これは一つの始まりの話
あたし、柊木美羽が草宮大樹に出会ったのは入試の日だった。
中学の先生からお墨付きをもらっていたあたしは自信を持って意気揚々と会場に向かっていた。
同じ中学から受ける人は居らず、同じ予備校生の楓哉がいたのは不幸中の幸いであった。
『受験の教室違うけど、健闘を祈るよ』
『それあたしがいう立場では?』
『アッハハ!僕は多分落ちるから君だけでもがんばれって意味さ!』
あたしは楓哉とハイタッチをして自身の教室に入った。
やはりというか、ピリピリとしている。この教室にいる全員がライバル。勝たなければ。
しかしやはり自信のあったあたしは自席につき、悠々と最後の暗記を始めた。
そして始まった一教科目。数学。
(模試の成績を取れたら余裕。それでも落としたら英語でカバー)
そう自己暗示しながらあたしは問題用紙をひっくり返し、解答を始めた。
単純な計算、確率、方程式……
入試には数年に一回形式が変わることがある。過去問の形式が通用しないのだ。
そして、
(なに、これ……)
問題は図形だった。見た瞬間、解けると思った。
しかし、全然アプローチができない。
(あと一分かけたら解ける!)
一分間頭を回し続ける。
(あと一分)
(あと一分)
(あといっぷ……)
『試験をやめて下さい』
カラン。あたしの手から力が抜け、鉛筆が転がり落ちた。
解答用紙は残り五分の一が空白で、この高校を受けるのなら無視はできない失点であった。点数にして二十点ほど。
(ぜったいに。ぜったいに受からないと)
この高校を落ちてしまったらお母さんにさらに重い負担がかかる。
三人姉弟を女手ひとつで育ててくれたお母さんに私立高校に行って高い学費を払ってもらうわけにはいかない。そこまで余裕がないわけではない。父親の遺産を足したら全然平均的な暮らしはできる。
しかし、それでもあたしは私立の学費を見てびびっていた。
(もう……だめだ……)
休憩。
あたしは机に突っ伏していた。周りの談笑が耳につく。
このまま帰って中卒でもできるなるべく高給な仕事を探した方が得ではないか。そう考えるほどのあたしの精神は参っていた。
そんな時だった。
「何やってんだ」
あたしは顔を上げる。
「何って、やらかしたから落ち込んでるだけ。君には関係ないよ」
そこには精悍な顔立ちの少年がいた。
背は平均より高いくらいか。
「いや、未来の同級生かもしれないからな」
「いや、数学でやらかしてるから」
「1教科なら痛くも痒くもないよ」
「いや、あたしはもうダメ」
気づけばその少年は自席に戻り、なぜか戻ってきた。
そしてあたしに2つ物を押し付けた。一つは一口サイズのチョコレート。もう一つは
「鉛筆?」
彼はニヤリと笑い
「中学で俺の鉛筆を使うとテストで無双できるって噂があってね。半分宗教みたいになってるんだ」
これはその中でも一番人気の鉛筆。と彼はそう言って渡してきて、気づけば彼は自席で参考書を読んでいた。
あたしはそのチョコレートを口に含む。
「にがっ」
その包み紙を見ると、カカオ99%と書かれていた。彼はそれを見てニヤリと笑い、今度は何かを投げてきた。それを慌ててキャッチすると、今度はホワイトチョコ。
それも口に含むとなぜか心が落ち着いた。
もしかしたらワンチャンあるかもしれない。
そんな勇気が湧いてきて、あたしは彼からもらった鉛筆で試験を受けた。
結果は無事合格。
入学式で彼にも会えた。そして名前を草宮大樹だと知った。
これがあたしの初恋。きっと叶わない恋の始まりだった。
それからは色々と布石を用意していた。
まずはタジュへあたしを異性として認識させること。運よく同じクラスになれたので早速距離を詰め、積極的にスキンシップをとっていつもの四人で遊ぶ時もちょっと露出が多いものにした。
楓哉は皐月のことが好きなので楓哉に想いを寄せられることはなく四人の関係は非常に良好であった。
校内を色々と見て周り告白にうってつけの場所を探した。旧校舎で茜ちゃんに会って勝手にライバル心を燃やすことになって
そして、あたしはここにいる。
この話はリアルの友人から聞いた話を7割くらい使って書きました。
親友のR氏に感謝
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