第7話 やられ役の魔王、やらかす




 エルシアから実家の場所を聞いた俺は、単身で彼女の母を探して森を彷徨っていた。


 目が合うと喧嘩を売ってくる魔物が多く、一体一体相手にしていたため、すっかり日が落ちてしまっている。


 もう殆どダンジョンだよ、ここ。


 いや、もしかしたらダンジョンよりタチが悪いかも知れない。


 この森の魔物は弱い魔物が多いものの、それらを統率する個体がいないのである。

 だから組織的に行動することがなく、襲撃が読みにくい。


 めっちゃ襲ってくる時は襲ってくるのに、ちっとも襲ってこない時は襲ってこないのだ。


 俺にとっては大した問題ではないが、散発的な魔物の襲撃はここで暮らそうとする者にとってそれなりの脅威のはず。


 子供の頃のエルシアやエルシアママンはどうやってこの森で暮らしていたのか気になるな。



「ん? なんだ、妙な感覚だな」



 突然、森の雰囲気が変わる。


 鬱蒼と生い茂り、空気の濁っていた森が、妙に清々しい雰囲気へと急に変わった。



「ん?」



 しばらく進み続けると、森が一気に開けた。


 木が生えておらず、代わりと言わんばかりに畑が広がっている。

 野菜や麦など、少人数で管理できる範囲の限界はあるのではなかろうか。


 そして、その中心にポツンと建つ家。


 建物自体は古く、ところどころに破損は見られるが、掃除の行き届いた綺麗な家だ。



「ここだな」



 俺は家の扉の前に立ち、ノックする。


 すると、扉の向こう側から若い女性の声が聞こえてきた。



「はーい、どちら様です?」



 そう言いながら出てきた美女は、手に持った槍で的確に俺の喉を狙った。


 いや、怖っ。


 俺の皮膚は並みの刃を通さないため、躱す必要こそ無かったが、俺じゃなかったら今ので死ぬと思う。


 エルシアの母は少し昔に何かやらかしているらしいし、俺を追手とでも勘違いしたのだろうか。


 攻撃が効かなかったことに目を見開く美女は、どこかエルシアの面影がある。

 純白の髪やサファイア色の瞳も似ているが、何より……。


 どたぷんっ、という効果音が出そうな程の圧倒的バスト。


 でっかッ!!!!


 エルシアがメロンなら、目の前の美女は夏場のスーパーに売っている大玉スイカと表現すべきだろう。


 エルシアの姉だろうか? しかし、ゲームではエルシアに姉などいなかったはずだが……。



「はじめまして。この度、エルシアさんと結婚させていただきました。ディアブロと申します」


「まあ!? あ、あの子が結婚!?」



 俺が丁寧に頭を下げると、エルシアの姉? と思わしき人は槍を下ろして目を瞬かせた。



「お母君にご挨拶したいのですが、お邪魔してもよろしいでしょうか? お義姉さん」


「あらぁ……。ふふふ、お上手ですね」


「?」


「私がエルシアの母、名をマナと申します」


「……え? え、若っ!? でっ――」



 危ねっ。

 ビックリしすぎて言わなくて良いことまで言おうとしてしまった。


 それから俺はマナさんの家の中に入り、諸々の事情を説明する。



「そう、あの子がそんな目に……。まったく、相変わらずね、あの国は」


「……どうかしました?」


「いえ、何でもないわ。少し昔のことを思い出したの。ダメね、今は昔とは違うかも知れないと思って国にあの子を任せたのが間違いだったわ」



 マナさんがどこか自嘲気味に俯くが、すぐに表情を明るくした。



「それにしても、あの子が結婚なんて。亡くなったあの人が知ったら驚くわねぇ」


「ええと、反対されないんですか?」


「あら、何が?」


「いやほら、俺これでも魔族ですし。魔王ですし。娘さん、吸血鬼に変えちゃいましたし」


「あの子が幸せならオッケーよ」


「オッケーですか」



 心が広いというか、豪胆というか。


 流石はヒロインの母親と言ったところか。肝が据わってるなあ。


 と思ったら、マナさんが微笑みながら言う。



「まあ、あの子を泣かせたら許さないけど」


「そこはご心配なく。ベッドの上でしかゲフンゲフン!!」



 危ない危ない。


 エルシアを鳴かせているのはベッドの上だけとか言いそうになった。


 まずい。マナさんがこちらを見ている。


 あ、そうだ。

 手土産として持ってきた酒を渡して話を逸らそうそうしよう。



「遅れましたが、これどうぞ」


「あら、これは?」


「俺はダンジョンに潜るのが趣味でして。宝箱から見つけたお酒です」


「まあ!!」



 お酒と聞いた途端、マナさんが今までとは一味違う笑みを浮かべる。


 表情がコロコロ変わって可愛いな、この人。


 俺から酒瓶を受け取ると、マナさんはグラスを二つ持ってきた。



「少し付き合ってもらえるかしら?」


「え? あー、しかし、すぐにお義母さんを連れて魔王城に戻りたいのですが……」


「もう夜も遅いし、少しくらい良いじゃない。私、お酒は誰かと飲みたい主義なの」


「……まあ、少しくらい大丈夫ですかね?」


「うふふ。話の分かる子が息子になって、お義母さん嬉しいわあ」



 実は俺、前世ではすぐに顔が赤くなって酔っ払ってしまう体質で、あまりお酒というものを楽しめなかったのだ。


 大量のゲロを友人にぶっかけてぶん殴られたのは良い思い出である。


 でも今の俺は魔王。


 お酒を飲んでも大丈夫だろうし、今なら純粋に味を楽しめるはず。



「んっ、くっ、ぷはぁ……。とっても美味しいわね、これ」



 グラスに注いだ酒を飲み干した。


 ほうっと息を吐くマナさんは頬が赤くなっており、仕草がやたらとエロい。


 いや、待て待て。


 仮にも相手は妻の母親だぞ、俺は一体何を考えているのだろうか。


 俺は雑念を振り払うように首を振り、グラスを呷った。



「む、美味しいですね」


「あら、飲んだことないの?」


「あ、ええと、あまり嗜好品に興味が無かったもので」


「そうなの?」



 前世の記憶を取り戻してからしばらく経っているが、レベル上げで忙しかったからな。

 酒を飲む余裕は無かったというか、意識すらしていなかった。



「勿体ないわ。お酒は人生を豊かにしてくれるのよ」


「ははは」



 前世の友人とまったく同じことを言ってる。


 それから俺たちは持ってきた酒瓶をすぐに空にしてしまったのだが……。


 と、そこでマナさんがどこからか追加のお酒を持ってきた。



「うふふ。やるわね、ディアブロくん。こんなにお酒の強い人と会ったの、初めてかも」


「いえ、結構酔ってますよ。……あ、あの、何故隣に?」


「細かいことを気にしちゃメッよ」


「そ、そうですか」



 マナさんが俺の隣に座り、身をじりじりと近づけてくる。

 お酒の匂いに混じってふわっとした甘い香りがした。



「……ごくり」


「ディアブロくん、すごく良い身体してるわね。鍛えてるの?」


「い、いえ、これは、その、元からこんな感じです」



 や、やばい。なんか、心臓がドキドキしてきた。


 てかマナさんが隣に座るせいで、谷間が見えちゃってる!!


 エロい!! や、やばい、俺の魔剣が……。



「あらあら……。うふふ、えいっ」


「な、何を!?」



 むにゅうっと、柔らかいものが俺の腕に押し付けられる。

 それが何であるか理解するまで、大した時間は要しなかった。


 おっぱいだ。


 マナさんの大玉スイカおっぱいが、俺の腕に当たって形を歪めている。



「だってディアブロくんが熱い眼差しで私の胸を見てくるんだもの。お義母さんショックだわ。娘のお婿さんが、こんなおばさんで興奮する悪い子だったなんて」


「そ、それは……」


「あら。言い訳しても、ダ・メ♪ ココ、しっかり大きくしてるじゃない」


「……お、お義母さん、酔いすぎですよ」



 マナさんが俺の硬くなり始めた魔剣を細くしなやかな指で突っついてくる。


 変な気を起こす前に距離を取ろうと、俺は席を立ったが、自分が思っていたよりも酔っ払っていたようだ。


 足がもつれ、隣に座っていたマナさんも一緒に巻き込んで床に倒れてしまった。


 しかし、痛くない。何か柔らかいものがクッションになった。



「あんっ」


「っ、す、すみません!!」



 そのクッションは、マナさんの爆弾おっぱい。


 事故とは言え、俺は妻の母親の大玉スイカおっぱいを揉みしだいてしまったらしい。


 俺は慌てて退こうとしたが、そのままマナさんに抱き締められ、その極上の柔らかい果実に頭を埋めてしまう。



「お義母さん!? ちょ!?」


「……マナ」


「え?」


「マナって呼んで? お願い」


「……マ、マナ?」



 猫なで声で言ってくるマナさんがあまりにも可愛くて、俺は素直に名前で呼んでしまった。


 するとマナさんが、いや、マナは妖しく笑う。



「もう、駄目ね。我慢できないわ。えいっ」


「え? うお!?」


「うふふ、押し倒しちゃった♪」



 上下が逆転し、マナが俺のマウントポジションを取る。



「貴方がいけないのよ? あの子が、エルシアがいるのにこんなに硬くしちゃって」


「そ、それは、マナが……」


「まあ!! ママのせいにするなんて悪い子。腕っぷしも強くて、お酒も強くて、礼儀正しくて、見た目もカッコいいディアブロくんがママを先に誘惑してきたんじゃない♪」


「そ、そんなことは……」


「私、あの子の前では頑張って優しい母を演じていたわ。でも、私だって女なの。一人は寂しいし、辛いわ。それなのにいきなり私の前に現れて、いきなり私好みのお酒も腕っぷしも強いところを見せられたら……好きになっちゃって当然でしょう?」


「っ」



 俺の巨大化した魔剣に、自らの鞘を擦りけてくるマナ。


 その時、俺の中の何かが壊れた。


 酒で理性が脆くなっていたのだろう。

 あるいは、マナの見せた妖艶な笑みがトドメとなったのかも知れない。


 俺はやらかした。


 次に理性を取り戻した時、俺はベッドの上でマナと抱き合っており、お互いの身体を貪り合っていた。


 絶対にエルシアにバレてはならない秘密を抱えてしまったのだ。


 ……やばい、どうしよう?



「ディアブロくん、もっとぉ♡ もっとママと気持ち良いことしましょ……?」


「……この淫乱が。もうどうなっても知らんからな!!」


「あんっ♡ すごっ、らめっ、ディアブロくんが本能剥き出しになってりゅ♡ あっ、ごめんなさいっ、エルシア♡ こんなママを許してっ♡」


「もっとちゃんとエルシアに謝れ!!」


「あひんっ♡ ごめんなさいっ♡ エルシア、ごめんなさいっ♡」



 俺は考えるのを止めた。





―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


デ「ギルティorノットギルティ?」


作者「裁判の必要無し。地獄行きじゃあああああああああああああああああああッ!!!!」



「エルシアママ好き」「有罪」「ごーとぅへる!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る