閑話 とある御者の一日

俺の名はエドワード。

表ではしがない御者の一人として振る舞う人間だ。

裏の顔はこのグルス王国と敵対してるルルシア帝国の諜報員だ。




御者というのは職業の特性上いろんな奴と接触する機会が多い。

冒険者、商人、お忍び貴族、裏組織の幹部やらボス、犯罪者でも…

接触は簡単だし、何より職業の特性上、怪しまれることがない。

諜報員にはピッタリな職業だった。




もう御者の顔をかぶって長いこと経つが、

俺は働いてて2度異常に危機感を持った時があった。

一度目は闇ギルドと思われる連中を乗せた時だっった

俺は本国の諜報員としての訓練受けていた。

その訓練の中で周りと比較してで目と鼻が優れていることが分かった。

だから闇ギルドを乗せた瞬間巧妙に隠してはいたが死臭もわずかに感じ取れた。

それから俺はさらにいろんな客を乗せたことで目と鼻が良くなり、気配にも敏感になった。





そして2度目の違和感を持ったのが今日だった。






今日は元々ロイドっていう老舗の商会の会長を乗せて城塞都市であるエルダンまで送る仕事だった。





そんな道中奴と出会っちまった。

奴はオノダって名乗ってた。

最初は街道を顔を近づけて観察してる頭のおかしな奴、くらいにしか感じなかった。

しかし馬車に乗ったことで、一気に俺との距離が縮まり、俺は気づいてしまった。

とんでもない死臭が漂っていることに…。

さっき話した闇ギルドの連中とは比較にならないほどの濃度だった。

帝国や王国の大将軍だってここまで強いかどうかわからない。





死臭が付くのは殺人をするか、死体に触れるかの2択だ。

特に後者でも解体などするとより濃くつく。

そんな匂いだった。

しかし一番気になったのはそんな死臭を発している男が、

何故あんな平然とロイドの旦那と普通の会話をしているのか、だ…。

しかも時折笑顔を見せたりして。





エルダンについて馬車から降りた後も、まるで善人を思わせるかのような態度でロイドの旦那と接していた。最後の別れでは握手なんかもしてたしな…




何はともあれもう仕事は済んだから馬の休息を二日ほどとったら俺も元の街に戻るつもりだ。

そうすりゃもう二度とオノダの野郎と会うこともないだろう。

いや、ないと願いたいね



あと二日という短い時間ではあるが、せっかくエルダンに来たんだし、第二都市だから娯楽もそこそこあるだろうから賭博でもするか…





そういえば、オノダの野郎、最後にロイドの旦那と話してた時に冒険者ギルドに行くとかいってたなぁ…

間違っても今回は冒険者ギルドには近づかない方がいいだろうな…





正直あんだけの死臭を放っていたらその正体を確認したくはなるが、

俺の第六感が危険を発しているのでやめておこう。





そんなことを考えながら俺は賭博場に入って行った。





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閑話ということもあり、少し短くなってしまいました。

次回は閑話ではなく通常に戻ります。





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