13-ほんの少しの休息
ベンチに腰掛れば気遣うようにマオ達が俺の傍へとやってきて身体を擦り寄せてくる。
身体の大きいルフはそこに混ざれないので困ったような顔をしていたが、先程琴葉にしてあげた時の嬉しそうな顔を思い出したのか両手を広げていたので誘われるがままに抱き着いてしまう。
『んんんんーっ!僕も大きくなりたいー!』
『マオ兄様、しょうがないですの…。もう大きくなれないから諦めも肝心ですの』
『大きくなる道具が欲しいーっ!』
『運動会で報酬に出たらそれだけでぶっちぎりなやる気が出そうなんだぞ…小さい兄者…』
『ボク達の中で今の所…一番小さいからね…』
『セラも小さいんだぞ?』
『ボク、成長期が来たら今より大きくなるもん』
俺の肩の上で地団駄を踏むマオがくれる衝撃が肩揉みをしてくれているような気分になりつつ、ここまで大喧嘩のようなものもなく仲良くやってきているなと思う。
新しく加わったルフや長老に最初は威嚇していたが、こうして皆で騒いでいる方が楽しいと思っているのかもしれない。
見た目や喋り方に反して精神面は成長してきているという事か。
『サラッとトドメ刺しにいくんよなぁ、ヴィオは…』
『某と姉上に矛先が向かないのであれば別に良いでござるよ…』
『白姉様と黒兄様、絡んで貰えなくて寂しいんですの?いくらでも罵倒してあげますの!』
『誰もそんなこと言うとらんやろ!』
『ヴィオの罵倒になれたら性癖が歪みそうでござるな…』
それぞれのやり取りに笑ってしまいつつ、ウィンがしれっと俺とルフの間に潰れないように気を付けながら挟まると、誘惑するように腹を見せてくるので顔を埋める。
周りから羨ましそうな声が聞こえるが、こうして時折俺を甘やかしてくれるマオ達に感謝しかない。
「…ルフの身体、暖かいから眠くなるな」
『どこに帰ればいいか分からんで寝るのだけは勘弁だべよぉ』
『その時にはオレ様達がポスカ達の所まで案内するから大丈夫なんだぞ!』
『寝てるママを見たポスカが怖いけど、既成事実は作らせない』
「セラフィ…どこでそんな言葉覚えてくるんだ…」
『でも、そろそろお腹も空いてきたしポスカも反省しとるやろうから戻らんとかな?』
『ファンビナ商団の飯も美味いでござるが、若の料理が食べたいでござる…』
ルフの腕の中の温かさと、ウィンの腹の毛の柔らかさが心地好く瞼が閉じそうになっている俺を時折揺すって起こしてくれる。
アニマルセラピーの偉大さと寝てしまいそうになる自分に申し訳なく思いつつ、身体に巻き付いている白銀の腹の音がダイレクトに感じ取れたので時刻を確認すれば間もなく14時になりそうだった。
ここまで食事を我慢させた事はないのでルフの背を優しく叩いてから感謝の意を述べると、ウィンを落とさないように手を添えてから身体を離す。
「悪いな、腹が減っただろう?拠点に帰ろうか」
『僕達は大丈夫だよー!パパ、癒されたー?』
『さっきは凄い疲れた顔をしてたけど、今は顔色がいいですの!』
『ウィン、狡い。ママに抱いてもらってる…』
『ふふん、作戦勝ちなんだぞ!』
俺に抱かれているウィンの頭の上に乗り不満げにジトリと見下ろしているセラフィを見て思わず笑ってしまう。
ヴィオラが黒鉄に声を掛ればルフの傍に行くとその胸を目掛けて飛び掛かる。
驚きながらもルフがヴィオラをキャッチすれば、俺の匂いがすると言って尾を揺らしている。
この状況に戸惑いながらもルフは目を細めると、俺やマオ達を見て口元を緩めた。
『オラ、同族にも怖がられてばかりだけんど…ライアやマオ達とこうして過ごしてみて驚く事もあっけど、喚ばれて良かったと今は思うだよ』
『べっ、別にー!パパのお願いだから仲良くしてあげてるだけなんだからねっ!』
『どうしたでござるよ、兄殿。今流行りのツンデレでござるか?』
『最近はツンデレよりもクーデレの方が人気なんちゃう?』
『ボクの事かな?』
『何を言ってますの!今も昔もドジっ狐が一番ですの!』
ルフの一言に反応したマオが尾を揺らしながら照れくさそうに顔を背けるのを見て、他の面々がツッコミを入れていく中で今の流行りなどの話になり思わず苦笑を浮かべる。
取り敢えずは拠点に向かう為に歩きながら前々から思っていた事を問い掛けてみる。
「何時も思うんだがお前達はどこでそんな情報仕入れてくるんだ?」
『パパが寝てる間に宿屋を散策してる時ー!』
『ペット用の扉から外に出て宿屋の中を散歩してましたの!』
『休憩スペースで知り合いなのか分からぬが休んでいる人達の会話を聞いていたのでござるよ』
『体がちっこい頃は旦那はんが心配するやろうと思ってそうしとったけど、最近はわてと黒が候補者募って空の散歩に出とるな』
『ボクは夜が苦手だからウィンと何時もお留守番してる』
『オレ様は主の傍に居る方が好きだから大人しくしてるんだぞ』
「結構自由に過ごしてたんだな、お前達…」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしてしまったが、危険な事に巻き込まれないようにちゃんと配慮して過ごしていた事を逆に褒めるべきかと思い一匹ずつ頭を撫でて行く。
嬉しそうに撫でられる面々を見つつ、これからはルフも居るので寂しく思う事は少なくなるだろうなと思う。
ファンビナ商団の拠点が見えてくると、泣きながら門の前で待っていたポスカが俺に気付いて抱き着く為に走って来たが、即座に動いたマオの飛び蹴りを額にお見舞いされたのだった。
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