虐められっ子MOB男のセカンドライフ

みっちゃん

序章

第1話 プロローグ

ポタッ――


顔に何か冷たいものが落ちてきて、僕はゆっくりと目を開いた。

そして、目の前に広がるのは僕の知らない天井?だった。


「痛っ」


周りを確認しようと体を起こそうとすると、左わき腹の辺りに激痛が走った。

その痛みでそれまでの思い出がフラッシュバックしてくる。



――――――――――



 「行ってきます」


僕はいつもより重たく感じる玄関のドアを勢いよく開き母にそう言い残し、学校に向かう。

住宅街に響くこの蝉の音を聞くのは高校に通い始めてもう3年目。

高校生活にも慣れたはずだが、今日は過去一学校に行きたくない日だ。

そんな風に考えながら重い足取りを進めていると背後から「おはよー」と、声を掛けられる。


「おはよう、小田君」

「土曜日はマジで助かったわ。ありがとな。健のお陰でめでたく七位入賞だ」

「そんなことないよ。小田君率いる陸上部がみんな頑張ったからだよ。僕は数合わせに出ただけ」

「そんなに謙遜するなって。って言うかお前、昨日は剣道部に助っ人したらしいじゃん」

「あ、うん。頼まれたから」

「健って、何でもできるよな。なのに……どうして…」


小田君は何か言いたそうに、どこか起こっているかのような顔でそう言った。

僕はそれが何なのかはすぐに分かった。

 

「そんな顔しないで。僕が聞きたいのは謝罪じゃないよ」

「あぁ、そうだな。ありがと」

 

僕が小田君のその言葉に大きくうなずくと小田君は周囲を少し確認すると「駅伝に出るときはまた頼むわー、じゃぁな」と言って走って別の友達らしき人の所へ走って行った。

また、しばらく歩き校門をくぐったあたりで「原田、君」と、再び後ろから声を掛けられた。


「おはよう」

「おはよ、有吉さん」

 

僕は彼女の声のトーンと同じような出来るだけ優しい声で笑顔でそう答えた。

が、その後の言葉が途切れる。


「あ、ん。……」


有吉さんも何か言いたげに口パクパクさせているが声は出てない。

僕はそんな彼女の様子を見て、やさしく微笑んだ。


「早く行かないと遅れちゃうよ。僕の事は心配しないで」


僕の言葉に、彼女はほっとしたのか有吉さんは笑顔で頷いた。

その笑顔はに僕は何度助けられたことか。

そして、この笑顔が俺にだけ向けられたならいいのにと何度思ったことか。

そんな想いが頭をよぎったが、今はただ彼女の笑顔に感謝することしかできなかった。


「じゃあ、また」


僕がそう言うと彼女は一瞬悲しそうな顔を見せたが、何かを察してすぐに教室へ向かって行った。

その背中をしばらく眺めた後、僕は「よし」と気合を入れて教室へ向かった。


「おはよう、原田健くん。待ってたよ~。それじゃあ、面貸して貰おうか」


教室の扉を開くやいなやそんな声が教室中に響き渡る。

僕は「ですよね」と心の中で思い、そしてクラスメイトもそう思っていると思う。

僕の両腕はすぐに二人の取り巻きに固定されてしまい、連れていかれた。


そして僕は 


「あぐっ!」

ドカッ!

バキッ!


校舎裏でひたすら殴られていた。


「げほっ!」

「おらっ!おらっ!金は持ってきまちたかー?西条くぅん」


僕は蹴られた腹を抑えながら頷いた。

ポケットの中から僕は財布を取りだした。

バシッっとひったくるように取ったリーダーの松尾は、財布から札を抜いて数えていく。


「ひぃーふぅーみぃー。しけてんな」


そう言って、中身を抜き取って財布を投げ返してくる松尾。

その横にいた取り巻き2人が笑っていた。

こいつらの親がそれぞれ警察、政治家、社長だからって何してもいいと思ってやがる。


「松尾さん。しけてますねぇ原田の財布は」

「ほんとにな。3000円で我々になにをしろって言うんだろうなぁ?原田くんは。はっはっは」


俺の髪の毛を掴んでくる松尾。


「なぁ、原田。有吉を助けてヒーローぶってるつもりか?3万。明日は3万持ってこいや。じゃなきゃ、もっと殴るぜ?」

「…………」


どうやらいじめの標的は無事有吉さんから僕に変わったらしい。

 

バキッ!

また、殴ってきた。

痛くもないのに。


「なんか言えよ。怖くて何も言えないってか」


バキッ!

また僕を殴ってきた。

そして胸ぐらを掴んできた。


「いくら持ってくるか選ばせてやるよ?原田。俺の腕を指でトントンってしてみ?持ってくる金額分トントントンってな」


僕はその時も何も動かなかった。


バキッ!


「返事しろや。5万だよ、5万。分かりまちたかー?」


バキッ!

また俺を殴りつけてきた。

これは返事をしなければ終わらない奴だと思い「……はい」と返事をした。

にんまり笑顔になる松尾はやっと僕の髪の毛を掴むのを辞めた。


「じゃ、よろしくなぁ?原田くぅん」


ゲラゲラ笑って三人が去っていった。

僕は土で汚れた制服を払い教室に戻った。

 その後は、暴力行為はされずパシられたりと、軽い虐めだったが、松尾たちの顔は何かを企んでいるかのように何故か笑みを浮かべていた。


そして迎えた放課後。

僕が下校している道中で事件は起きた。


通りの交差点。

横断歩道のそばにいた彼らの中に一人見慣れない人を見つけ俺は急いで駆け寄る。


「原田くーん。待ってたよ〜」

「有吉さん!」


僕を呼ぶのは有吉さん、ではなく今朝の彼ら。

有吉さんは僕の方に駆け寄ってこようとするも、取り巻きのふたりに捕まえられて動けないようだ。


「彼女を離せ!」

「うるせぇ!またお前はヒーロー気取りか!ほんとお前は人助けが好きだな。でもそれは自分に命があるからだよな。」


そう言って松尾は取り巻き2人から有吉さんを奪い取るように掴んで、俺の方を不敵な笑みを浮かべて見てくる。

横断歩道の信号機は点滅を開始する。


「これならお前はどーする?ヒーローさん」


赤に変わった信号機。

向こう側から2tトラックがスピードに乗ってやってくるのが見える。

と、同時に重なるようにして松尾のてから投げ捨てられた有吉さんの姿。


「有吉さん!」


考えるよりも先に体が動くとはこういうことなんだろう。

僕は車道に投げ捨てられた彼女の体を掴むと、急いで反対側の歩道に向かってはじき飛ばした。


キキィィィー!!!





――――――――――――――――――――――――――




たくさんの作品の中から当作をお読み頂きありがとうございます!

楽しんで頂けるよう頑張ります<m(__)m>


そして読者の皆さんにお願いです。

暇つぶしに書いているので、章ごとの評判で続きを公開するか判断します。

気に入ってもらえたら、ぜひ「お気に入り」と「☆☆☆」をいただけると嬉しいです。


執筆の励みになりますので、なにとぞー!


どうも、みっちゃんでした!(^^)!

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