」


「構わん。というか、前にバルザックから苦情があったと聞いてな」



 どうも魔王軍では、エルシア軍が人間を殺して食って悪逆の限りを尽くしていることが羨ましがられているそうだ。


 俺もエルシア軍で暴れたい!!


 という魔族たちが相当いるみたいで、適当な村を襲わせて発散させているそうだが、それもそろそろ限界とのこと。


 前に報告に来たバルザックが痩せこけてたから割と深刻な問題かも知れない。



「そ、そんなことがあったんですね。バルザック様、お身体は大丈夫でしょうか?」


「俺も心配している。休むよう命令しないと『魔王様のために働いて死ねるなら本望!!』って言ってずっと働いているからな……」



 忠誠心そのものは嬉しいが、どうもバルザックは行き過ぎている。


 元々バルザックが魔王族に仕える一族だからかも知れないが、奴の俺に対する異様なまでの忠誠心の理由は何だろうか。


 魔王としての記憶を漁っても分からない。



「失礼するのです!!」



 と、その時だった。


 エルシアの副官、ロリサキュバスのマロンが何やら嬉しそうにしながら報告にやってきた。



「マロンちゃん? もう逃げた連中が見つかったんですか?」


「あ、いえ、申し訳ないのです。そちらは鋭意捜索中なのです。そうではなく、『例のもの』が完成したのです。その報告なのです」


「え、もう!? は、早いですね」


「例のもの? エルシア、何のことだ?」


「……ふふっ。ディアブロ様、少しだけ待っていてくださいますか?」



 エルシアは悪戯っぽく微笑むと、わざわざ眠っているミーシャを起こしてまで部屋の外に出て行った。


 何が何やら分からず、困惑したままエルシアを待っていると、不意に部屋の扉が開かれる。


 そこには俺の女神たちが立っていた。



「お待たせしました、ディアブロ様♡」


「あらあら♡ この格好、少しはしゃいでいるみたいで恥ずかしいわね♡」


「ん♡ お兄様、遅くなってごめんなさい♡」


「へへ♡ やっぱおっぱいは丸出しの方が落ち着くぜ♡」


「まったく♡ 賢者たる儂にこんな知能の低そうな格好をさせおって♡ ご主人様よ♡ 気持ち良くしてくれねば承知せぬぞ♡」


「むむむ♡ ボク以外にもディアブロの赤ちゃんが欲しい女の子が沢山いたんだね♡ ま、当然か♡ 強いオスはメスを何匹も侍らせるものだしね♡」



 驚きのあまりに絶句してしまう。


 俺の大切な女たちが勢揃いしている上、何よりその格好だ。


 パッと見はチア衣装。


 でもよく目を凝らして見ると、大切な部分はほぼ丸出しで扇情的なデザインをしている。

 個々人の身体の一番エッチな場所を強調し、俺の魔剣を暴走させた。


 明らかにサキュバスが作ったであろう衣装だ。



「エルシア、こ、これは……?」


「ハーレムエッチの約束、しましたから♡ 今日は、いえ、一週間は寝かせませんからね♡」



 そうだ。そうだった。


 アルシオンを迎え討つ際、エルシアたちと約束したハーレムエッチ。


 魔剣からドクンドクンと脈打ち、力が無限に湧いてくる。



「これ、チア衣装でしたっけ? 誰かを応援する際に着る衣装だとサキュバスの方々から聞きました。私たちが精一杯応援するので、私たちを沢山可愛がってくださいね♡」



 この世に神様がいるなら、俺は貴方を全力で信仰しようと思います。


 ……俺は魔王だけどね、ははは。


 俺の魔剣はエルシアたちに沢山応援されて、よりいっそう暴走し、一週間ぶっ通しで乱れまくるのであった。


 ハーレムって、最高ですね。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「作者も美少女美女に応援されたい人生だった」



「逃げられたー!!」「ミーシャ拷問にハマってて草」「あとがき切実で草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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