孤高と孤独

孤高とは「孤立しつつ、自らの志を守ること」 対して孤独とは「ひとりぼっちであること」。

独りという環境を自ら選べているのか、そうではないのかで、その「独り」の本質が変わってくるらしい。私は…現状がどっちなのかわからない。でも孤独という言葉はあまりにも寂しく、とても悲しく聞こえる。とても極端な言い方をすれば、できれば関わりたくない。だから孤独は嫌だ。でもこのままだと「孤独な世界」に放り込まれるのかもしれない、と思いながら私は自宅で23:00を待っていた。それとも、まさか私がその孤独を望んでいるのか…。

22:50の時点で頭から真っ白な煙が立ち上りそうなくらい色々考えていたし、なんだかんだ何も起こらないことを期待していたが、無情にも目の前にノイズが走った。

そして「あなたのコッカチケットは現在1枚です。あと24枚貯める事が出来たなら、鎖国心家に完全に移住することが出来ます。それでは良い時間を」わざとらしいくらい抑揚のない平坦なトーン。でも、どこかで聞いたことがあるような、妙に心地「良い」声で女が言った。

実は今日「こちら」に来たら幾つかやりたいことがあった。それの最たるものが、有人じゃないと出来ないシステムはどうなっているのかを確かめる事だ。昨日の時点でマンションの廊下の蛍光灯が灯っていたし、駅までの道の街灯もいつも通りに明るかった。いわゆる「インフラ」が機能していることが不思議だったのだ。だから発電所にいくことや電気会社などのコントロール室に入ること。そしてそれに付随しているが、普段は入れないところに入れるのかということなどを確かめたい。例をあげるとキリがないが、可愛い発想をすれば何処ぞの会社の「社長室」。すこし「ヤバい」発想をするなら、何かの研究室や首相官邸などだ。

そう考えると何かワクワクしてくる。子供の頃に戻ったかのように。そう思った瞬間、再び目の前にノイズが走り私の目の前の床にコッカチケットが出現した。「おめでとうございます!2枚目のコッカチケット」を獲得されましたね!あと23枚で…」と、さっきの調子で女の声がしている。

「こ、こんなことを考えているだけでも増えるの…?」

結構ビックリした。そしてそれくらいの事なんて日常でもよくある「思考」のはずだ。だからこそ、このチケットの出現は、こちらの世界ではある種「常識」が通用しないことを暗に意味していた。恐らく今後も「思考」しただけで見透かされたようにチケットが配布される。その窮屈さと無慈悲な速度感が重くのしかかり、その日「したい事リスト」を作ったことなどは一瞬で忘れ、昨日より何もできずにただ漠然とぼーっとするだけに留まってしまった。


コッカチケット枚数

エリカ  現在2枚


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