第2話

次の日の早朝、大架は五個目のアラームで起きた。

 時間は朝6時。

眠い目を擦りながらスマホに手を伸ばし、アラームを止めた。

 さっさとスーツに着替え、身支度をして30分ほどで家を出て、日常の喧騒に身を投じた。

 歩いて少ししたら、最寄りの駅についた。

 今日も駅には列車が待っていた。

まだ早朝なこともあって、いつも通り乗っている人は少ないが、彼は乗り込み、座席に落ち着いた。

 窓の外を眺めながら、彼は自分の今までについて考えた。

 空は青く快晴だった。

この生活は慣れたものの、過去を考えると彼はまだ自分の人生の本当の目的を見つけられていないように感じていた。

 そんなことを考えながら、少し目を閉じる事にした。

 数十分寝ていると、会社の最寄り駅についた。

 今日も社会の歯車になって働くと考えると、胃がキリキリするが、生活するために頑張るしかないのだと自分に言い聞かせ、今日も会社に出社して行った。

 ビルに入り、エレベーターに乗った。

 会社にはすでに新人がおり、朝の業務をこなしていた。

大架は会社の前の自販機で買っておいたコーヒーを新人に手渡した。

「ありがとうございます。先輩」

 新人は大架に微笑みながらコーヒーを受け取った。

「俺も少し前まで新人だったから。互いに頑張ろうな」

 そう言って自分のデスクに向かった。

デスク上には昨日の書類がたんまり乗っていた。

 始業まで少し時間があるので、簡単な事務作業だけを終わらせた。

 しばらくすると、朝礼が始まった。

そこからは、自分の業務をしていた。

 昼休憩になると、唯一の同僚である社員に話しかけられた。

「大架、昼どっか食い行かね?」

「奢ってくれんなら、な」

 同僚は顔を顰めながら言った。

「しゃあねえな」

「よっしゃ!言ってみるもんだな」

 大架は重い腰をあげて、同僚と会社を出た。

二人は談笑しながら同僚についていく事にした。

「てか、なんでいきなり飯に誘ったんだ?」

「お前いつも忙しくてカップ麺しか食ってねえだろ。流石に健康に響くと思ってな」

「なんか優しいな。どうした?」

「人が心配して言ってやってんのに、、、とにかく、自分の体には気遣えよ?」

 そう話していると、ちょっとした個人経営の店の前で同僚が止まった。

「ここか?」

「そうだよ。結構いい雰囲気だろ?」

二人は店の中に入って行った。

 店内は落ち着いており、カフェのような雰囲気だった。

大架と同僚は静かに空いている席に座り、メニューを眺めながら談笑を始めた。

「そういえば、こんな隠れ家的なところ、どうやって見つけたんだ?昼はお前もいつも忙しいだろ」

「ここ、夜はバーをやってるんだ。それでな」

 大架はメニューを見ながら“ふうーん“と言いい、メニューに載っていたミートソースパスタを頼む事にした。

「決まったか?」

「ああ」

 そう言うと、大架は近くにいた店員を呼び止めた。

「はい!お決まりでしょうか?」

 二人は各々の食べたいものを注文した。

店員は“少々お待ちください“と言って、厨房へ行った。

料理を待っている間、二人はまた談笑を始めた。

「そういえば、妹さん大丈夫そう?」

「ああ、なんとかな。まだ心配なところもあるけどな」

「にしても、兄弟揃って不憫だよな。これが俗に言う親ガチャってやつか」

「確かに、そうかもな、でも、これからは自由だ。なんか趣味とか夢とか探してみるよ」

 そう話しているうちに、料理がやってきた。

二人は特に会話することなく、黙々と料理を食べ始めた。

 料理が食べ終わる頃には、すでに昼休憩が終わりの時間に迫っていた。

 二人は席を立ち上がり、会計をするためにレジへ向かった。

大架は同僚が払ってくれるとの話だったので、財布は出さなかった。

同僚が会計を終わらせると、二人は店を出て会社に戻って行った。

 会社に戻ると、すぐに午後の業務が始まった。

そこからは時間の流れに身を任せて、時間が過ぎ去るのを待った。

 しばらく黙々と仕事をしていると、時刻はすでに21時を回っていた。

定時はとっくに過ぎており、大架は帰る準備をした。

 会社の中を見渡すと、大架以外の社員の姿はなかった。

大架はオフィスの鍵を掛け、駅へと向かった。

 ホームに向かい、スマホを見ながら電車が来るまで待った。

SNSを見ると、昨日デビューしたVTuber桃瀬まるるが配信していた。

 大架は配信を見始めた。

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