第6話 眠る麒麟
~
「
足早に神官の一人が声をかけてきた。
「なんだ、小言ならいらぬぞ」
声をかけられたのは眼が冴えるような青い官服を身にまとっている
「少しは私どもの話をお聞き下さいませ。
なんて浅はかな考えだ。確かにこの世界の秩序を護る
「番ってしまえというのか? お前本気で言っておるのか! 相手は
「そんな……滅相もありません。我らは
「まだ言うか!
「そ、そんなっ。いくら
ドン! と落雷がひとつ目の前に落ちる。
「ひぃっ」
「やめぬか! 馬鹿者!」
「大司教様」
後から追いかけてやってきた大司教と司教たちは慌てて神官を捕え膝間づかせる。
「
大司教が膝間づき額を地面にこすり付けた。
「……顔をあげるとよい。お前の顔に免じて今回だけは許してやろう。
「はっ。今よりもさらに精進いたします!」
◇◆◇
「まったく。我らは盛りの付いた獣ではないぞっ」
「
「しばし待て」
中からくぐもった声が聞こえる。
「これは…………盛りの付いた獣と思われるやもしれぬな」
神官が血迷った事を言い出したのは
「待たせたな。もういいぞ」
扉を開けると気だるげな
「お前、淫らなことはしてないだろうな」
私が睨みつけると
「まさか。いくら私にその気があっても
「下心があるのは認めるのだな」
「ふん。今更隠すこともあるまい」
「開き直るのもどうかと思うぞ」
「何とでも言え。私の気を分ける事で少しでも
「残念ながら俺には朱雀のように永遠の命も、玄武のような長寿の気もない。ゆえに、こういう時はなんの役にもたたぬ。歯がゆいものだぞ」
「まあ、そうだな」
部屋の真中には金の祭壇があり、そこには金の棺があった。
中で眠るのは
「
「チカラが半減したのだから仕方あるまい」
「……皇子の様子はどうだ」
「相変わらずだ。あまりしゃべろうとはしない」
「そうか。無理に儀式を進めることはないだろう」
「…………」
「そこで黙るなよっ」
「いや、お前の事を思うと儀式を進めていいのかわからなくなる」
「余計な気は使うな。私がみじめになるだろう」
「そうだな。お前も厄介な相手に惚れたものだ」
「だが、いづれ私の役目もなくなる事はわかっていた。あの時、空から皇子が降ってきたのをお前が受け止めた時に私はいつここから離れてもいいと心に決めたのだ」
数週間前のある朝。青龍は朱雀と共に
「人が空から降ってくるなどと。これは吉凶の兆しか?」
「青龍、何を悠長なことを言ってる。そやつ気を失っておるではないか」
「色が白いな。見た目からすると22~23歳くらいか?」
「白いというより青白いな。ケガをしてないかとりあえず連れて行くか」
「神官でもない人間をか?」
「それもそうだな。この先は
「……ん。……」
「お? 気が付いたか?」
切れ長の瞳がうっすらと開く。憂いに満ちた瞳は黒曜石のようだった。
「……お前どうして上から降ってきたのだ?」
「わからない……ここは?」
「
「
「おい、立てるか?」
青龍が青年を立たそうと手を貸す。だが青年は立てずにしゃがみこんでしまった。
「頭が痛い……」
「これはダメだな。抱えていくしかあるまい」
「お前、名前はなんというのだ?」
「……りん……」
「なんだとっ?」
「……まさか」
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