第10話 初めての人体実験

闇組織と契約して、2週間が経った。



オノダはすでにオルドとの契約条件である、『強化人間』の開発を殆ど終えていた。『殆ど』というのは最後に自分の理論を実験する為である。



そう、遂に6体のマウス達が使われる時が来たのである。



ちなみに考案した『強化人間』には一番最初のゴブリンを使う。

最初にゴブリンの血を人間の血液上に投与し、ゴブリンの血液を人間の体に馴染ませる。その後手術によって人間の胸の中央部にゴブリンの魔石を埋め込めば、ゴブリンの血とゴブリンの魔石が共鳴して、魔物の力が人間の力にプラスされるというものだ。ゴブリンという最弱に等しい魔物でどれだけの力を人間が引き出すことができるのか。



結果は4人死亡、2人適合だった。実験としては成功の部類に入るだろう。

適合したのは一般人のスケジュールの2人だった。他の極端スケジュールの4人は爆発四散した。



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実験が成功した後は、久しぶりに外に出た。



祝いにオノダは1人で、豪華な外食でもしようと考えた。

何せ最後にまともなものを食べたのが1週間ほど前で腹ペコで死にそうだった。



レストランに入り、肉、魚、野菜、酒と様々なものを飲み食いしながら今後について考えていた。



(これで最初の計画は殆ど終わりましたね。あとはもう少しだけ実験を重ねたら、次のフェイズに移行しなければ)

オノダは笑みを浮かねながら、食べ物と酒を次々に口へ放り込んだ。

(さて、油断せずにオルドさんには組織拡大に努めて頂かなくては)

食べ終わるとオノダはテーブルに金だけ置いて去って行った。



その日はゆっくり読書をしたりして、オノダは久しぶりの自由を謳歌した。



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次の日からはより強力な魔物と人間を融合させた強化人間を創るため、オノダは都市の城門を抜けて、森まで入っていた。



(ゴブリンで魔物と人間の融合が可能なのは立証できましたが、所詮はゴブリン。より強力な魔物でやるとどうなるのか試さなくては…)

そう思い、草むらをかき分けて森の奥へ進みとにかくゴブリン以外の魔物を探していた。



(ん、何だあれは?…)



ゆっくり歩いていると、少し離れたところに狼っぽい動物を5匹見つけた。



(鑑定)


level14

名前=なし

種族=魔狼

性別=オス

ランク=D

HP=2500

MP=4300

スキル=下位風魔法、嗅覚強化、咬合力強化、脚力強化




(この世界で初めて自分以外のものを鑑定してみましたが、こうして見ると弱いですねぇ…)

オノダはそう思うと、雷魔法ライトニングを魔狼に浴びせた。

ゴブリンの時同様、一瞬で狼たちは死んだ。

その後はすぐに臓器をアルコール瓶に入れ、血抜きを行った。



「流石に今日丸一日使ってこの狼だけっていうのも成果が少なく思えてしまいますし、もう少し踏み込みますか…」



そう言って、より深くにオノダは入って行った。


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数分歩くと何やらさらに森の奥から物音がするのでオノダは立ち止った。



(結構歩きましたね。時間的にこれが魔狼とゴブリン以外であればいいのですが…ビンゴッ)



恐る恐る覗いてみると、いたのは二足歩行の豚だった。



(鑑定)



level21

名前=なし

種族=オーク

性別=オス

ランク=C

HP=5000

MP=2000

スキル=下位土魔法、怪力、精力強化、棍棒術level3



(先ほどの魔狼とかいうのよりは強いですね…これも収集しときますか)

そう考え、オノダは再び雷魔法ライトニングを発動させる。

オークたちはみるみるうちに倒れていく。



しかし、最後に残った1体は倒れなかった。



(ほう…上位種でしょうか?…)



上位種は一般的な魔物が進化し、戦闘力や知能が一般の魔物より格段に強化された種族の事と、冒険者ギルドの書庫にある魔物関係の書籍に書いてあった為、オノダは理解した。



(鑑定)


level18

名前=なし

種族=ハイ・オーク

種族=オス

ランク=B

HP=9200

MP=3500

スキル=中位土魔法、超怪力、超精力強化、棍棒術level7



(若干強いですが私の魔法の敵ではないですねぇ)


そう言うといつもより魔力を込めて、ライトニングを放った。

そのまま魔法はハイ・オークに直撃し、一瞬で死んだ。

(さて、いい材料も手に入りましたし、一旦休憩してまた午後から探索しましょうか…)

そう思い、オノダは元来た道を戻って行った。


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オノダはその後エルダンまで戻り、適当な店に入って昼食にした。



「いらっしゃいませ!お一人ですか?」

ウエイターの少女がオノダに話しかける。

「ええ、1人です」

「カウンター席にどうぞ!」

オノダは一番最初に目についたカウンター席に座った。

目の前では店主と思しき男が料理を作っていた。

(前世のお偉いさんとの会食でこういうオープンキッチンの店には何回か行きましたが、異世界ではオープンキッチンの店には初めて来ましたね…)

そんなことを考えていると…

「注文は決まりましたか?」

ウエイターの少女が小走りで寄ってきた。

「この店の名物とかはありますか?」

「この店の名物ではないんですが、今は最近王都から伝わってきたハンバーグと呼ばれる肉塊の料理が大変人気ですよ!」

(ハンバーグ?はて、自分の様な転移者が他にもいるのでしょうか?…)

「お客さん?」

「ああ、すみません。ではそのハンバーグをお願いします」

「畏まりました、少々お待ちください」



(気になりますねぇ…少しオルドさんにでも聞いてみましょうか…)何か知っているかも知れませんし。こういう時は情報屋なんて欲しいものですねぇ)



約10分後…


噂のハンバーグが届いた。

地球のハンバーグ同様、デミグラスソースがかかっていた。

フォークで切ってみると肉汁がハンバーグの中から垂れてきた。

見た目も良いし、当然味も良かった。

完璧なハンバーグだった。

しかし、だからこそ興味が湧いてしまった。



(これはほぼ間違いなく私と同じ存在がいるのでしょうねぇ…非常に気になりますし、午後は一旦魔物の採取はやめますか…)












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