第2話 尾行
そんなある日の休み時間、俺が屋上で一人でメシを食べていると見覚えのある女子が話しかけてきた。確か、クラスでカーストトップの座に君臨する
「
「なんだ?今、メシ食ってるんだが。」
「あんた、お金に困ってるらしいね。」
「それがどうした?」
「あんたに頼みがあるんだけど、それをしてくれたら10万円あげるよ。」
今の俺にとって10万という大金は喉から手が出るほど欲しいものだった。
「10万か。それは心揺さぶられるな。何をすればいいんだ?」
俺がそう聞くと、彼女たちは少し笑いながら言う。
「あんた、ホントにお金に困ってんだね。することは簡単だよ。
今アンタの席の隣の
「ああ。」
「そいつが退学になるような情報を持って来てほしんだよ。写真とか。それだけ。」
「何でそんなこと俺がしなくちゃいけないんだよ。自分でしろよ。」
「いいの?10万だよ。10万。」
「そんな最悪なことで金なんて稼ぎたくねーよ。」
「そんなこと言っていいのかな?
私があなたに暴力振るわれたって騒げばあなたが退学になるのよ。
あなたが否定したところで誰があなたの証言を聞き入れるかしらね~。」
「最初から俺に断る選択肢はないのかよ。」
「分かればいいのよ。それじゃあよろしく。」
そう言って彼女は笑いながら屋上から去って行った。
俺は面倒くさいことに巻き込まれてしまったと思いつつ残りのメシを食べて戻った。
★★★★★★
早速、放課後から俺は言われた通り
しかし、どれだけ尾行を続けてもそんな情報は出てこなかった。それどころか、困っている子供やお年寄りを助けたり、落とし物を届けたり、ゴミを拾ったりと彼女の人柄が見た目道理であることを証明するような情報ばかりが見つかった。
彼女からは証拠写真を掴むことは出来ないなと尾行を辞めようと思ったとき、彼女がいきなり走り出し、細い路地へ曲がって行った。
俺はこれは何かあると思いその後を追った。
が、その先には彼女の姿はなかった。
「私に何の用?」
尾行に失敗したと思い帰ろうとするとそんな声が俺の後ろから聞こえ振り返ってみると、そこにはさっきまで俺が尾行していたはずの
俺は何とかバレまいと言い訳を考えていると、
「あなた、私の事好きなの?」
彼女はいきなり、そんなことを言い出したのだ。
「はい?」
「あなた、私の事好きだから尾行していたんでしょ。
過去にも同じようなことしてきた人がいたから分かるのよ。」
「え、いや。」
「ごめんなさいね。
私はあなたの事何も知らないからあなたの好意は受け取れないわ。
それじゃあ私は帰るので。」
彼女は俺に発言の時間を与えることなく捲し立てて、勘違いして去って行った。
「好きじゃないんだが。。。」
とりあえず、証拠写真のことについてバレなかったことだけは不幸中の幸いだった。
♦♦♦♦♦
翌日は警戒されていると思い尾行はしないことにしたが最近は尾行に時間を使っていたためすることが無いことに気付き、とりあえず今日の放課後は屋上で眠ってから帰ることにした。
しばらく眠って、目が覚めたのでいい時間だし帰ろうかと思い屋上を出て、
学校の中を歩いていると、図書室に人影が見えた。
俺はなぜか気になり、覗いてみるとそれは本を読んでいる
しばらく見ていると、彼女が本を読みながらフフフっと笑みをこぼした。
皆といるときとは違う、作っていない笑みだった。
その表情を見て、俺はその瞬間胸が高鳴った。
「普通の笑顔できるじゃないか。」
俺はそう思った。
その後は彼女に気付かれないようにその場を去ったのだった。
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