41-タマゴ消化

暫く白銀が起きそうもないのでずっと後回しにしていたウィンとダスクのステータスを確認してみようと思う。

ちゃんとウィンに声を掛けてから抱き上げると、肉球のケア用の蜜蝋を塗ってやりながらステータスを開く。


「ふむ、あの素早い動きは元々の値が高いからなのか…」


『主は暖かいから安心するんだぞー』


【使い魔名:ウィン 性別:♂

種族:闇獅子 (宵闇の継子)

状態:眠気と格闘中

戦闘パラメータ

HP:1370

MP:280 AP:500 ATK:304

DEF:37 INT:56 AGI:96

APP:74/100 CH:68/100

KRM:0 LUK:88

スキル:陰影魔法、切り裂く爪 lv.1(連撃数が加算される程、切れ味が鋭くなりATKが上昇する:現在の上昇最大値 2倍)、猫パンチ(幼少時のみ使える手加減攻撃)

進化段階 1/4】


近接戦闘向きに特化しているパラメータに黒鉄や白銀達と組んでも相性が良いだろう。

防御力が低めなのが気になるが、ウィンの動きの邪魔にならないような加護付きの装飾品を俺が作成出来たら化けるかもしれない。

今度、折角鍛治のスキルがあるので何処かの鍛冶屋の工房を借りられないかポスカに聞いてみようと思う。


「ステータス見せてくれてありがとな。肉球のケアも終わったぞ」


『蜂蜜の良い香りがするんだぞー!』


『パパ殿!ぼくの足もやって欲しいです!』


「はいはい、次はダスクのをやろうな」


『順番抜かされましたの!』


『ヴィオ姉ちゃん、弟に譲るものだよ』


『くっ、私よりセラのが大人っぽいですの…』


順番待ちをしていたヴィオラが毛を逆立てながら抗議するが、傍に居たセラフィにツッコまれれば梅干しを食べた時のような顔をして引き下がる。

この後になとヴィオラの頭を撫でながら告げれば、尾を揺らして反応を返してくれる姿に思わず笑ってしまう。

ダスクを抱き抱えると蜜蝋を塗りながら意外と毛も生えている事に気付き、インベントリから鋏も取り出して肉球の邪魔をしない程度にカットする。


【使い魔名:ダスク 性別:♂

種族:夕狼 (黄昏の継子)

状態:パパ殿Love!序列一位を狙うんです!

戦闘パラメータ

HP:1520

MP:460 AP:620 ATK:276

DEF:127 INT:254 AGI:86

APP:76/100 CH:50/100

KRM:0 LUK:50

スキル:幻影魔法、探知する鼻 lv.1(優れた嗅覚は気配のない物すらも嗅ぎ分ける:現在の最大範囲50m)、噛み砕く牙 lv.1(あらゆる物を噛み砕く強靭な牙:現在の噛み砕き可能硬度 鉄)、秘技甘噛み祭(ただの好き好き攻撃)

進化段階 1/4】


「何だこのスキル…」


『パパ殿、どうかしたんです?』


「いや、なんでもない…。よし、これで歩きやすいはずだぞ」


ケアが終わり綺麗になった肉球を見せると尻尾を振りながら床を駆け回るダスクの姿を見つつ、次はヴィオラだと思い手招きすれば飛びついて来るので喉元や耳の裏を撫でてやる。

はわわわと言いながら蕩けた顔をしているのを見てから手早く肉球のケアを済ませていく。

心地良さそうにケアされているヴィオラの表情が面白くて見ていれば、緑色のタマゴが座っている俺の横に現れる。

インベントリから出していない筈なのだが何かしたかと首を傾げそうになるが、ウィンとダスクが特殊なだけで本来こうして孵化前に視認できる範囲にタマゴが出てくるのが普通な事を思い出す。


『あ、新しい子が来るー?』


『今度はどんな子なのでござろうな?』


『楽しみ、だね』


『オレ様の弟か妹になるんだぞ!』


『ぼくの弟か妹でもあるんです!』


『ん、なんや…皆騒いで…』


『至福の肉球ケアの時に来るのは反則ですのー』


「ケアはまだ終わってないんだから動いたらダメだぞ、ヴィオラ」


『あぅ、ごめんなさいですの…』


しっかりと前足と後ろ足の肉球に蜜蝋を塗ってから下ろすと、目を覚ました白銀と共にタマゴの孵化を見守るマオ達の一員に加わる。

皆が見守る中、タマゴの殻にヒビが入る。

中からヒビ割れた所目掛けて体当たりでもしたのだろうか、タマゴの割れる小気味よい音が聞こえると同時に中から飛び出て来た球状の何かが壁に突撃し、ゴムボールのように部屋中を跳ね回る。

一瞬ポカンとその様子を見ていた俺達だったが、ハッとしたようにウィンが真っ先に動く。

タイミングを合わせてジャンプをしながらソレを口でキャッチすると、ベッドの上に華麗に着地し柔らかい布団の上に置いた。


『動物って感じじゃないねー?』


『わても初めて見るさかい分からへんな』


『姉上、起きたなら若に言うことがあるでござろうよ』


『あ、せやった。旦那はん、おはようさん!』


「おはよう、白銀。俺も分からないから長老を呼んでみようか」


それがいいとマオ達が頷いたのを見て、俺は箱庭に居る綠を呼び出すと何やら満足気な顔をしているルフもセットで部屋の中に出てくる。

呼び出された綠が黒鉄に手伝ってもらいベッドの上に乗せてもらうと、紫色の炎のような物を纏った球を見て面白そうに笑う。


『ほぉ、こりゃ珍しい!幽魂族の子供とは、ライア殿の幸運は凄いのぅ』


「幽魂族?」


『彼等は型無しで性別も無し。故に姿が定まらず紛れてしまえば先ず見つける事も難しい種族じゃよ。こやつは生まれたばかりだから変化しておらぬ希少な個体じゃな…。しっかし、偉い目を回しておるが何をしたんじゃ?』


「あー、それはな…」


タマゴを破ろうとしてヒビ割れた所に体当たりしたようなのだが、勢い余ってそのまま壁に衝突して部屋の中を跳ね回ったと説明すれば、綠とルフが気の毒そうな顔で幽魂族の子供へ視線を向けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る