第8話 スポンサー

ゴブリンを狩った翌日、オノダは朝食を食べてからゴブリンの臓器の解剖を始めた。



慎重にピンセットやメスを使って、臓器を解剖していた。

臓器の一部を切り取ったり、臓器の粘膜を医療用綿棒に付着させ検査用機械に入れて、成分などの分析などもした。



結果は、正直自分が期待しているようなものではなかった。

当たり前だが、人間とは身体のつくりがまるで違った。

ゴブリンの体は、肺のようなもの、心臓のようなもの、胃て構成されていた。

唯一気になるものは心臓のようなものの真ん中に薄黒い石があっただけであった。



冒険者ギルドの書庫まで行って調べたところ、魔石と言うらしく、これが魔物の心臓らしい。これを破壊すればどんな魔物でも基本的には死ぬらしい。



(ゴブリンレベルの魔物の魔石でも、あの体を動かしていたということは正しく作用すればもの凄い力を発生させることができる。これは兵器にも転用可能だな…これを売り込むか…)



解剖に使った医療用ゴム手袋を火属性魔法で燃やし、オノダはちょうどお昼時なので宿屋の食堂へと向かった。



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「ちょっとあんた、生臭いわよ!」



宿の女将から、そう言われてしまった。

おそらく、長時間密室で換気もせずにゴブリンの解剖なんて内臓の解剖なんてしていたから、臭いが付いてしまったのだろう。



「すいません、魔物の解体をしていたら臭いが付いてしまって…シャワー浴びてきます…」

朝からずーっと解剖やら考察やらしていて頭を動かしたせいか、お腹が空いていたのにすぐに食べれないことが思いの外ショックであった。



研究職は何日間も研究室に篭り実験やら考察やらをすることもある為、3,4日何も食べずに水とビタミン剤で過ごすことも珍しくない。オノダにとってはそれが常識ですらあった。だから、研究に区切りをつけた時に一気に食欲が押し寄せて来るのである。



そのせいか、宿屋のシャワールームにオノダは駆け込むように入り、10分ほどで自身が創造魔法で生み出したボディーソープとシャンプーで急いで全身をくまなく洗い、浄化魔法で少し汚れた自身の白衣とスーツを綺麗にし、また駆け込むように食堂まで戻った。



今日の昼飯はフランスパンのようなパンと野菜のスープとサラダであった。

硬いパンを温かいスープに付けて食べると絶品であった、サラダはキャベツと人参の塩ゆでと豚肉が散りばめられてあり、少ない具材ながらも工夫されていて美味かった




午後はスポンサーとなる闇組織と探すため、オノダはスラム街へと入って行った。



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スラム街に入ると当然かのように数人のチンピラに絡まれた。



「おい兄ちゃん、ここはお前さんのような奴が来るところじゃねぇぜ。身ぐるみ置いてとっとと失せな!」



「それはちょっと困りますねぇ。私は君たちのボスに会いに来ただけなんですが…」

「ボスがお前なんかに会うわけないだろ。一体何言ってんだ?」

チンピラのリーダー格のような男がニヤッと笑いながら言った。

「はぁ…このチンパンジーどもが…『私の話を聞きなさい』」

「リ、リーダー…何故か体が動かねぇっす」

リーダー格以外のチンピラががオノダの話に何故か耳を傾けた。

「て、てめぇ…何しやがった?」

リーダー格の男は驚きのあまり声が震えていた。

「『言霊魔法』というやつですよ。私の言葉を聞くだけで、頭ではわかっていても体は私のいうことに勝手に従うようになります」

「う、嘘だ!そんな魔法聞いたことないぞ!」

「当たり前ですよ、私が創ったんですから」

「あなたもこうなりたくなかったらボスのところに私を早く連れてってくれませんか?」

「わ、わかった。連れて行くからその魔法はやめてくれ!」



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数分歩くと廃墟の倉庫のような場所に着いた。



「ここが拠点だ、ボスはこの中にいる」

「ほう、そうですか。ご苦労様でした」

「ま、待ってくれ。こいつらを解放してくれないか?」

オノダの後ろには泣きながら足を振るわせてるチンピラ達がいた。

「素直に従ってくれましたし、いいでしょう」

『自由にして良い。その代わり今日はもう家に帰りなさい』



するとチンピラ達はゆっくりそれぞれ方向は違えど歩いて行った。

「完全に開放して、ここで暴れられても面倒なので帰っていただきました。これでよろしいですね?」

「あ、ああ。で、俺はどうするんだ?」

「あなたには私をあなた方のボスに取り次いでもらいたくて残ってもらいました」







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