第8話 玄武の独り言
私は
私の闇は宇宙であり冥界であり、常に黒の中に身を置いている。
ある
おだやかで慈悲に満ちて愛にあふれた霊獣。何故か皆が彼を好きになる。
私からすれば年中お花畑の頭が湧いてる奴にしか見え……。まあそれはさておき。
なにせ、彼はこの世界の中心となる霊獣だ。彼がいることで五行が安定する。居てもらわないと困る要なのだ。もう彼が眠りについてかなりの年月が経つ。
片割れ候補らしき存在も現れたそうだし、そろそろ起きてもらわないと。
「ふぅ。英気を分けるのはかまわないが移動が面倒だな」
私は白虎と違い早く移動するのが苦手だ。
目の前に青い衣がチラチラと見える。あれは
こういう時は厄介ごとが多い。知らぬふりをして通り過ぎてしまおう。
「待っていたぞ。
がっしりと首の後ろを掴まれた。こっそり逃げようとしたのがバレたか。
「ぐっ。苦しいぞ。青龍、
「これは、すまん。お前は音もなく消えてしまうからな、焦ってしまった」
見つかったからには仕方ない。話くらいは聞いてやろう。
「久しぶりだな。元気そうでなによりだ」
「ええ。青龍も息災のようでなにより。それで、私になんの用です?」
「
「……どうって普通ですが。それがどうしたのです?」
「いや。
「ぶっ! くくくく。あ~ははははっつ」
「ど、どうしたのだ?何がおかしい?」
「いやいや。なんでも。くくくく。気の与え方はいろいろな方法があります。相手にふれるのが一般的ですね。手を繋ぐだけでもいいですし額を合わせるだけでもいいですし」
「そ、そうか。淫らな事をしなくてもよいのだな?」
「それは与える気の多さにもよるでしようね。例えば
「気の多さ? そういえば、少し多めに気を与えたとか言う時があるのだが、何をしたと思う?」
「さあ、そればかりは本人に聞いてみてくださいな」
「まさかあいつ。寝ている
「いくら眠りについてても
「そ、そうだな……」
「ふふふ。大丈夫ですよ。そのために私も気を分けているではありませぬか。朱雀 一人に任せて暴走しない様に。私と交代にすることであやつが何か悪さをすれば次に来る私にすぐにわかるようになってますしね」
「なんだ、そうだったのか。それを早く言ってくれよ……ぁあよかった」
「青龍は心配性ですね。貴方は生真面目なところがありますから」
「いや、
「おやおや、
「ところで青龍。貴方のところで
「うむ。私のところで皇子を預かっている」
「その後、どうなのですか?」
「まだ精神的に不安定だ。何かに怯えてるような感じもする。恐らくこの世界にまだ馴染んでないのだろう。時間の問題だとは思うがな」
「……そうでしょうか。
「……それは。おそらく渡り酔いがひどかったせいだろう。落ち着けば思い出すはずだ」
「ずいぶんと皇子に肩入れされてるように見受けられますね」
「当たり前だ。私が後見人になっているのだ。気にならないわけはないであろう」
「そうでしたね。失礼しました」
「だから私としても皇子と番われる前に
「まるで子供を嫁にやる親のようですね」
「ははは。そうかもしれない。皇子は大事に守ってやらねば」
「……青龍。なぜ貴方はその皇子が
「皇子は霊獣と
「そうでしたか」
「
「……」
「
「いや。あいつはじっとしてないからな。またどこぞを走り回ってるのだろう」
「……この
「誠か? ではあいつも自分の立場を考えているんだろうな」
「え? なんですって?」
「いや、やはりあいつも
「
「そうであろう? 他に用事はなかろうて」
「そうですね。では私は英気をわけに中に入りますので」
「ああ。呼び止めて悪かった。よろしく頼む」
青龍と別れ、
「
中で眠る
「きっと貴方の事だから私の声は聞こえているのでしょう? 青龍は生真面目すぎますね。物事をまっすぐにしか捉えない。優先順位にばかり目を奪われてせっかく手元に落ちてきた自分の獲物を差し出そうとしてる。かたや朱雀は自分の気持ちに早く切りを付けたくて、きっかけを待ち望んでいる。……果たしてあの皇子は本当に
「この手を使って
「実に面白い……」
そう私の中の蛇が笑う。
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