トゲぬき
山樫 梢
トゲぬき
ちょっとしたことでユッコとケンカした。いつもはあれぐらいそんなに気にならないのに、今回はなんか……心にトゲがささったみたいっていうか……
いたっ! なに!?
うぎゃ、心じゃなくて手にトゲがささってる! どっから出てきたのこれ!?
あ、ここか。いつのまにか
――って、先にこれをどうにかしなきゃ。えーと、毛ぬきが引き出しに……。
いま、なにか、引き出しの中で、動いた。
ギャーッやだやだ虫!? おっきかったけどまさかネズミ!?
まって、出てこようとしてない!?
やめて助けて引っこんでろ出てくんなそっから顔を出すんじゃないっ!!
……顔?
顔がある。目が合った。
なんか……まるで……
「おお、あなた見えてますね!? 私のことが見える人に出会ったのは初めてです!」
出てきた小人(
どうしよう。変なものが見えただけならメガネの度のせいにできたのに。耳はいいんだよなー、わたし。
あわてない、あわてない。とにかく調べてみよう。
あれ、スマホに
「
これじゃ本当にいるのか、わたしの
「どっからわいて出たの?」
「
つまりそっから入ってきたってこと? かってに入ってきといてなんでエラそうなの。
「それで、なんの
「妖精です」
「ぜんぜん妖精っぽくないじゃん」
少なくともこいつの
「ほかの妖精を見たことがおありで?」
「見たことはないけど、妖精っていったらティンカーベルとか、もっとかわいい感じの……」
「だいたい、それ和服でしょ」
ジンベイとかいうんだっけ? はいてるのもゾウリだかワラジだかってやつだし。妖精ならもっとファンシーなファッションのはず。
「日本の妖精が日本の服を着ているのは
いちいち言い方がムカツク。日本人だって洋服着てるのに!
「妖精にもいろいろいるんでしょ? あんたはなんていう
写真がムリでも、名前で検索すれば出るかもしれない。
「私、今まで人に
まさかの
「そう言われても、あんたのことなにも知らないし……。
「もちろん使えますとも」
「どんなの?」
空を
「あらゆるものにささくれを作ることができます」
は? ささくれ?
「ささくれって……指の横とかにぴょこって出てくる、あれ?」
「それです」
そっかぁ。あれかぁ。
「私の力をもってすれば、指といわず物でも体でも心でも、どこでもささくれを作り
ショッボ!! ドヤ顔してなに言ってんのこいつ!?
「……まって、じゃあこの机こんなことにしたのあんた?」
「そうです」
「やっぱ妖怪じゃん!」
「妖精です」
「
「まったく、これだから日本の子どもは。なんでもかんでも妖怪のせいにする」
なにそれ
「あなたの少ない
「人にケガさせといてイタズラですむと思ってんの?」
「レッドキャップのように
知らなかった。妖精ってぜんぜんかわいくないんだ……。ほぼ妖怪じゃん。
「それで、なにか思いつきました?」
「じゃあ、妖怪ささくれ
「妖精だっつってんだろこのアマ!! ブラウニーやレプラコーンみたいな、
うっわキレた。引くわー。
「そんなショボイ
だいたい、物や体は分かるけど、心にささくれって……。
「わかりました、
ひとりでブツブツ
妖怪よりUMAの方がグレードが高いわけ?
って、そんなのはどうでもよくて。
「ねぇ、心にささくれができるとどうなんの?」
「そんなことも知らないんですか? トゲトゲしい気持ちになるんですよ」
「へー」
ささくれ小僧をつまみあげて、メガネケースにおしこむ。
ごちゃごちゃうるさいけど知ったことか。
どうしよう。どこがいいかな。近くの公園だと遊具があるから、ささくれでケガする子が出てもこまるし……。
ちょっと遠いけど、あそこにしよう。
自転車を走らせて森林公園へ。公園なんていっても木しかない。
こういう所で遊ぶのはヤンチャな子だから、木にささくれがあったとしても気にしないでしょ。
メガネケースをふって、中身を草むらへポイ。
じゃあね、ささくれ小僧。
妖怪のポイ
迷惑、うるさい、態度がデカイのスリーアウト。
あんなのがうちで
ささくれ小僧を捨てたらウソみたいに心のトゲがとれて、わたしはユッコと
昔の人が妖怪のせいにしてたことって、本当に妖怪のせいだったのかも? なんて思ったら、頭の中のささくれ小僧が「妖精だっつってんだろ!!」とツッコミをいれてきた。
ささくれと同じで、しつこい。
トゲぬき 山樫 梢 @bergeiche
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