第26話 やられ役の魔王、魔剣を滾らせる





 ドットはエルシアしか知らない秘密の地下室に幽閉されることになった。


 うーむ、いくらエルシアの復讐とは言え、ドットには申し訳ないことをしてしまったような気がする。


 寝取られモノって心を抉るからなあ。


 その心の傷がそのまま性癖になっちゃった友人がいるから尚のことそう思う。



「はあ、気持ち良かったです!! 色々な意味で!!」



 エルシアのお肌がツヤツヤしている。


 少々男として同情してしまうところがドットにはあったが、攻略対象らがエルシアを見捨てたことを知っている。


 本気でエルシアのことを愛しているなら、こっそり逃がすなりすれば良かった。


 それをしなかったのは彼らなのだ。


 保身を優先したのか、それともその発想が無かったのかは俺には分からないがな。

 駆け落ちくらいする覚悟があって然るべきだろうと俺は思う。


 うーむ。


 魔王の座を捨ててエルシアたちと南の島でハーレムエッチライフとか想像してみる。


 悪くないどころか、最高じゃないか?



「エルシアの復讐が終わったらそういうのも有りかも知れないな」


「何がです?」


「いや、何でもない。それよりも、王国軍は壊滅的被害を受けている。侵攻を開始するなら今が好機だと思うぞ」


「はい!! そのつもりです!!」



 エルシアはアヴァンの街に配置した戦力を全て王都に向かわせた。


 俺もエルシアの親衛隊部隊長として同行する。



「この馬車、乗り心地が良いな」


「アヴァン城の倉庫にあったものですから、城主が使っていたものかと。ミーシャちゃんが教えてくれました」


「……ん。何故か倉庫にあると分かった。褒めて、お兄様」


「お、おお、凄いな。ミーシャは」



 ミーシャはどうやら自分がアヴァン城の城主の娘であるという記憶すら封じているらしい。


 俺がミーシャの精神状態を気にしていると、横からもう一人のマイクロビキニを着たロリっ娘が会話に入ってくる。


 アルヴェラ王国の元賢者であり、今は魔王ディアブロの性処理ペット。


 ナリアである。


 どうやら馬車を動かせているのはミーシャのお陰という評価が気に入らないらしい。



「お主らなあ。壊れておったこの馬車を魔法で直してやったのは儂なのじゃぞ、んん? 感謝は儂にするべきじゃろ」


「ああ、ナリアも助かったぞ」



 ミーシャとナリアの頭を撫でると、二人は幸せそうに目を細めた。


 馬車の中はそこそこ広い。


 しかし、そこそこ広いはずの馬車だが、少しばかり窮屈な感じがした。

 というのも、この馬車には合計六人も乗っているからだ。


 まずは俺、エルシア、ミーシャ、ナリア。


 そして、親衛隊の一員であるリュクシュと医療担当のマナである。


 今回は本格的な国落としだからな。

 いつ怪我人が出ても良いよう、エルシアがマナを魔王城から連れてきた。


 リュクシュは――



「はわわわわ!! オレ、ずっと魔王様にタメ口利いてた、あががががが!!」


「あー、リュクシュ。そろそろ落ち着いてくれ」



 リュクシュには俺の正体を明かした。


 俺はリュクシュのことを友人だと思っているが、ぶっちゃけると女としても見ている。

 もっと正直に言うなら、いつでもどこでも抱きたいのだ。


 だから俺はリュクシュに正体を明かし、正式に妃として迎えることにした。


 エルシアからはオッケーをもらっている。


 あまりにもあっさりエルシアがオッケーしたので理由を聞いてみたら、以前の『ディアブロ様が他の女とエッチしてるのに興奮する』という理由に加え、もう一つ。



『最近、ディアブロ様のレベルが上がったからか皆で代わる代わるエッチしても体力が追いつかないので……。一人や二人、増えても良いかなと』



 ということらしい。


 たしかに数日前の王国軍殲滅で一気にレベルが上がったからなあ。


 ……この理論で行くなら、もっとレベリングすることでハーレムを拡大できてしまうのではなかろうか。


 とまあ、その話は一旦置いておくとして。



「リュクシュ、そう緊張しないでくれよ。いつも通りのフレンドリーな感じで頼む。敬語で話されると寂しいからな」


「あ、は、はい!! じゃ、じゃなくて、お、おう、気をつける、ます? る!!」



 テンパってるの可愛いな、リュクシュ。



「あらあら、ディアブロくんったら♡ しばらく見ない間にすっかりハーレムねぇ♡ ママ寂しいわぁ♡」


「なら、今日はマナを最初に抱くか」


「やった♡」



 マナが腕を絡めて魔剣を欲しがってきたので、一番に抱いてやった。


 マナ普段、魔王城の医院にいるからな。エルシア軍で活動していると中々エッチの機会が巡ってこないのだ。



「お母さんだけずるいです!! ディアブロ様、エルシアも可愛がってください♡」


「オ、オレも……♡」


「お兄様♡ 私も好きに犯して♡」


「ご主人様よ♡ 儂も辛抱堪らんのじゃ♡ めちゃくちゃにして欲しいのじゃ♡」



 前世の自分に教えてやりたい。


 良い大学を卒業して就職先が決まっても、親孝行はできないし、妹の結婚式の晴れ姿も見られないが……。


 少なくとも転生したら極上の美幼女、美少女、美女がお前を待っている、と。



「王都まで暇だからな。全員同時にかかってくるが良い」



 俺は五人同時に相手をしようと、ズボンを脱いで魔剣を反り勃たせる。


 その時だった。



「む。……チッ、良いところだったのに」


「ディアブロ様、どうかしました?」


「ああ。どうやら例の奴がお出ましのようだ。凄まじいプレッシャーだな」



 肌がピリピリして仕方がない。


 絶大な存在感を放つ生き物がこちらに真っ直ぐ向かってきている。


 ほぼ間違いなく聖竜だろう。


 単純な魔力量では俺を上回っており、通過した場所が聖竜の垂れ流している魔力が原因で大嵐が起こっている。


 ナリアも遅れて気付いたらしい。



「むぅ、凄まじい魔力じゃな。しかし、奴が目覚めたということはアルヴァンスは……」



 聖竜は王国の秩序を守る存在。


 ゲームの逆ハーレムルートでは王国の未来の権力者たる攻略対象たちをエルシアが軒並み篭絡してしまったことで登場する。


 国王はエルシアを乱しかねない存在とし、その命を代償に目覚めさせるのだ。


 そして、聖竜がエルシアを裁判にかける。


 少し大袈裟な気もするが、如何に聖女とて未来のアルヴェラ王国の権力者を軒並み篭絡してしまうのは異常。


 実は聖女ではなく、魔女なのではないか。


 そう疑いたくなる気持ちも分かる。というか、実際にそういうルートがある。


 逆ハーレムルートでは攻略対象の好感度が限界突破し、かつ魔王を倒していない状態だと聖竜はエルシアを秩序を乱す存在だと認定する。


 その結末はバッドエンド。魔女として処刑されるエンディングだ。


 逆ハーレムルートは好感度調整が難しくて、魔王を倒さずにハッピーエンドにするのが大変だった覚えがある。


 この好感度を上手く調整してやると、聖竜はエルシアに無害判定を出す。


 その結果、国王は聖竜に命を捧げたため、新たな王に攻略対象の王子様がなり、最後はイケメンたちに囲まれてハッピーエンドとなる。


 今回の場合はエルシアの裁判ではなく、魔女軍の撃滅のために目覚めさせたのだろう。



「ここは俺の出番だな」


「ディアブロ様!!」



 俺が立ち上がり、馬車から降りようとしたタイミングでエルシアが呼び止める。



「ん? どうした、エルシア?」


「無事に、帰ってきてくださいね?」


「ああ、当たり前だ。聖竜ごときに負けるつもりは微塵もない」



 聖竜をぶっ倒したら、一体どれほどレベルが上がるのか。


 想像するだけでワクワクする。



「もし無事に帰ってきてくれたら、その」


「?」


「……いっぱい、エッチなサービスしますから。頑張ってください!!」



 エッチなサービス、ですと?



「あら、じゃあママもエッチなサービスするわね」


「オ、オレもします!! じゃなくて、するぜ!!」


「お兄様のためなら何でもする」


「儂は性奴隷じゃからな。ご主人様にご奉仕するのは当然なのじゃ」



 うーむ。さっきも全員抱くつもりだったが、この調子なら全員でコスプレエッチとかさせてもらえるのでは?


 チアガールのコスプレをさせて、全員に魔剣を応援してもらうとか、すっごいやりたい。



「行ってくる」



 俺は馬車を降り、飛翔した。


 帰ったらチアコスハーレムエッチ。想像するだけで魔剣が反り勃ってしまう。


 俺は魔剣を大きくしたまま、聖竜と対峙するのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「問い。魔剣ガチガチ状態の魔王と遭遇した聖竜の気持ちを答えよ」



「リュクシュかわいい」「もげろ」「あとがきの問題が難しい」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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