11-今度はちゃんと
この場所で琴葉と会うと思っておらず俺は目を瞬かせていると、白銀が僅かに目を細めれば身体を伸ばして服装に興味があるのかブーツから黒のゴシックドレスを見ている。
セラフィも興味が湧いたのか白銀の頭の上に乗りフリルの部分をジッと見つめ、そこにヴィオラも参戦してブーツの紐やあしらわれているリボンを見て興奮したように尾を揺らしている。
『この子…声だけ聞いとるとあの時、いきなり声掛けて来た女の子やと思うんやけどこんな格好しとったんやなぁ。旦那はんはこんな子供の心まで鷲掴みにしてまうとか困ったもんやけど…この子の服装かわえぇな』
『白姉ちゃんに同意。この子の服、可愛い…』
『テラベルタやビーネストでは見た事ない服装ですの!この靴の可愛いリボンと少しキラキラした紐、なんか見ててトキメキますの!』
「わ、わわっ!何?どうしたのこの子達?」
「ごめん、俺のペットと使い魔なんだが…。君の服が可愛いから興味津々みたいで…悪いな」
「この服、可愛いと思ってくれるの?私が着てて変じゃない?」
不安げな言葉にヴィオラが首を横に振りながら琴葉を見つめれば、言葉が通じないと思いセラフィと白銀を訴えるように伺い見る。
セラフィがその言葉に対してバツを作ってから、ロリィタ服と琴葉を指差してマルを作ると白銀が首を縦に振る。
嬉しそうに笑いながら白銀達に恐る恐るも手を伸ばして優しく撫でる琴葉を見て、あの時は少しばかり暴走していたのかもしれないと思う。
『変だなんてそんな事あらへんわ。綺麗な長い黒髪やから折角やし服の雰囲気に合わせて毛先の方を少し巻いてみたらえぇと思うんやけど』
『んー、今のままでもボクはいいと思う。代わりに…黒地ベースで白フリル付きのヘッドドレスとかどうかな?』
『似合うと思いますの!でもでも、大きな薔薇みたいな飾りの付いた髪飾りとかでもアクセントが出て私は良いと思いますの!』
「これ、通訳した方がいいのか?」
『旦那はん、メモとって伝えてや!口で言うても絶対忘れてまうから!』
『黒のドレスも良いけど他の色も見てみたいですの!』
『ボクも着てみたい…』
「ドレスヘッドか髪飾りくらいならお前達にも作ってやれると思うが…」
琴葉にじゃれ付きながら服装をチェックしつつ、俺にメモをとる様に言う白銀とセラフィ、ヴィオラの意見を書き留める。
途中から自分達もオシャレがしたいと言う意見が混ざってきたのでボソリと呟けば、目を輝かせて俺を見る三匹に一瞬早まったかと思うが時は既に遅しと言うやつだ。
喜んでくれるのならば、是非作らせて頂きますという気持ちになる。
『…いかんでござる。姉上達が呪文を喋っている気しかせんでござる』
『オレ様もなんだぞ…』
『オラも何言ってっか分かんねぇが…あの服を着てるお嬢ちゃんは可愛いと思うだよ』
『僕もそう思うー!ほっぺたのそばかすも可愛いよね!』
琴葉の服装を見ながら盛り上がる白銀やセラフィ、ヴィオラ達の会話にのれない男達が傍でこっそりとだが可愛いと話をしているのが聞こえる。
書いたメモを琴葉に手渡せば、目を瞬かせた後に感謝の意を述べた後に白銀達を見て泣き出してしまい俺は慌ててインベントリからハンカチを取り出して差し出す。
泣きながらもハンカチを受け取り目頭を抑えながらも嗚咽を漏らす琴葉の肩にセラフィが飛び乗ると、落ち着かせようと身を擦りつけている。
「うっ…ふぇ…お姉様や舎弟の人達以外で、私の服装を…馬鹿にせずに肯定して貰えたの…初めてなの」
『普通に可愛いのになんでだろー?』
『男だったら多分照れ隠しで、女だったら妬みなのかもしれないんだぞ』
『あー、それはあるかも知れへんな。髪にもツヤがあるし一生懸命自分磨きしとるの分かるもん』
「琴葉ちゃん、で名前合ってるよね?俺は気の利いた事は言えないけど、その服装が変だなんて思わないし好きな服を着てる自分を恥ずかしいとか思わなくていいと思うよ」
「だって…皆、姫のつもり?…とか、似合ってないからやめろよって…言うもん」
『その裏にどんな意図があろうと言ってはならない言葉があるでござるよ…。辛かったでござろう』
ベンチに座る琴葉の傍に気遣うようにマオ達が寄って行き背中を撫でたり手に触れたりとそれぞれ慰めるような行動をとっている。
周りから羨ましいと言う声がしている気がしたので辺りを見回せば、ペットを連れた一人の女性が羨ましげな視線を向けて来ていた。
視線が合えばハッとしたような顔をした後、俺を睨んでから顔を背けて迷宮エリアの方に向かっていくのを見届ける。
「ルフ、ちょっとお願いがあるんだけどいいか?」
『ん?なんだべ?』
「そのベストを預かるから…琴葉ちゃんの事、抱き締めてやってくれないか?」
『え!?オラ、きっと汗臭いど?』
「気になるならペット用の香料があるからソレを使うよ」
シャンプー用に色々購入した時に間違えて買った物だが、ペットや使い魔の嗅覚の刺激にならない石鹸の匂いの香り水をルフに使用する。
ルフからベストを預かった後に、腹近くと背中に掛けて軽く撫でて馴染ませてから琴葉に声を掛ける。
「この子はルフって言うんだが大人しい子でな。抱き着くと気持ちがいいし、暖かいから落ち着くよ」
「いいの、熊さん?」
『こうなったらヤケだべ!ギュッとしてやるど!』
ゆっくりとだがベンチから立ち上がった琴葉が、両手を広げて待機しているルフに抱き着けば背に手を回して優しく撫でている。
落ち着いた琴葉が以前会った時のように寝てしまうと、何処からか様子を見ていたのであろう牛頭と馬頭が走ってきて俺に頭を下げたのだった。
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