第16話 奪ったチカラ
「リンの身体を返せ。このクソ野郎!」
「『はっ。強がったって、お前がこの身体に傷をつけれねえことはわかってるんだぜ』」
「くっそお。可愛い顔して汚い言葉を吐くんじゃねえっ」
「『はっ、何を言ってやがる……ぅ。そんな。まさか……あぐ』」
「リン? どうした? 」
「白虎、かまわないからぶん殴って『や、やめろ。お前なんで……』」
「リンか? よかった。まだ乗っ取られてねえんだな?」
「そうだよ。さあ早くやっつけちゃってよ『や、やめろ』」
「いや、まてまて、お前を殴るわけには……」
「こいつ僕の中にいるんでしょ? 『なぜお前夢からでてきた?幸せな夢を見せてやったはずなのに』何故って僕は現在が良いんだ。過去に戻っても何も進まない。白虎、僕ごとぶん殴って!」
「俺にお前を殴れるわけねえだろ!」
「そうだね。此処は僕に任せてもらおうかな? 白虎とこうして会うのは久しぶりだね?」
腰まで伸びた銀髪がさらりと揺れる。
「え?
白虎の前に出た
「透けてない
「リン。抱きしめてもいい?」
「いいけど? 『このやろうっ何をする?』」
「ああ。やっと触れられる」
「リン……」
「リン、暴れないで。抱けないじゃん」
「ぼくのせいじゃないよ。『はな……れろっ』」
「くすくすくす。これじゃあただイチャついてるだけにしか見えないよね」
「『くっ来るな』
「リンが嫌がってるんじゃないなら一緒に抱きしめるよ」
白虎が目を見開いた後、金色の瞳を切なそうに揺らす。
「リン。中庭の時の感覚を覚えてるでしょ? 私と一緒にコレを浄化して」
「え? 浄化って……」
唇が。のどが熱い。ドキドキする。チカラをもらってるから? それだけじゃない。これってキスじゃん! ファーストキス!!
『やめ……ろ……たす……け……』
僕の中の声が段々と小さくなる。腕の傷から黒い
「リン。逃がさないで……」
「わ、わかった」
――――すべてを無に。妬みなどいらない。光とともに消えろ。
僕がそう願うと黒い霧がきらきらと浄化されて消えて行った。
「成功した?」
「ふふ。さすがはリン!」
ぎゅむっと抱きこまれると頬ずりされ髪をなでられる。今までできなかった分を必死に取り戻そうとしてるようだった。
抱き込まれた肩越しに白虎の姿が目に入る。
「…………」
「白虎。
「そうみたいだな」
ううっ。なんだか 白虎の視線が痛いよ。いや、わかるよ。この状況。
「
「え? そうなの? ごめんよリン!」
白虎の言葉に
ほっとしたとけど、なんだか
「えっと。まずは説明してくれるかな? なんで
「それにはちょっと訳があってだな……」
「俺も聞きたいことがある」
いつもと違って白虎が真面目な顔で見つめてくる。ああやっぱりカッコいいな。きりっとした大きな瞳に精悍な顔立ち。まっすぐに見つめられて、なんだか緊張するな。
「うん。いいよ」
「リンは
そうだ! 忘れてた。皆には透けてた
「え? あ~、えっとね……うん。透けてたけどね」
「透けてた? どういう意味だ」
「白虎。それは私から説明するよ」
「僕は身体は眠りについていたが皆の周りにいつもいたんだよ」
「……魂だけでふわふわしてたってことか?」
「まあそうだね。でもリンには私の姿が見えてて……」
「馬鹿か! 魂だけで練り歩くなど、そんな危険なこと!」
「ん~。怒らないでよ。
「ここは聖なる気で満ちているからな」
「正確には満ちていただよ。そうでしょ?
「そのとおりだ。ここは私の結界があるから外からはよほどのことがないと入れない。だけど中に入り込まれると、これほど弱いとは思ってみなかった」
「さっきの穢れの記憶を見たよ。少しの間、僕の中に居たからね。どうやら穢れ達は内側からなら壊せるって思ったみたいだね。そのためにかなり手の込んだことをしたみたいだよ」
「手の込んだことって?」
「転送されそうなモノの身体に入り込むこと」
「なんだそりゃあ」
「きっと皇子はずっと狙われてたんじゃないのかな? 少しずつその体内に取り込まれる様に」
「私もそう思う」
「穢れは皇子に嘘を吹き込んでた。僕に巻き込まれてきただけで皇子にはここに来る資格がないように思い込ませてたみたいだ。だからこそ絶望感が大きかったんじゃないのかな?」
「じゃあ皇子は本物だったってことか?」
「うん。本物もニセモノもなかったんだよ。彼はリンだよ。僕と同じ」
「だが、違う点がひとつだけあった。ここにいるリンは私の
「っ! ……やっぱりそうだったか。薄々は感じてはいた……」
「白虎。なんか……ごめんよ」
「リンが謝る事なんかないぞ。それで、
「それはチカラが足りなかった……からで」
「ん? じゃあなんでここにいるんだ?」
「それは……私が
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