第11話 情報屋

その日の午後



オノダは午後もやるつもりであった魔物の採取を取りやめ、自分の研究室がある闇組織の拠点まで戻っていた。



「トントン」

「誰だ?」

「私ですよ、オノダです。オルドさん」

そう言い、この闇組織のボスであるオルドの部屋に入った。

「珍しいな、自分から会いに来るなんて。で、何の用だ?」

「二つほど訊きたいことがありまして…実はこの世界の住人ではない者達の情報なんて知りませんか?」

「勇者の話か?」

「勇者ですか?」

「何だお前何も知らないのか?」

「ええ。で、勇者というのは?」

「勇者は少し離れた宗教国家、聖バロス教国で予言の聖女が魔王の誕生を予言すると異世界から呼ばれる者達のことを指す」

「ほう…ちなみに『達』ということは複数人いると?」

「ああ、正確な人数は知らんが何人もいると聞いた。で、それがどうしたんだ?」

「いえ、ちょっと気になることがありまして。あともう一つ訊きたいなんですが、情報屋なんてこの都市にいませんかね?」

「いるぞ」

「どこにいるか教えていただけませんか?」

「ああ、いいぞ」

(案外、簡単に教えてくれましたね)

オルドは情報屋の簡単な地図を書いて、オノダに渡した。



その後、勇者の事が気になってしまい、午後は研究の続きをしようと思っていたが、結局できずに一日を終えてしまったオノダであった。



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翌日



オノダは前日にオルドから貰った地図を頼りに情報屋のところに向かった。

てっきりスラム街の中かにあると思いきや、普通に大通りの店の中の一軒らしい。

最近オノダは外に出るときは黒いローブを羽織って出ている。

理由は自身の容姿だ。

オノダの容姿は端的に言って優れている。

普通に町中を歩いてるだけで目立つ為、露店で黒いローブを買い、身に付ける様にしていた。



(ここですか…情報屋と言うだけあってこじんまりとしていますね…)



そんなことを考えながら、オノダは到着した店の中に入って行った。



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店は魔道具屋に偽装しているのか、魔道具がヅラっと並んだ棚が目に入った。

奥に行くと店番らしき丸眼鏡の少女がレジらしきところに座って魔道書を読んでいた。



(確か…)

「取り置いてもらっていた商品を買いに来ました」

少女はオノダの話を聞くと魔道書を机に置いてこちらを見た。

「何番ですか?」

「16番の品です」

これこそがメモに書いてあった情報屋に会う時の合言葉だった。

「…裏へどうぞ」

そう言うと少女は自身の後ろのカーテンをめくって奥の部屋に入って行った。



奥の部屋にも大量の魔道具があり、オノダはそのまた更に奥の廊下に連れていかれた。

廊下の一番奥は下への階段と繋がっていた。

その階段を降りると扉があり、少女はそれを開けてオノダを部屋の中へと入れた。



「ここでお待ちください」

少女はそう言うと部屋から出て行ってしまった。



数分後、扉が開いて、一人のスレンダーな20代ほどの美女が入ってきた。



「あんたが依頼人かい?」

「ええ、そうですよ」

「で、何が知りたい?」

「勇者についてです」

「何故勇者のことを知りたい?」

「そりゃ勇者だからですよ、他に理由がいりますか?」

「そういうことを聞いてるんじゃない…ま、良い。私には関係のないことだしな。で勇者の何が知りたい?」

「私が知りたいのは勇者の特徴、能力、数くらいですね…」

「何故そこまで勇者のことを知りたがる?どこかの組織の間諜か?」

「いえいえ、私がスパイだなんて…同じ裏の人間ではありますが分野が違いますよ」

「暗殺者?」

「何故そう思うんです?」

「死臭だよ。今まで仕事柄裏社会の人間とは何十回も会ってきたけど、あんたほど死臭が漂っている人は初めてだ…」

(おや…そんなところから気づかれるものなんですね…今後は注意せねば…)

「違いますよ、暗殺者でもありませんよ」

「そう。で、情報の報酬は?」

「うーん、そうですねぇ。あなた達が困った時に一度だけ助けてあげることというのはどうでしょう?」

「報酬じゃないし、あなたがここから逃げない確証がどこにあるのよ」

「じゃあ、情報を一つ売りますよ」

「情報屋に情報を売るの?」

「ええ」

「で、何?」

「この町は半年以内には消えます」

「どういう意味よ」

「地図から消えるというより、人間の生存圏ではなくなる可能性が非常に高いということですよ」

「何でそんなことになるの?」

「それはまだ言えませんよ、これ以上言ったら私が大損してしまうかもしれませんから」

「そんなことを信用しろと?」

「えぇ、そうです」

「わかったわ、信用してあげる」



そこから私は勇者の情報について聞かされた。




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研究室に戻ると、私は勇者の情報の整理を始めた。



勇者、つまるところのオノダと同じ異世界人はどうも高校のクラスごと召喚されたらしい。

生徒32人、教師2人の合計34人が勇者ということである。

生徒たちの評判は表では正に勇者、と言われるらしいが、実際には勇者なのに訓練なやレベル上げなどもほとんどしないような奴らばかりであった。

(このままだともし勇者と対立しても勝っちゃいますねぇ…そういう意味ではしばらくは手を出さなくてもいいですかね…)

ただ一部の真面目であったり、優秀な生徒たちはな勇者たちは訓練もレベル上げも本気でしている為、そこは注意しなければならない。



教師たちは、異世界の叡智、として元の世界の技術や知識を教えているらしい。

(これはめんどくさそうですね…)




だが、しばらくは様子を見るだけで良いだろう、とオノダは思った。



気になっていたことが解決した為、オノダは次の日から再び研究を再開した。




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研究を再開してから3ヶ月後、この都市を消してから自分を売り込む為の兵器の開発、運用方法などの資料の準備が終わった。



いや、終わってしまった。









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