第12話 崩壊

その日は快晴な日であった。



普段と同じように出店がある大通りには人が溢れ、壁門を守る守衛が忙しそうに都市に入る人間のチェックをしている。

子供たちは広場を走り回って鬼ごっこなどをして遊んでいた。



そんないつも通りの日になる、はずだった…



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「ん~気持ちの良い日ですねぇ~」



遂に闇組織との契約の最終段階に入ったオノダは伸びをしながら言う。



(こんな良い日に都市が1つなくなるなんて信じられませんね…)

オノダは口角を上げなあら思う。



そう、今日こそが闇組織の組織拡大の実行日、引いては開発したウイルスを蔓延させ都市での研究開発の証拠隠滅を図るものでもあった。



これから組織の人間に強化人間に必要な手術を受けさせ、魔獣の血を大量に血液中に混ぜれば、脳に急激な負荷が掛かり、そのまま暴走するという手はずだ。

そして強化人間には不死性に近いものも持っている為、普通の攻撃では死なないし、魔法抵抗力も強化してあるため魔法も余り効果がないだろう。



(念には念を入れて、魔核と一緒に心臓部に小型爆弾も仕込んどきましたし…よっぽどのことがなければ大丈夫でしょう…)



慎重なオノダは更に研究拠点に核撃魔法が込められた時限式の爆弾型魔道具を置いて、城塞都市メルトを後にした。




数時間後、エルダンで大規模な爆発があったとの知らせを聞いて、オノダは口角を上げた。



オノダは実際に自身が開発した観測用魔法でエルダンの状況を確認した後、次の目標を達成するべく、グルス王国の敵国である侵略国家ルルシア帝国の帝都を目指した。



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ーグルス王国王城ー



その日、会議室にて国王とその側近である大臣たちによる緊急会議が行われていた。

部屋には中央に細長いテーブルが置かれており、



「エルダンが消滅したというのは真か?」

「はい、陛下。真でございます」

「消滅したとは一体どういうことか?…」

「現在調査中ですが、周辺に異常な魔力反応があることから魔法の可能性が高い、との報告が来ております」

「都市を丸ごと飲み込むほどの爆発を起こせる魔法など現存してないはずだ。古代魔術にはそういったものもあったと聞くが」

「それも含めて調査中です。正直に申せばこれが人為的か事故かも現状では判断しかねます」

「国家魔導師や冒険者ギルドなども明日には調査に動く手筈となっておりますので現状は帝国との国境の駐屯兵を増やすことくらいしかできることはないかと」

「それもそうだな…グルー要塞の駐屯兵を倍に増やせ。それと全ての帝国国境部の砦に当分は警戒を特に強くするように命令を出せ!」

「「はっ」」


こうして会議は閉会となった。


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グルー要塞


エルダンよりは内側にあるが、グルス王国対帝国司令部がある軍事基地。

山々とカーヌ川と呼ばれる王国一巨大な川に挟まれた天然の要塞。



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ー第7グルス王国陸軍基地ー



この基地はエルダンと一番近いグルス王国の軍事基地であり、オノダが引き起こした核撃魔法による大爆発を目撃、観測した唯一の基地であった。



目撃、観測した兵士たちはその威力から士気を消沈させていた。

「おい、これから俺たちどうなるんだろうな…」

「ここもエルダンの様に爆破されるんじゃないか?…」

「俺はまだ死にたくないぜ…」

非番の兵士たち数十人が食堂に集まって大爆発のことについて話していた。

兵士たちの顔色は悪くなる一方であった



「お前たち、そんな顔をするな!」

そう言ったのは、この基地の司令官であるオルグ大佐であった。

「我々は祖国の愛するものを守るためにこうして兵士としてここにいる。そんなお前たちが暗い顔をして祖国を守れるものか!」

「ですが、大佐殿…」

「それに未だに帝国侵攻の一報が来ていないということは少なくとも今回の大爆発は帝国の仕業ではないということだ。それにあの爆発が事故であった可能性もある」

(軍人は常に最悪を想定するべき者達だ。だが、基地の現状を鑑みれば士気の低さは既に将校にまで広がっている。今もし帝国の侵攻が始まれば、戦うこともままならない。それよりはこうしてまだ現実逃避させることで士気を保つことの方が重要だろう)



そんなことを考えているとそこに一人の伝令兵が駆け込んで来た。

「大佐殿!オルグ大佐殿はおられますか!」

「ここにいる、何かあったか?」

「はっ!国境警備隊より緊急報告です!帝国軍が越境し我が国に対して侵攻を開始したとの報告です!既に国境警備隊と帝国軍は戦闘状態にあると」

ギリギリ保っていた士気が完全に消された。

「グルー要塞は何と?」

「はっ!各砦連絡を密にし、援軍が来るまで持ち堪えることだけを今は考えろとの指令です!」

「了解した!直ちに参謀将校を集めろ!」

「はっ!」

そう言って伝令兵は飛び出していった。



(しかし、妙だな。エルダンの大爆発が起きてから侵攻までにある時差は一体何なんだ…?帝国でも今回の事は想定外だったということか…?)



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ールルシア帝国帝城玉座の間ー


その晩、ルルシア帝国皇帝であるバルク・ルルシアとその側近である大臣達による緊急会議が行われていた。。



「侵攻結果はどうなっている?」

「はっ!間諜による報せの通り、我が帝国に対する王国の兵はは例の大爆発の影響で増兵されていましたが、王国の国境警備隊どころか司令部であるグルー砦にしか増員は間に合っておらず、我が方の被害も微々たるものとの報告があり、国境の突破は時間の問題かと…」

「ふむ…国境警備隊の砦を侵攻は停止させ、兵を送って国境線を塗り替えるようにせよ。間諜らには例の爆発に関する情報を優先して取集させよ!」

「陛下、良いのですか?これはチャンスなのでは?」

眼帯をした茶色い髪の毛の大男が皇帝の言葉に反応する。

「元帥。言いたいことはわかるが、王国には頑張って大爆発の原因を突き止めてもらわねばならぬ。数十キロ離れたところにいた間諜からでも確認できるほどの大爆発が何故起きてしまったのか…もしも人為的な爆発だとしたら帝国の脅威になるやもしれん…」

「はっ、出過ぎたことを言いました。申し訳ございません」

「よし、これにて緊急会議は閉会とする。夜遅くにご苦労であった」




こうして、ルルシア帝国の侵攻はグルス王国の国境部割譲を以て収まった。






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