71-デザート勝ち抜き戦・前

串焼きとミルクスープを食べて満足気にしている面々を見た後に、デザートのパンケーキを作る為に薄力粉と牛乳、グラニュー糖に似た砂糖を用意する。

人数がかなり多くなっているので全員分作るには少しばかり時間が掛かるだろう。

暫し悩んだ後に食後の軽い運動も兼ねて体を使ったミニゲームを思い付く。


「食後のデザートのパンケーキを作るんだが、焼き上げるのに多少時間がかかるからな。パンケーキを賭けた勝ち抜きミニゲームをしようと思うんだが…」


「ちょっと待ったぁぁ!私を追い掛け回すのは無しにしてくださいよ!?」


「もう1回それをやるつもりは無い…。飽きるだろ?今回は全く別物だ。ラプラス、協力して欲しいんだが」


「ん?何をすればいいんだい?」


子供達もいるので先ずはラプラスに簡単なポーズを三つ考えてもらう事にした。

考えてもらったポーズを皆に教えて3回連続で同じポーズを取れた人から抜けて行き、焼き上がったパンケーキを食べられるという簡単なゲームだ。

協力者のラプラスには食べたい数だけ作る事を約束している。

マオ達はポーズをとるのが難しいだろうと言うことで、番号とポーズの名前が書かれた看板を上げてもらうことにしたらしい。


「お兄ちゃん、僕たちの分もあるの?」


「食べていいの?」


「沢山作るつもりだからな。是非参加してってくれ」


「私、がんばる!」


「僕も!早く抜けていっぱい食べるぞー!」


嬉々として喜ぶ子供達の頭を撫でれば、ラプラスが俺以外のこの場に居る面々を呼び集める。


「はい、それじゃあ、皆こっちに来てね!考えたポーズを教えるよー!」


『こういう運の勝負は兄さんが超得意やから一番に抜けていきそうな気ぃするわ…』


『ふふん!僕のいい所見せてやるー!』


『オレ様のウィンの名に賭けて負けないんだぞー!』


「あ、ライアくん。動画撮っても構わないかい?配信じゃなくてこんな事したよ的な投稿もしたいからさ」


「ここに居るのはNPCの子達だし問題ないと思う。マオたちの声も入らないだろうし…ホットケーキも撮影して構わないが俺はあまり写りこまない様にな?」


「大丈夫、任せて!マスクしてるような加工するから!」


ラプラスの提案に俺が余り写りこまないようにと告げれば、ウィンクをしながら返され大丈夫だろうかと不安になる。

周りに集まった者達がまだかとざわつき始めたので、慌てたようにラプラスがリストバンドを操作してからポーズの指導を始める。

その様子を暫し眺めていたが、生地を作ってしまおうと用意した材料を確認する。


「ふわふわにするならメレンゲを使った方が良いんだよな…。直ぐに抜けてくる可能性は低いだろうし少し凝ろう」


生地用のボウルとメレンゲ用のボウルを用意する。

先ずは小麦粉をふるいにかけながらボウルに入れ、その後にグラニュー糖に近い甘さの砂糖と、ベーキングパウダーを加えて飛び散らないように混ぜる。

何か忘れたなと思い入れた物を確認し、塩を入れてないので少量加えて再度混ぜてパンケーキの素を作る。

インベントリから村で買った新鮮な卵が沢山入った籠を調理台の上に置くと、卵を割って卵白と卵黄を分けてボウルに入れる。


「マオ達はナッツが良いって言ってたが、子供の中には苦手な子とかも居るよな…。味付けは1人ずつ好きなようにやらせるか?となると…量が要るな」


トッピングも多めに用意しなければならないので手早く生地を作成すると、一旦どちらもインベントリにしまっておく。

次に作っておきたい生クリームを作る用に加工されたミルクを取り出しては、少し余っても問題がないので大きめのボウルに注ぐ。

砂糖を加えてから上に置いた物の中身を冷やす機能が付いている魔道具を取り出し、台の上に設置してからその上に生クリームの入ったボウルを置いて泡立て器を使って泡立てていく。

少し離れた場所でゲームをやろうとしている面々の様子を伺い見れば、各自ポーズを覚えた大人達と子供達、マオ達で台の上に乗っているラプラスの指示に従いポーズを取っている。


「よし!皆、復習するよー!このポーズはー?」


「鳥のポーズー!」


『翼を広げることになにか意味があるんだぞ?』


『翼を広げるのは求愛が多い…かな?』


『なんだか、皆で愛を伝えてロマンチックですの!』


『ロマンチック…なんか?』


両手を大きく広げて上下に揺らす姿をラプラスがしたのを見て、ゲームに参加している面々は倣うように同じポーズをとる。

全員がポーズを取れている事を確認してから、ラプラスが満足気に頷き次のポーズを指示する。


「じゃあ、このポーズはー?」


「まねきねこー!にゃんにゃーん!」


『コレだったら俺様もできるんだぞ!!』


『そりゃ、マジモンの猫でござるからな』


『猫言うても百獣の王になる可能性のある獅子やけどな』


『同じネコ科なので猫ちゃんで問題ないですの!』


『僕の天敵だぞー!』


『マオ兄ちゃん…ネズミだって自分で言ってるようなもんだよ、それ…』


皆が猫の手招きのポーズをするのでウィンが真似する様に同じポーズを取れば、子供達から可愛いと声が上がり気分が良さそうである。

毛を逆立てて両手を上げて威嚇するマオに対して、セラフィがツッコミを入れているのを見て思わず笑ってしまう。

最後のポーズを見て思わず目を見張る。

あんなポーズを子供にやらせていいのかと不安を覚えたのだが、ポスカ達含め楽しそうにしているのでまぁいいかと思う俺だった。

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