第20話 麒麟の寝床
「待てっ! ここから先は
僕たちを止めにはいった侍従は
「その容姿は……まさか
「そうですが、私が自分の私室に向かうのに何の障害もないでしょう?」
「は、はじめてお目にかかります! 」
侍従は緊張の面持ちで儀礼にそったあいさつをした。
「申し訳ございません。
「さきほど目覚めたのです。警備ご苦労様です」
「ははっありがたき幸せ」
侍従さんは目を潤ませてた。感動して打ち震えてる様子だ。ここにいるってことは
「お、お待ちください!」
呼ばれて振り向くといかにもって感じの司祭服を着た威厳のありそうな爺さんと取り巻き達が大勢やってきた。誰かが知らせたんだろう。
「こ、このオーラは……間違いないっ。
一番威厳がありそうな爺さんがひれ伏すと周りの取り巻きも一斉にひれ伏した。
「ああ。貴方が今の大司教ですね? 長らく姿を見せず申し訳ありませんでした」
そうか、この爺さんが大司教なのか。じゃあ、他の人と違って
「よくぞお戻りくださいました。姿は見えずともそのおチカラでこの地をお守りいただいてる事は充分に感じておりました。ありがとうございます」
「いえ、ここを整備し守っていただいていた侍従達やそなたたちの事は感謝しております」
「ありがたきお言葉……こたびは、そのお方と
探るような物言いが不快だったので僕は先に名乗る事にした。
「……僕はリンです」
「なんと。リン様はお二人いらっしゃったのか!」
「そのようですね。何か行き違いがあったとも聞いております」
「そっそれは。……神である貴方様方に嘘はつけません。先に来られていた皇子様を
「そうですか。では大司教、そなたから訂正をお願いします」
「ははっ。承りました!」
「よろしくお願いしますよ」
「お、お待ちくださいませっ」
「……まだ何か用がおありですか?」
「はい。
なにそれ?
「すでに私のリンが決まっておるのに、させるというのか?」
「そ、それは。しかしっこの儀式のために我々は準備を重ねてまいりました! 皇子様がいらしたには必ず近いうちに
大司教がさめざめと泣き。まわりの侍従達もどうかどうかと床に額を擦りつける。
「
「……リンがそういうならかまわないが……」
「おお! さすがは
大司教は満面の笑みとなった。なんだか、乗せられた気もするけど。
◇◆◇
大きな広間の中心に金で出来た棺があり、そこに絹のような布団が引かれてあった。
「この中で眠っていたんだ」
「寂しい思いをさせてごめんね」
「うん。リンが
ここは
ここは二人で守る場所だ。自分が
「何かがつかめそうで……掴めない。もどかしいよ」
「焦らなくてもいいよ。君の心のままに動けばいいんだよ」
「まだ思う様にチカラが使えない。ごめんね。もうちょっとこの身体が馴染むまで待って」
「もちろんだとも。ゆっくりでいい」
「ってことは僕は以前も背は高くなかったってことなのか。ちぇっ。がっかり」
「ははは。見た目じゃないんだよ。リンは中身がカッコイイんだ」
からかわれてる気もするけどまあいいか。
ぐるりと部屋を見渡して角の柱の傷を見つけ、ふいに懐かしさで胸がいっぱいになる。よく見ると見覚えがある箇所がところどころ。ああそうだ。この穏やかな空気で包まれている空間……。
「ここって僕らの寝室だった?」
「そう! そうなんだよ。リンと僕の寝室だったんだ!」
リンが金の棺に触れると脳裏に部屋の壮観が現れる。かつての寝室は赤褐色の天蓋付きのベットだった。ベットの柱には細かな透かし彫りが細工されており麒麟の姿が彫られていた。
「この部屋はもう少し明るい方が良いはず……」
「そうかもね。
「癒しの場所……。ならばもう暗い広間は必要なく、光あふれる場所にしなくては……」
「え? リン?」
「
顔をあげると僕と
透かし彫りの模様はもちろん四神だ。どこからともなく暖かな風が吹き花びらが舞う。
「あれ? れれれ? これって
「リンっ? リンっ! 凄いよ! ぁあっ私のリン!」
一麒が飛びつくように抱きついてきた。逞しい胸に顔をうずめる格好になり、心臓が踊りだす。わわわ。ちょっと待って。何が起きているんだ? ちゅっちゅと一麒が僕の顔中にキスを落としていく。
「か……かず……一麒っ!」
思いっきり僕は腕を伸ばし一麒の身体を突き離した。
「く……苦しいよ。……恥ずかしいし」
「ぁあ、そうか。そうだね。つい、興奮して」
「興奮? どうして?」
「だってこれってチカラが戻ったんじゃないのかい? 」
「ま、待って。まだ自分で自発的にしたって感じじゃなくてこの部屋の空気と
「わたしのチカラに?」
「うん。今の僕はどうやら、何かを媒介としてチカラを使えるみたい?」
「私のチカラなぞ全部使ってもいい。こんなに早くリンが以前のように私と共にこうしてチカラを使えるなんて! ……あ。……君に焦らなくてもいいなんてカッコつけておきながら……本当は自分が一番待ち望んでたなんて。突然抱きついてごめんよ」
「いや、えっと。僕も……い……嫌じゃなかったよっ」
「え?……」
「き……キスが……」
「ふっ……ふふ。ありがとう。そっか。リンはキスが好きなのか」
「なっ! 好きとか言ってないし!」
「私はリンとのキスが好きだよ。いつでもしたいと思っている」
「
「リン……愛してるよ」
「もっと私に甘えて欲しい」
耳元で甘く囁かれてドキドキする。
「ばか……」
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