第5話 マリー、復讐の相手に巡り合う
シースルーの下着が見える夜の衣装で私はこっそりと夜の教会をうろついている。すると物音がして、私は走って行く。台所だ。自分の向かっていた先と同じだった事から食べ物でも探しに来た誰かを私は見た。ラウルだ。ウィンナーのような物を焼いている。「どうしたの?」と、私は聞いてしまった。
「うん。ちょっとな・・・小腹が空いてさ」ラウルもそんな事があるんだ。と、ラウルのとなりに座ってラウルが料理をするのを見る。私は思い出したように、昼間聞いた事をラウルに聞いた。
「賢者が集結しているみたいね。お母さんと同じ力を持った人たちが集まって、私たちを滅ぼそうとしているなんて」
「構わないさ。住民にすればいい。よっ」と、ラウルはフライパンを持ち上げる。「焼けたけど食べるか」「う、うん」ラウルは皿に盛ってくれた。フォークも一緒に出て来る。食べながら私は、
「守れるかしら。ヒルズを手に入れたのは時期尚早だったんじゃ」と、ラウルに聞く。「相手は同時に攻めてくるか?それとも?」と、ラウルは私のとなりに座って来る。私はラウルを見つめて、
「ラウルの力を理解しているなら・・・ヒルズだけを狙って来ると思う」
「なるほどな。それはそうだろうな・・・とりあえず、ヒルズだけでも取り戻す。いや、ヒルズこそ取り戻したいと考えて来るかもしれないな」
「ええ、オボロは元々住民がいなかった地区だもの」
「ああ、そうだな。それでその姿は恥ずかしくないのか?」
「え?」私はそう指摘されて自分の姿を眺める。シースルーで黒い下着が丸見えだ。
「きゃあ」と、私は胸を隠す。
「いや、今さらなんだけど・・・。まあ、いいものが見れた。オレは寝るよ」と、ラウルは自分の寝室の方へ歩いて行ってしまう。気づくと私はラウルを追いかけていた。そっと手首をつかんでしまう。ラウルが振り向く。腰を抱かれ、顎を支えられて唇を奪われる。「明日は忙しくなる・・・それとも今日は一緒に寝て欲しいのか」
「うん。ちょっとだけ」と、私はラウルの腕に胸を重ねる。そのまま寝室へ行ってホントにただ一緒に寝た。というか先に寝てしまった。
ニルヴァーナ王国の王都、王城の三階にある大会議室に大臣たちが集まっていた。
「何が起きている!ヒルズが乗っ取られただと!」と、ゼブラは叫ぶ。テーブルを叩き、ベレー帽をワーナー宰相に向かって投げる。ワーナー宰相は何事も無かったかのようにベレー帽を受け取り、
「・・・・・・魔王の部下が領主に成り変わっただけです。支配権は王国にありますよ。問題はありません。それよりも、魔王と対話をする事をお勧めします」と、メガネをクイっと上げてゼブラ王子を見返した。国王ゼルはゼブラの隣に座ったまま、目を瞑っている。
「対話?何を言っている?乗っ取られたんだぞ。全兵力だ!全部を注ぎ込め、総力戦だ!全兵力十万!帝国からの増援も入れて十五万で攻め込め!王命である!」と、ゼブラは叫ぶ。
「やめい!」と、国王ゼルは一喝する。
「しかし、父上」
「ゼブラ・・・最終決定権は王子には無い。わかるな。お前のそれはただの意見だ。見たところ、賛成の者はいないようだぞ。ワーナー、対話とはどのような・・・余が行かねばならぬか。いや、行かねばならぬよな」
「はっ、王様。王様がオボロへ赴き、魔王、いえ、牧師ラウルと対話するのがよろしかと思います」と、ワーナー宰相はそこまで言って頭を下げた。
「ふむ。そうよなぁ・・・ではオボロへ行く準備を整えてくれ、ワーナー。ゼブラ・・・間違っても戦いなどしてはいかん。仮にも魔王の配下たちに勝てる見込みなど無いのだからな」と、国王ゼルは席を立って大会議室を出ていく。それに倣って、大臣たちも部屋を退室していく。ただゼブラ王子だけが部屋から出れずにいた。
「くそぉ、くそぉ、くそお」ゼブラはぼやく。テーブルを思い切り叩く。認められたい。手柄を立てたい。さらなる権力、王の座を手にしたい。英雄と崇められたい。あああああ、どれもこれも夢物語だ。ゼブラはまたテーブルを叩く。右手が赤くなっていく。テーブルを繰り返し繰り返し叩き続ける。ジ、ジジジ。光の粒子が集まっていく。「やっと見つけた・・・」そう言って現れたのは、マリー・アカノイアだ。金に輝く髪を後ろで束ねて、全体的に虹色になった目でゼブラを見つめている。星の川が輝くマーメイドドレスを着て、ゼブラに近づく。
「ひっ、来るな」「レヴァンティン」赤黒い片手剣が空中から現れる。
ゼブラは尻餅をついている。後ろへ下がりながら尿を漏らしている。マリーは片手剣を右手で持ち、ゼブラの喉に狙いを定める。
「忘れたとは言わないわよね。父を殺し、母が死ぬきっかけを作った貴方が」
「ひ、寄せ。余は第一王子だぞ。わかっているのか!」
「父さんは帰って来ないのよ。それと助けは来ないから。この会議室は城から隔離させてもらったからね。ちょっと一人で長居しすぎたって思わなかったの?まあ、ずっとこうなる瞬間を待っていたんだけどね。だから、わかるでしょ?逃すわけないじゃない。さようなら」と、マリーは動いた。赤黒い片手剣は王子の喉のほんの少し手前で止まる。ゼブラは白目を剥いて気絶した。「簡単に死ねるなんて思わないで。連れ帰って、お前が自ら死を望むようになるまで痛めつけてあげる。大丈夫よ、回復魔法も旦那様に教えてもらって・・・ギリギリのところで回復してあげるから」と、マリーはゼブラと一緒に転移魔法陣を起動させて帰路についた。
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