第7話
「ピピピ、ピピピ」
ベッドで包まりながら休日を謳歌していると、見知らぬ番号から電話がかかってきた。
仕事の電話の可能性もあるので、『ん“』と咳払いをし電話に出た。
「もしもし」
「こちら、桃未紗倉さんの身内の方の電話でお間違いないでしょうか?」
電話から聞こえてきた声は、見知らぬ声だった。
どうやら仕事の電話ではないらしい。
「はい、紗倉の兄の大架です。大きいに橋を架けるで大架です」
何事かと思い、内心驚いていた。
「至急、西海大学病院にきてください」
「え?」
うっかり、心の声が漏れた。
「先程、紗倉さんが事故に遭いまして、、、」
「すぐに向かいます」
すぐに電話を切り、スマホと財布、バイクの鍵を持って家を出た。
滅多に乗らないバイクに跨り、エンジンをかけて速度制限ギリギリで走り出して行った。
道路を走っている最中、部屋番や妹の状態を聞いていないことを思い出したが、今はとにかく急いで病院へ向かうことを最優先にした。
数十分走らせると、病院が見えてきた。
幸い、ここに来るまでの道はかなり空いていた。
足早に病院の駐車場に入り、自動ドアを開けて中に入って行った。
まずは受付に行った。
「あのー、先程電話をもらった桃未大架なんですけど」
「あ〜、お待ちしておりました。ご案内しますね」
言われるがまま、受付の人について行った。
少し歩くと、ドアの前に止まった。
部屋番は『366』と書いてあった。
「ここに妹さんがいらっしゃいます」
すぐにドアを開けた。
部屋の中にはベッドで寝ている妹と、白衣に身を包んだ医者がいた。
医者は何やら気難しい顔をしていた。
医者はこちらを見ると、俺が誰かわかったように話し始めた。
「妹さん、ちょうど一時間程前に自転車に轢かれました」
「あ、少し長い話になるので、お兄さん、そこの椅子にお座りください」
大架は後ろにある椅子に座った。
「それで、紗倉が轢かれたって、、、」
「はい、おっしゃる通りです」
大架は絶句した。
理由は言うまでもないだろう。
「ただ、命に別状はありません」
???
じゃあなぜ気を失っているんだ?
「どうやら、自転車とぶつかる寸前にショックで気を失ったらしく、外傷は足の指の骨折のみです」
「ええ…」
某ラノベのような展開だ。
なんだか気が抜けたような気がした。
「一応、妹さんを見ていてください」
「では、また来ます」
医者は部屋を去っていった。
いや〜、急いできた結果がこれかー。
そう思いつつも、実際のところは心配が大きい。
そんなことを考えていると、紗倉が呻き声をあげた。
「ん〜、ん」
そんな妹の姿を見て、安心した。
どうやら元気そうだ。
そうしていると、妹が目を覚ました。
眠そうな目をこちらに向けた。
そうして、体のあちこちを触り始めた。
「あれ、死んでへん」
「はあ、、、なんでここにいるか説明してやる」
大架は先程医者に言われたことを紗倉に説明した。
最後まで説明すると、顔は真っ赤になっていた。
「湯気が出そうだぞ。熱でもあるのか」
少し笑いが混じったように話しかけた。
「んん〜〜!!もうええって、お兄!!!」
布団に包まってしまった。
数秒間その布団を撫でていると、突然何かを思い出したように布団を投げ出した。
顔を見ると、かなり焦っているようだった。
「お兄!今何時!」
「いや、一回落ち着け」
「落ち着いてらんないって!生きてるなら、早く帰らなきゃ!」
そう言ってベッドから立ち上がろうとした。
「痛っ〜ー!何これ!」
言わんこっちゃない。
「お前、足だけ骨折してるってさっき言ったよな」
「あ、そっか。じゃあ今日は病院?」
そういえば聞いていないことを思い出した。
「そういえば聞いてないわ。聞いてくるから、そこで横になってな」
「うん、わかった」
そう言うと、椅子から立ち上がり、扉を開けて部屋を後にした。
部屋を出ると、さっきの医者が部屋の前に立っていた。
「一応、有事のために聞かせてもらいましたが、今日退院というのは厳しいかと」
「ですよね、、、」
まあ、心の中ではわかりきってはいた。
「分かりました。伝えておきます」
そう言って、部屋に戻って行った。
部屋に戻ると、妹がスマホを触っていた。
何かを入力しているらしい。
とりあえず、先程座っていた椅子に再度座った。
紗倉は大架には気づかずに一生懸命打っていた。
大架もスマホを取り出し、時間を確認した。
現在時刻は19時だった。
まるるの配信が後一時間で始まるらしい。
そんなことを考え、スマホの電源を落とした。
それと同時に、妹のスマホをベッドの横に置いた。
紗倉は大架の方を見た。
驚いた表情をしていた。
どうやら本当に気づいていなかったらしい。
「で?今日退院できるって?」
「いや、普通に考えて無理だろ。流石に」
「まあ、そうよね」
紗倉の顔は暗くなっていた。
「うん、じゃあお兄。今日は来てくれてありがとう。面会の時間もそろそろ終わりだろうし、今日は帰っていいよ」
「分かった、また明日くる」
そう言って、部屋を出て行った。
俺の推しが妹!? 百瀬三月 @momosemituki
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