4. 旋刃棍(ギムファー)
俺の両の袖口から、鉄棒が飛び出した。
直角に取り付けられた柄を握り、先頭に立って殴りかかってきた戦士の顔面にその鉄棒を叩きつける。
反対側から斬りかかってきた剣士は一瞬後、腕に深傷を負い得物を取り落とした。
鉄棒に沿って飛び出した刃に斬られたのだ。
遠い南方の島に伝わる武具
それは打撃用の武具であり、同時に剣だった。
俺はギムファーを巧みに回転させ、殴りかかってくる戦士には打撲を。刃を向けて来る者には刀傷を与えていった。
だがその扱いは簡単ではない。
俺は島でギムファー術を習得するのに二年を要していた。
戦いの場は店の外に移り、俺は扉を潜って飛び出してくる敵を一人ずつ料理していった。
その間、魔導士ドルイエは俺に加勢することもなく、少し離れたところでじっと立ち尽くしていた。
彼の真意は分かっている。
戦士としての俺の技量を見極めているのだ。
ついに居酒屋の戦士たちは戦意を喪失し、怪我人を店の中に引きずり込んでいった。せっかく集まった手勢をこれ以上減らしては、元も子もないと考えたらしい。
しかし、今の状態ではささくれ巨人を追うのは来年の春になるだろう……
俺はギムファーを袖の中に収め、ドルイエのもとへ歩いていった。
「どうだ? 俺はお眼鏡にかなったか?」
魔導士は口元を歪めると、振り返って歩き出した。
「そうだな。力は十分だと認めよう。長剣も抜かずにあの人数を叩きのめしたことだしな」
「剣は本当の敵を仕留めるためのものだ。あんな喧嘩で抜くものじゃない」
「その本当の敵だが……巨人族を討ち取ったことはあるのか? 何体くらい?」
「三……四体だな。一体はとどめを刺す前に崖から叩き落としたが、生きてはいまい」
「ふむ……」
俺の答えに満足したのか疑っているのか、ドルイエはそのまま数歩進んでから聞いた。
「おぬしの名は?」
「戦士レイ・ドの息子タキオ」
「ふむ……」
再度沈黙したドルイエに、俺は聞き返した。
「失望したか?」
「なぜ失望する必要がある?」
「ささくれ巨人を仕留め損なった戦士の息子だからな……」
「そうなのか?」
俺は驚いた。
ささくれ巨人を追いながら親父の名前を知らないというのは、ありがたいようだが信じられない。
「ささくれ巨人は、お前の父の仇なのか?」
「いや……そもそも、ささくれ巨人がささくれ巨人になったのは親父のせいなのさ」
「よくわからんな」
俺はドルイエに話して聞かせることにした。
親父とささくれ巨人の、嘆かわしい因縁話を……
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