第2話 異世界転生す

「そう言えば僕、車に轢かれたんだっけ。」


何とか体を起こし、ブレザーを捲ってみるもそこには傷1つ付いていない。 

それに、周りを見渡してみても何も見当たらない。

目に入ってくるのは岩?で出来た薄暗い道。


「ここはどこだろう?有吉さんは大丈夫かな」


周りに誰も居ないと分かっていながらも、僕は記憶喪失したようなセリフを独り言のように呟いた。


「――タケルさま、やっと目覚めたんですね。有吉様は無事ですよ。そしてここは、ファーマシス。簡単言うと異世界です」

「無事か、それは良かった。異世界……って、は?だれ?」


返ってくるはずのない返答に僕は今までに出したことないような大きな声が出た。

当たりを見回してもやっぱり人の気配はない。


「周りを見ても誰も居ませんよ。私はタケル様の脳に直接話しかけている実態のない……。私はタケル様の……何なんでしょうか。付き人と言うには実体はありませんし」

「こっちが聞いているんだけど」

「まぁ、ガイドみたいなものです。名前はケイです。気軽にケイとお呼びください」

「ケイ、か。とりあえず今の状況を説明できる?僕はどうなっちゃったんだ?」

「はい。タケル様は所謂、異世界転移をしたのです。人間世界で徳を積んだ結果、車に轢かれて死ぬところを運命が異世界転移としたという訳です」

「異世界転移……徳……運命」


そう呟いて、現実離れした出来事に戸惑う。

人のためにしてきたことがこういう形で返って来るとは。

いい運命なのか、悪い運命なのか。

そんな風に考え事をしていると、ケイが再び口を開いた。


「いい運命でも悪い運命でも運命は変えられません。でも、未来は変えることが出来ます。どんな人生にするかはタケル様次第ですよ」


 ケイのその言葉は僕の心にスッと入り込んできた。


「そうだな。ぐずぐずしてても意味ないよな。」


 僕は「よし。」と1つ気合いを入れて立ち上がる。

 不思議と体の痛みはすでに消えていた。

 折角の異世界転移。前の世界のことなんか忘れてこの世界でまた頑張ろう。


「ケイ、まず僕は何をすればいい?」

「はい。まずはここのダンジョンから出ることをお勧めします」

「そう言えばここがどこか聞いていなかった。僕、道分からないよ」

「安心してください、道は私が指示します。ファーマシスについても歩きながら説明しますよ」


そうして、僕はケイに言われるがまま歩きながら出口を目指した。


 

 ♦

 

 

「まとめると、この大陸ドクタは4つの町で構成されていて、どれも昔鉱山資源で栄えていた。ここ、ファーマシスもその一つで魔物に財源であるキイトルダ鉱山を占領され、魔物の湧くダンジョン化してしまったと。それは他の三つの町も同じで、取り返すためにこの大陸に冒険者と言う職業が存在していると」

「そういうことです。理解が早くて助かります。ここ右です」

「それじゃあ、今この世界は何で生計を立てているんだ?」

「残った小さな鉱山や、魔物のドロップ品です」

「へ~。魔物に救われているとも言えるのか」

「タケル様は優しい考えの持ち主で。ここの突き当りを左でテレポートできる場所に到着です」

「やっとか」


ケイの説明によってこの世界についての大まかなことについて教えてもらい理解でき、出口ももうすぐといった――その時


ドーン!


ダンジョン内も大きく揺れるほど大きな音が左側から響いてきた。

僕は驚きながらも、その音が響く方向へ急ぎ足で走り始めた。

駆け出すと、通路の先には僕の二倍ほどの大きさの蛇のような魔物が倒れているフードを被った人を今にも襲おうとする光景が広がっていた。


「なんだあの蛇」

「蛇型の魔物、ヴァイパーです。このダンジョンの高階層の魔物です」

「ケイ、あの人を助けるぞ」

「正気ですか!?武器も戦い方も無いんですよ。今行ったら死にますよ!」

「そんなの知ったことか!一度は死んだ身だ!助けに行かないと僕が後悔する」

「……本当にあなたって人は。分かりました」


その言葉を聞くやいなや僕は倒れている人の元へ走る。

蛇の魔物は巨大な牙を持ち追い詰めている。


「毒霧来ます!」

 

僕はケイのその言葉が聞こえなかったわけでは無いが一瞬のためらいもなく、自分の身体をその魔物とヒトの間に飛び込んだ。

その直後、俺の背中に生暖かく鈍い痛みが走った。


「くっ」

「タケル様!」

「大丈夫。ぐっ、テレポート場所まで急ぐぞ!」


全身が持続的にズキズキと痛む。

だが、今はそんなことを言っている場合では無い。

ヴァイパーが次の攻撃の準備をしている。

僕は倒れていた人を抱え、全力で走る。


ヴァイパーは咆哮し、しっぽを振り落として来る。

それを間一髪で躱し走り続ける。


「あれです!」


ケイそう言って、目線の先を見ると円状に光る場所がある。

僕はその上に迷わず立ち入った。

その瞬間、さっきと似たような光に視界が包まれて、僕は反射的に目をつぶった。


そして、次の瞬間目を開けると、そこは久しく見ていなかった綺麗な空と、街並みが見えた。

テレポートという物はこういうものなんだと体感して思った。


「すげ〜、コレが異世界か」

「タケル様、初めての異世界に見とれているところ申し訳ありませんが、そんな悠長な時間はありません。早くしないと死んでしまいますよ」

「えっ、そんなにこの子ヤバいのか?」

「その方はもう寝ているだけです。やばいのはタケル様の方です。」

「この子タケルって言いう名前……って、へ?タケル?」

「はい。毒のダメージであと3分程でお陀仏です」

「俺?まじ?」

「マジです」


僕はその言葉を聞いた瞬間、抱えていたフードを被った人をダンジョンの入口付近の優しそうな人に預け、あかりのたくさん灯る方に走り出す。


「ケイ、そんな事は早く言ってよ!どこ行けばいい?!」

「このまま真っ直ぐ行った突き当たりにポーションを扱っている小さな店がある筈です」

「急げ〜!!」



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