第115話 告白宣言

 *今回短めです




「んぅっ、んっ、ふぅっ」


 艶かしい声を漏らしながらも唇を剥がそうとしない茜。

 そろそろ寝ようかと二人で部屋に入った途端、茜がキスをねだってきた。寝る前だし、隣の部屋で妹が寝ている状態なので軽い物で済まそうと思っていたのだがそんなのお構いなしに茜は強く求めてきた。


 茜の華奢な背中と小さな頭を抱きしめる。彼女の頭を抱きしめる右手でポンポンと叩く。

 意味を理解したらしい茜が名残惜しそうに離れる。


「はあ、はあ、はあ……」

「流石にちょっと長いかな……」

「ごめんなさい……」


 しょんぼりとして項垂れる茜。


「いやいや、気にしないで。俺も、ほら、茜とのキス好きだし」

「そうですか?それなら……よかったです」


 顔を上げた彼女は照れくさそうにはにかんだ。大樹は微笑み返してベッドに入り、その横を開けた。

 茜が「失礼します」と言いながら潜り込んできて、大樹は彼女をそっと抱きしめた。


「二回目ですね」

「そうだな」


 暗闇に慣れた目で見つめあう。彼女の目は真剣そうだった。


「大樹君」

「どうした?」

「もっと、進みたいです」


 進みたい、か。大樹は脳内でその言葉を反芻した。

 決して正式な恋人関係ではないものの、もうルールがだんだんゆるくなっていった二人が最終防衛ラインと決めていることは大きく三つ。


 一つ目、付き合って〇〇ヶ月記念。のようなものにこの関係はカウントしないこと。

 二つ目、泊まりがけのデートをしないこと(互いの家に泊まるのは除く)。

 三つ目、もう古いかもしれないが、『恋愛のABC』の『A』より上のことはしないこと。


 これらのことは絶対に守ろうと約束しているのだ。

 だから茜が進もうと言うということは、この『恋人内定』という関係から脱却してちゃんとした恋人になることを意味する。


「俺も思ってた」

「それなら……良かったです」


 茜は大樹の胸元に顔を埋めながら言った。


「大樹君。八月の最終週にある夏祭りをご存知ですよね」

「ああ。一緒に回ろうな」

「はい。私はその時に大樹君にちゃんと告白します」

「っ……そうか……」


 心臓が高鐘を打っている。茜も気づいているだろう。


「だから、ちゃんと受け入れてくれませんか……?」

「当たり前だろ」


 いじらしい彼女を大樹はぎゅっと抱きしめてそのつむじにキスをした。




 ──────────────


 大樹の夏休みの予定メモ


 1 茜の水着購入

 2 デート(なんだかんだで遊園地デートは初めてかな)

 3 みんなで海水浴(茜の水着絶対可愛いやつ)

 4 夏祭り(茜が告白してくるらしい!!!)


 追加されることもありそうかな


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