昨晩の事

翌日、私は目が覚めるのと同時によろけながら玄関に向かった。昨夜の「偵察」から帰宅後、自ら乱雑に脱ぎ散らかしたサンダルの残骸を改めて目にして「あれは本当に夢じゃなかったんだ…」とショックを受ける私がいた。そのサンダルは普段からあまり履くことはない。だから玄関の端っこのほうに揃えて置いてあるのが常なのだ。ということは、使用感がある時点で私が履いた証拠であるに違いない。その事実を理解し怖くなった。と、同時にその怖くなったわたし自身に疑念が湧いてきた。昨日の鎖国心家の話に加え、私の生きてきた26年間のことを考えると、自暴自棄のようになって昨日の事を「歓迎」してもおかしくないはずなのに、私は「嫌だ、死ぬまでずっとこの世界に独りなんて」と反射的に思ったからである。


そんな事を考え、ボーっとしているうちにアルバイト先から電話があった。「エリちゃん、今日のシフト11:00からお願いして「OK」もらったけど、大丈夫そう?」電話の向こうではアルバイト先の少し年上にあたる男性社員さんが、すこし怖い高さの声で忙しなく言葉を発している。昨日の事もあり、彼からの「12:00からのシフトの入り時間を、1時間前倒しにして来てくれないか?」という打診を承諾していたのをすっかり忘れていた。「ごめんなさい!いまから行きます!」慌てて徒歩15分ほどの職場に走って向かう。が、勿論入りの時間には間に合わず迷惑をかけてしまった。少し信頼を欠いてしまったかもしれない。その日の社員さんはあまり目を見て話してくれなかった。

私はどこかのネジが抜けているように感じる。場合によっては天然、場合によっては怠け者。そんな風に思われていることもあるのだろう。このような出来事が多発する事も人間関係がうまくいかない理由の一つかもしれない。


自分の「ポンコツ」具合にかなり落ち込みながら、家事をある程度済ませ、その日の「23:00」を迎えることになった。

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